インテルのRISC-Vへの大きな賭け

インテルがRISC-Vアーキテクチャをサポートすることで、RISC-Vが市場でArm CPUに対抗しうる存在であることがさらに証明され、RISC-Vに対する高まる機運にさらなる信憑性を与えた。

インテルのRISC-Vへの大きな賭け
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インテルは、製造事業を飛躍させるためのおそらく最大の動きとして、インテルファウンドリーサービス(IFS)の新興企業やその他の潜在顧客を支援するために、10億米ドルのファンドを設立すると発表した。同社はこのファンドの発表に際して、最初の資金がどこに行くかは明言しなかったが、「エコシステムを強化し、RISC-Vのさらなる普及を促進するための投資と提供」を計画しているという。

2月7日にはIFSはRISC-Vアーキテクチャとエコシステムに関する一連の重大発表を行った。インテルは、スイスを拠点とする世界的な非営利団体であるRISC-V Internationalにプレミア会員として参加し、IFSカスタマー・ソリューション・エンジニアリング担当バイスプレジデントボブ・ブレナンは、RISC-V理事会と技術運営委員会の両方に参加する。

Semico Researchの主席アナリストであるリッチ・ワルジニアックは、RISC-Vに肩入れすることは、同社を競合相手というよりも、製造パートナーとして見せることになり、賢い行動であったと報告書に書いている。「RISC-Vを追加したことは、シリコンファウンドリの顧客ベースに対する真剣な取り組みと、今後新しいイノベーションに対してオープンであろうとする意思を示すものである」。

実際、インテルはすでにFPGA製品群に搭載するソフトプロセッサとして、RISC-V CPUを開発している。Nios VはRISC-Vをベースに、アトミック拡張、5段命令パイプライン、AXI4インターフェイスなど、性能を追求したRV32IAアーキテクチャを採用したものである。しかし、今回の一連の発表は、このCPUの提供をはるかに超えるものである。

インテルがRISC-Vアーキテクチャとその進化するエコシステムをサポートすることで、RISC-Vが市場でArm CPUに対抗しうる存在であることがさらに証明され、RISC-Vに対する高まる機運にさらなる信憑性を与えることになった。

「特に、オープンチップレットプラットフォームの構築は、x86、Arm、RISC-Vプロセッサをすべて同一製品で使用するプラットフォームを意味するため、注目される。これは、製品投入の迅速化と開発コストの削減を目指す多くの企業にとって、非常に興味深いことだ。このコンセプトで作成された規格は、ファウンドリのキャパシティやウェハスタートを求める見込み顧客の将来の生産コミットメントに大きな影響を与えることになる」とワルジニアックは書いている。

RISC-Vチップ開発企業4社と提携

IFSと提携している4社のRISC-V IPベンダ(アンデス・テクノロジー、エスペラント・テクノロジー、SiFive、ベンタナ・マイクロシステムズ)は、いずれもこの発表で利益を得る態勢を整えている。彼らのIPは、将来IFSの顧客がRISC-V CPUコア、チップレット、パッケージ製品を最適化するために使用されることになるのです。さらに、今回の発表では触れられていないが、将来的には、先進ノードにおける自社のシリコン製品のために、インテルのファウンドリ能力を利用できるようになる可能性もある。

  • アンデス・テクノロジー:サンノゼに本社を置く同社は、組み込みシステム用のRISC-Vプロセッサコアを設計している。また、今回の契約により、IFSの顧客は同社の低消費電力コアを統合することができるようになった。プレスリリースでCEOのフランクウェル・リンは「インテルのファウンドリ能力は、アンデスRISC-VプロセッサコアをベースにしたSoC設計が生産立ち上げと量産を成功させることを保証する」と述べている。
  • エスペラント:テクノロジーズ :同社の現在の1,092コアチップは、TSMCのN7プロセスで作られている。戦略的パートナーシップにより、「エスペラントはインテルの先端技術ノードにアクセスできるようになった」とCEOのデイブ・ディゼルは言う。同社は、次世代のSoCをインテル 3プロセスで作る可能性があるという。「これは、現在の設計より1世代どころか、2世代も進んでいることになる」。それによって、エスペラントは、そのチップのコア数を増やすか、そのチップをより小さくすることができる。後者の方が可能性が高いという。そして、インテルのチップレットパッケージング技術を使って、異なる数の1,092コアのチップレットをパッケージで組み合わせ、さまざまなタスクに取り組むことができるようになる。
  • SiFive:シリコンバレーでRISC-Vコアと開発ツールを設計するSiFiveは、インテル Foundry Services社と提携し、今年後半に稼働予定のインテル 4製造プロセスでSiFive社のP550マルチコア・プロセッサを製造することになった。このチップは、RISC-Vの成長を促進するための開発者用ボードに搭載される予定だ。なお、SiFiveは昨年4月にサムスン電子との既存のパートナーシップを延長し、サムスン電子のファウンドリ技術を使ってカスタムAIアクセラレータブロックをSiFiveのRISC-Vブロックに統合している。
  • ヴェンタナ・マイクロシステムズ:このスタートアップは、同社のデータセンタークラスの技術をIFSの顧客が利用できるようにする契約を結んでいる。ファウンドリの顧客は、インテルの「最先端の製造プロセス」を使って、ベンタナのデータセンタークラスのコアをSoCに統合したり、マルチコアチップレットを使ってカスタムシステムを迅速に作ったりできるようになる。

IFSアライアンスに16の設立企業を加えた今回の一連の発表は、インテルという企業が、シリコンファウンドリビジネスにおいて本格的な存在感を確立し、再び市場のリーダー(2021年の売上ランキングでは現在サムスンに続く第2位)となろうとしていることを示唆している。

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