NVIDIAのArm買収、絶望的

NVIDIAのArm買収は、英欧米中のすべての規制当局から厳しい視線にさらされ、四面楚歌である。当初の審査期限は過ぎており、いつ終わるのかも不確実だ。

NVIDIAのArm買収、絶望的
Image via NVIDIA.

要点

NVIDIAのArm買収は、英欧米中のすべての規制当局から厳しい視線にさらされ、四面楚歌である。当初の審査期限は過ぎており、いつ終わるのかも不確実だ。


NVIDIAが提案している英国のチップ設計会社Armの買収は、英競争市場局(CMA)による詳細な調査を受けることになった。

英国政府のウェブサイトに掲載された11月16日付の通知によると、英国のデジタル・文化・メディア・スポーツ担当国務長官であるナディーン・ドリースが、CMAに対して「フェーズ2調査」の開始を命じたことが確認された。この調査は6ヶ月かけて行われ、買収に伴う潜在的な国家安全保障上のリスクや競争上の懸念を精査する予定だ。

CMAは8月にフェーズ1調査を完了した(PDF)。CMAの最高責任者であるアンドレア・コシェリは「NVIDIAがArmを支配することにより、NVIDIAのライバル企業が重要な技術へのアクセスを制限することで、真の問題を引き起こす可能性がある」とコメントした。当時、CMAはフェーズ2の調査を推奨していた。

CMAに加えて、EUは先月末に独自の調査を開始した。これは、Armを買収することでNVIDIAが不当に有利になる可能性があるという理由からだ。

大西洋を挟んだ米国でも規制当局の審査が長期化している。NVIDIAの最高財務責任者(CFO)のコレット・クレスは、同社の第3四半期決算発表の電話会議において、この取引が連邦取引委員会 (FTC)の審査を受けていることを明らかにした。クレスによると、FTCの懸念に対する改善策を検討しているとのことだ。また、Armのライセンシーからも問題が指摘されているとクレスは語った。

NVIDIAは、中国でも問題に直面する可能性がある。中国では、地元のチップメーカーの一部がこの取引について規制当局に苦情を申し立てている。NVIDIAは電話会議で、中国当局による「審査中」としながらも、正式な独占禁止法の手続きはまだ始まっていないと述べた。

NVIDIAのジェン・スン・フアンCEOは当初、同社によるArmの買収の期限を2022年3月としていたが、規制当局がこの取引を綿密に調査していることから、もっと時間がかかるかもしれないと認めている。

NVIDIAの主張は、成熟しつつあるスマートフォン事業から、データセンター、自動車、モノのインターネット(IoT)などの新市場への多角化を完了させるために、Armがさらなる支援を必要としているというものだ。

ソフトバンクの所有下では、この移行は確かに遅れており、過去5年間のうち3年間は赤字だった。Armの収益は年平均で一桁台半ばの成長であり、ブームを享受している業界のものとは思えない。

また、AIなどのアクセラレーション・コンピューティングのリーダーであるNVIDIAは、自社の知的財産をArmのライセンスチャネルに投入することを約束しており、ArmにとってNVIDIAとの婚姻は、長期的な展望が望めるものだ。

ソフトバンクとしては、いまArmが売れれば濡れ手で粟となる。NVIDIAの株式は、買収案が発表されてから14ヶ月の間に約130%上昇し、株式時価総額は7,300億ドル以上に達している。現金と株式での買収オファーの総額は820億ドルと当初の2倍以上に膨れ上がっている。

Read more

AI時代のエッジ戦略 - Fastly プロダクト責任者コンプトンが展望を語る

AI時代のエッジ戦略 - Fastly プロダクト責任者コンプトンが展望を語る

Fastlyは、LLMのAPI応答をキャッシュすることで、コスト削減と高速化を実現する「Fastly AI Accelerator」の提供を開始した。キップ・コンプトン最高プロダクト責任者(CPO)は、類似した質問への応答を再利用し、効率的な処理を可能にすると説明した。さらに、コンプトンは、エッジコンピューティングの利点を活かしたパーソナライズや、エッジにおけるGPUの経済性、セキュリティへの取り組みなど、FastlyのAI戦略について語った。

By 吉田拓史
宮崎市が実践するゼロトラスト:Google Cloud 採用で災害対応を強化し、市民サービス向上へ

宮崎市が実践するゼロトラスト:Google Cloud 採用で災害対応を強化し、市民サービス向上へ

Google Cloudは10月8日、「自治体におけるゼロトラスト セキュリティ 実現に向けて」と題した記者説明会を開催し、自治体向けにゼロトラストセキュリティ導入を支援するプログラムを発表した。宮崎市の事例では、Google WorkspaceやChrome Enterprise Premiumなどを導入し、災害時の情報共有の効率化などに成功したようだ。

By 吉田拓史
​​イオンリテール、Cloud Runでデータ分析基盤内製化 - 顧客LTV向上と従業員主導の分析体制へ

​​イオンリテール、Cloud Runでデータ分析基盤内製化 - 顧客LTV向上と従業員主導の分析体制へ

Google Cloudが9月25日に開催した記者説明会では、イオンリテール株式会社がCloud Runを活用し顧客生涯価値(LTV)向上を目指したデータ分析基盤を内製化した事例を紹介。従業員1,000人以上がデータ分析を行う体制を目指し、BIツールによる販促効果分析、生成AIによる会話分析、リテールメディア活用などの取り組みを進めている。

By 吉田拓史
Geminiが切り拓くAIエージェントの新時代:Google Cloud Next Tokyo '24, VPカルダー氏インタビュー

Geminiが切り拓くAIエージェントの新時代:Google Cloud Next Tokyo '24, VPカルダー氏インタビュー

Google Cloudは、年次イベント「Google Cloud Next Tokyo '24」で、大規模言語モデル「Gemini」を活用したAIエージェントの取り組みを多数発表した。Geminiは、コーディング支援、データ分析、アプリケーション開発など、様々な分野で活用され、業務効率化や新たな価値創出に貢献することが期待されている。

By 吉田拓史