NIOの自律走行がNVIDIA頼みの背景
電気自動車(EV)メーカーにとって、自動車の量産だけでも非常に難しいミッションである。このため自律走行に関してはNVIDIAのようなサードパーティに頼るのが自然な流れだ。
要点
電気自動車(EV)メーカーにとって、自動車の量産だけでも非常に難しいミッションである。このため自律走行に関してはNVIDIAのようなサードパーティに頼るのが自然な流れだ。
中国のEVメーカー蔚来汽車(NIO)の創業者兼CEO・李斌は12月18日に中国・蘇州で開催されたNIO Day 2021で、中型セダンの「ET5」を発表した。ET5には自律走行用プラットフォームの「NIO Adam」が載っている。
NIOの創業者兼CEOの李斌はその際に、NIOの最新の自律走行技術であるNAD(NIO Autonomous Driving)がET5に搭載されると述べた。NADの全機能は、ADaaS(AD「自律走行」 as a Service)と呼ばれる月額制のサブスクリプションモデルで提供され、サービス料金は月額680元で、開発・検証が完了した後に順次提供される予定だ。
このNIO AdamはNVIDIAのテクノロジーに深く依存している。12月20日に投稿されたブログの中で、NVIDIAはET5を、4つのNVIDIA DRIVE Orinシステム・オン・チップ(SoC)上に構築されたスーパーコンピュータ「NIO Adam」を搭載した、人工知能機能を備えた真の未来型電気自動車であると説明している。
NVIDIAによると、Orinは自律走行車やロボティクス向けの世界最高性能の最先端プロセッサで、自律走行車やロボティクスで同時に実行される大量のアプリケーションやディープニューラルネットワークを処理するために、最大254TOPSを実現している。
4つのOrin SoCを搭載したスーパーコンピューター「NIO Adam」は、車内で動作する最も強力なプラットフォームの1つとなり、合計で1,000TOPS以上の性能を達成したとブログで紹介している。
DRIVE採用の広がり
自動車会社が自律走行ソフトウェアを開発するのは、相当のリソースがないとうまくいかない。また、数万点の部品を組み合わせて作る輸送機関である自動車と、ソフトウェア技術の間には明確な文化の違いが存在する。
これがNIOがOrinを採用した理由だと考えるのは自然だろう。EVの開発、大量生産だけでもあまりにも難しいミッションであり、先駆者であるテスラのリードに追いつくのは至難の業だろう。
ハードウェアからソフトウェアまで自律走行に必要なコンピューティング基盤を包括的に提供するNVIDIA DRIVEを採用する自動車会社は増えている。2020年にメルセデス・ベンツがNVIDIA DRIVE Orinをベースにしたソフトウェア・デファインド・フリートを発表したのに続き、2021年には、NIO、SAIC、Xpengなど、約10社の企業が自社の車両をNVIDIAのプラットフォームに移行した。
ソフトウェアスタックには、オペレーティング・システムであるNVIDIA DRIVE OSと、包括的なミドルウェア機能を提供するソフトウェア開発キット(SDK)が含まれている(図1)。NVIDIA DRIVE AVは知覚、マッピング、プランニング等の自律走行の要素を提供する。
乗客向け機械学習のDRIVE IXはインテリジェント・コックピット機能のためのアルゴリズム・モジュールだ。将来の自動車やトラックでは、AIは乗客の質問に答えたり、道案内をしたり、前方の道路状況を警告したりと、乗員との会話が可能になると考えられている(図2)。
自律走行車開発パイプラインの重要な要素であるシミュレーションでは、NVIDIA Omniverseや合成データ生成などの技術を用いて、仮想世界と現実世界のギャップをさらに縮めている。
NVIDIA DRIVE Simは、NVIDIA RTX、Omniverse、AIなどの当社のコア技術をベースに構築されており、リアルタイム・シミュレーションを可能にし、NVIDIAがゲームで磨いた技術を応用し、光の物理的特性をシミュレーションすることでリアルなライティングを再現する。DRIVE Simは複数のカメラ、レーダー、LiDARをリアルタイムで同時にシミュレーションが可能で、レベル2のアシスト運転からレベル4やレベル5の完全自動運転までのセンサー構成に対応できる、とされている。
また、NVIDIA Omniverse Replicatorを使用して、カメラ、レーダー、ライダー、超音波などの物理ベースのセンサーデータを、ラベル付きのグランドトゥルースデータ(直接観察や測定によって得られる情報)とともに生成し、貴重な開発時間とコストを削減する。