マイクロソフト、GPT-3の独占ライセンスを取得

マイクロソフトは22日、GPT-3を、AIスタートアップのOpenAIから独占的にライセンス供与することを発表した。マイクロソフトのEVPであるケビン・スコットは、OpenAIの技術革新を活用して顧客にAIソリューションを開発・提供し、自然言語生成の力を活用した新しいソリューションを生み出すと述べている。

マイクロソフト、GPT-3の独占ライセンスを取得

マイクロソフトは22日、世界で最も強力な言語理解モデルの1つであるGPT-3を、AIスタートアップのOpenAIから独占的にライセンス供与することを発表した。マイクロソフトのEVPであるケビン・スコットは、同社はOpenAIの技術革新を活用して顧客にAIソリューションを開発・提供するとともに、自然言語生成の力を活用した新しいソリューションを生み出すと述べている。

「私たちはこれを、AI技術を民主化し、新しい製品、サービス、体験を可能にし、AIのポジティブなインパクトをスケールアップさせる方法で、Azureを活用したAIプラットフォームを拡大するための素晴らしい機会だと考えている」とスコットは書いている。「GPT-3モデルによって解き放たれる商業的、創造的な可能性の範囲は非常に広く、本当に斬新な能力を持っている。ライティングや作文のような分野で人間の創造性や創意工夫を直接支援したり、(コードを含む)長文データの大きなブロックを記述して要約したり、自然言語を別の言語に変換したりするなど、可能性は私たちがテーブルに持ち込むアイデアやシナリオによってのみ制限されるだろう」。

ライセンス契約の意味合いはすぐには明らかにならなかったが、マイクロソフトによると、OpenAIは6月に開始されたAzureがホストするAPIを介してGPT-3などのモデルを提供し続けるとのことだ。OpenAIによると、現在までにベータ版のままのAPIには数万件のアプリケーションが寄せられている。マイクロソフトは、GPT-3の機能を自社の製品、サービス、体験に活用し、今後もOpenAIと協力して、同社のAI研究の商業化を継続していく予定だ。

約1年前、マイクロソフトはサンフランシスコに拠点を置くOpenAIに10億ドルを投資し、マイクロソフトのAzureクラウドプラットフォーム向けの新技術を共同開発し、人工知能(AGI)の「約束を果たす」大規模なAI機能を「さらに拡張」することを発表した。これと引き換えに、OpenAIはその知的財産の一部をマイクロソフトにライセンスし、それを同社がパッケージ化してパートナーに販売すること、また、OpenAIが次世代コンピューティングハードウェアの開発に取り組む中で、AIモデルをAzure上でトレーニングして実行することに合意した。

5月に行われたBuild 2020開発者会議で、マイクロソフトは、Azureをホストとし、OpenAIが共同で設計したマシン「AIスーパーコンピュータ」を発表した。マイクロソフトは、トップパフォーマンスを誇る500台のスーパーコンピューターをベンチマークして詳細を示すプロジェクト「TOP 500」において、世界で5番目にパワフルなマシンだと主張している。

GPT-3が一般に公開されてから約3ヶ月、AIコミュニティの中で、そしてそれ以上の人々を魅了し続けている。ポートランド州立大学のメラニー・ミッチェルコンピュータサイエンス教授は、GPT-3が原始的な類推をすることができるという証拠を発見し、コロンビア大学のラファエル・ミリエールは、GPT-3について書かれた哲学的なエッセイへの応答を作曲するようGPT-3に依頼した。しかし、米国の大統領選挙が近づくにつれ、GPT-3のようなツールが悪意のある行為者に利用され、誤報や誤報、嘘を広めて不和を煽るのではないかという懸念が学者の間で高まっている。

ミドルベリー国際問題研究所のCenter on Terrorism, Extremism, and Counterterrorism (CTEC) によって発表された論文の中で、共著者たちは、「情報的な」「影響力のある」テキストを生成するGPT-3の強みが、「個人を暴力的な極右過激派のイデオロギーや行動に過激化させる」ために利用される可能性があることを発見している。

OpenAIは以前、GPT-3からの有害な言語を制限するための「毒性フィルター」(toxicity filters)を含むAPIレベルでのセーフガードの実験を行っていると述べていた。例えば、反ユダヤ主義的なコンテンツをピックアップして、ユダヤ教について語る中立的なコンテンツを通過させるフィルタを展開したいと考えている。

OpenAIが文章生成AIのGPT-3を商用化
OpenAIは、その機械学習技術を使って企業がテキストを生成、分析、処理することで収入を得る初の商用サービスを6月に開始した。マイクロソフトのクラウドプラットフォームAzureからAPI経由で同社が開発したテキスト生成器「GPT-3」を利用できる。現状、実験に興味のある企業や学術関係者にベータ版に過ぎない。
GPT-3生成のブログ、ハッカーニュースで1位に
カルフォルニア大学バークリー校の大学生のLiam Porrが言語生成AIツール「GPT-3」を使って偽のブログ記事を作成したところ、ハッカーニュースで1位になった。Porrは、GPT-3によって生成されたコンテンツが人間によって書かれたものだと信じ込ませることができることを実証した。

Photo: Sam Altman, CEO of OpenAI (left), and Microsoft CEO Satya Nadella, by Microsoft

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OpenAI、法人向け拡大を企図 日本支社開設を発表

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OpenAIは東京オフィスで、日本での採用、法人セールス、カスタマーサポートなどを順次開始する予定。日本企業向けに最適化されたGPT-4カスタムモデルの提供を見込む。日本での拠点設立は、政官の積極的な姿勢や法体系が寄与した可能性がある。OpenAIは法人顧客の獲得に注力しており、世界各地で大手企業向けにイベントを開催するなど営業活動を強化。

By 吉田拓史
アドビ、日本語バリアブルフォント「百千鳥」発表  往年のタイポグラフィー技法をデジタルで再現

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アドビは4月10日、日本語のバリアブルフォント「百千鳥」を発表した。レトロ調の手書き風フォントで、太さ(ウェイト)の軸に加えて、字幅(ワイズ)の軸を組み込んだ初の日本語バリアブルフォント。近年のレトロブームを汲み、デザイン現場の様々な要望に応えることが期待されている。

By 吉田拓史