NVIDIA、爆益継続の予感:AIチップの需要沸騰

NVIDIAの最新の決算報告が米国時間23日に迫っているが、半導体不況のさなかでも、AIチップは記録的な不足状態にあり、「専売企業」の勢いは微塵も揺らいでいないようだ。

NVIDIA、爆益継続の予感:AIチップの需要沸騰
2023年5月29日月曜日、台湾の台北で開催された展示会で講演するNVIDIAの共同創設者兼最高経営責任者であるジェン・スン・ファン。ブルームバーグ。

NVIDIAの最新の決算報告が米国時間23日に迫っているが、半導体不況のさなかでも、AIチップは記録的な不足状態にあり、「専売企業」の勢いは微塵も揺らいでいないようだ。


5月下旬、NVIDIAは次の四半期(5-7月期)の売上高をめぐって約70億ドルというウォール街のコンセンサス予想に対し、約110億ドルが見込まれると発表した。その翌日、NVIDIA は時価総額を約1,840億ドル増加させた。

株価は歴史的な高値圏を維持しているが、23日に報告される決算は、NVIDIAの好調が続くのかどうかを示すことになるため、株式市場とテクノロジー業界の注目を一身に集めている。

現状、NVIDIAを脅かす要因を見つけることが難しい。リークされた情報を追ってみよう。

  • 原価率は10%程度か? 米メディアBarron'sのシニアライターであるTae Kimは、高性能GPU「H100」個あたりのコストを3,320ドルとする推定をSNS「X」(旧Twitter)で明らかにした。Kimは金融コンサルティング会社 Raymond Jamesの概算を引用したとしている。NVIDIAのH100の小売価格は、最も安価なバージョンで約2万5,000ドルから3万ドル。この計算のもとでは、H100の原価率は10%程度だ。NVIDIAは驚異的な利益率を享受していることになる。
  • 2024年半ばまで受注残が積み上がる。H100は、2024年まで注文が積み上がっている。NVIDIAも出資するAIクラウド新興企業CoreWeave の共同創設者兼 CTO の Brian VenturoはKimに対して、企業の調達担当者は「来年の第 2 四半期と第 3 四半期に導入するための購入を開始している」と言った
  • TSMCはGPUの製造能力を即座に引き上げるすべを持たない。GPUは、「CoWoS製造プロセス」を必要とする。CoWoSを使用すると、複雑な多段階の高精度エンジニアリング・プロセスが追加されるため、GPUの生産速度が低下する。これらの状況は、NVIDIAのDGXシステム担当バイスプレジデント兼GMであるチャーリー・ボイルが独メディアComputerBaseに対して認めている。
  • 55万個出荷でも足りない。フィナンシャルタイムズ(FT)の取材に応じたNVIDIAとTSMCに関係する複数の内部関係者によると、NVIDIAは2023年にH100を世界で約55万個出荷する予定であり、その大半はアメリカのテクノロジー企業に供給されるという。この数字に、中国専用のダウングレードモデルA800とH800が含まれているかどうかは不明。
  • 潤沢な資金を誇る中東勢もゲームに参加。FTによると、サウジアラビアは公的研究機関であるキング・アブドラ科学技術大学(KAUST)を通じて、少なくとも3,000個のNVIDIAのH100を購入した。UAEも数千のNVIDIA製チップへのアクセスを確保し、アブダビのマスダール・シティにある国営技術革新研究所で、Falconとして知られる独自のオープンソース大規模言語モデルをすでに開発している。
  • NVIDIAが支援するAIクラウド企業にGPUを優先的に提供。 新興企業はクラウド大手のように代替AIチップを開発せず、NVIDIAに依存。武器(GPU)と軍資金(出資)を渡された新興企業は、大手に競りかける「併せ馬」に仕立て上げられている。https://www.axion.zone/NVIDIAai-4/
  • GPUの行方はテクノロジー業界のトップゴシップ。OpenAIのAI研究者Andrej Karpathyは「誰がいつ何個のH100を手に入れるかは、シリコンバレーのトップゴシップだ」と述べていた。KarpathyはXで、広く出回っているブログ記事を共有し、「大小のクラウドプロバイダーにおける大規模なH100クラスタのキャパシティは底を尽きつつある」と推測し、H100の需要は最低でも2024年末までこの傾向が続くだろうと予想した。 https://www.axion.zone/NVIDIAgpu/

NVIDIAのテクノロジー市場における戦略的ポジショニング、特にAIの成長に不可欠なGPUへの注力は、同社を極めて重要なプレーヤーに位置づけている。今のところ、ハードウェアとソフトウェアの両面で築いたリードをひっくり返すプレイヤーは見つかっていない。

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OpenAI、法人向け拡大を企図 日本支社開設を発表

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OpenAIは東京オフィスで、日本での採用、法人セールス、カスタマーサポートなどを順次開始する予定。日本企業向けに最適化されたGPT-4カスタムモデルの提供を見込む。日本での拠点設立は、政官の積極的な姿勢や法体系が寄与した可能性がある。OpenAIは法人顧客の獲得に注力しており、世界各地で大手企業向けにイベントを開催するなど営業活動を強化。

By 吉田拓史