
RISC-Vはグローバル半導体戦争の中心地になる
RISC-Vのオープンな性質は世界中の開発者にとって好ましいものだが、RISC-Vがモメンタムを得たとき、ウクライナ戦争の勃発した以降の国際政治は、それを看過するだろうか。
RISC-Vのオープンソースの理念により、国家間の中立性を保っているように見える米国、欧州、中国、ロシアなど、世界中の人々が協力して仕様の改善や向上に取り組んでいる。RISC-V Internationalは永世中立国のスイスに登記されており、政治的な思惑に支配されない構造がとられている。
一方で、この新しい命令セットアーキテクチャのボーダーレスな性質は、実装に際してロイヤリティが不要であることから、国家間のチップ軍拡競争に新たな戦線を開く可能性がある。制裁や物資不足など、半導体技術の自由貿易を妨げる障壁がある中で、各国は自国製のプロセッサやアクセラレータを作りたいと考えている。そのため、グローバルでオープンなRISC-Vに注目が集まっている。
そのため、米国や世界で開発されているRISC-Vは、輸出技術をめぐる次の争いの中心になる可能性がある。
米国は、ロシアがウクライナに侵攻した場合、ロシアへの半導体の供給を停止すると脅してきた(そしてその方向に向かいそうだ)。一方、ヤドロやエルブルスなどのロシア企業は、x86やArmベースの部品に代わる高性能なRISC-Vコアの開発を進めている。ロシアの場合、そのほとんどが軍事用ハードウェアのアプリケーションだ。
中国、ロシア、イランなど、アメリカの禁輸措置によって半導体サプライチェーンから締め出されそうな国は、RISC-Vの開発を倍加させている。
中国の場合は、携帯電話からデスクトップ・ワークステーションに至るまで、米国が支配するIPに代わる商用製品を市場に投入するためのプロジェクトに多額の資金を投入している。これらのプロジェクトが結実するまでには10年はかかるだろうが、中国は、複数の異なる民間および公的機関を通じて、このプロジェクトに主力級の資金を注いでいるのである。実際、中国科学院は、欧米の企業が公開しているオープンソースの設計図を参考にしながら、64ビットのRISC-Vコアを開発した。