ロビンフッドの仮想通貨への危険な賭け

株式投資にゲーミフィケーションと低コスト取引をもたらしたロビンフッドは、今度は仮想通貨ビジネスに賭けている。ただ、まだ何もかもが未整備の仮想通貨市場では、顧客を過剰なリスクに晒す製品に化ける可能性もある。

ロビンフッドの仮想通貨への危険な賭け
Image by Robinhood.

要点

株式投資にゲーミフィケーションと低コスト取引をもたらしたロビンフッドは、今度は仮想通貨ビジネスに賭けている。ただ、まだ何もかもが未整備の仮想通貨市場では、顧客を過剰なリスクに晒す製品に化ける可能性もある。


ネット証券ロビンフッドは9月下旬、プラットフォーム上で暗号通貨(仮想通貨)ウォレットの提供を開始すると発表した。これにより、急成長中のネット証券会社は、暗号通貨取引所大手Coinbaseのような既存プレイヤーと直接競合することになる。

ロビンフッドはこれまでの「ウェブウォレット」(サービス提供者のサーバー側に所在するウォレット)のみの提供から、クライアントウォレット(ユーザーが保持するコンピュータ側に所在するウォレット)を提供するようになった。

このウォレットにより、ロビンフッドの顧客は、現在許可されているように単に暗号通貨を取引するだけでなく、商品やサービスの支払いのために、ビットコインやその他の暗号を直接所有し、譲渡することができるようになる。

また、新しいウォレットは顧客が自分のデジタルコインを1つの口座に集約することを可能にする。顧客はその後、他のウォレットのアドレスとの間で暗号通貨の取引、送受信を行うことができる。ライバルのCoinbaseとGeminiはすでにこの機能を提供している。

ロビンフッドは、10月に少人数の顧客を対象にウォレットのテストを開始し、その後、3,200万人以上の登録ユーザーに提供を拡大する予定であると述べている。ロビンフッドのアプリに掲載されている情報によると、発表後数時間で約30万人の顧客がウォレットのウェイティングリストに登録した。

新ウォレットには自動的な定期投資機能がついている。これは、手数料無料で、1ドルからお好きなコインをお好きなスケジュールで自動的に購入できる。「暗号通貨はボラティリティ(変動性)が高いため、顧客が長期的な成長に集中し、リスクを減らし、市場のタイミングを計るストレスを軽減するために、この機能を導入した」とプレスリリースは述べている。「他のプラットフォームでは、取引ごとに4%もの手数料がかかるため、このような実用的な投資戦略は、ロビンフッド以外では実現できない」と主張している。

自動的な定期仮想通貨投資機能。Image by Robinhood.

ロビンフッドは3年前に暗号通貨部門を立ち上げている。暗号通貨取引は、今年の第2四半期のロビンフッドの収益のうち2億3300万ドルを占め、2020年の同四半期の500万ドルから増加している。同社によると、プラットフォーム上の資金提供されたアカウントの約60%が、第2四半期中に何らかの暗号通貨を取引したという。

また、同証券会社の暗号通貨の預かり資産は、期末時点で227億ドルとなり、前年の29倍となっている。

暗号通貨ウォレットに付随した機能の中で、大きな儲けを生み出すのは、日本のbitFlyerやCoincheckで「販売所」と呼ばれる売買形態で、取引所で売買されている価格に対してとても厚いスプレッドが載せられている。株式取引でそうしたように、ゲーミフィケーションを使ってそのような高手数料取引を行うよう促すことで、ロビンフッドは儲けようとしているかもしれない。

高額手数料とゲーミフィケーションの組み合わせは危険

しかし、現行の暗号通貨プレーヤーの儲け方に批判が多くあるのは確かだ。「販売所」はあまりにもユーザーの無知を搾取しすぎているだろう。ここにゲーミフィケーションが加わると、規制当局のレーダーに引っかかるのは必定のように思われる。

米国証券取引委員会(SEC)のゲイリー・ゲンスラー委員長は9月下旬の上院銀行委員会での発言の中で、「現在、暗号金融、発行、取引、貸し出しにおける投資家保護は十分ではない」と述べた。「率直に言って、現時点では、西部開拓時代のようなものだ」。

ゲンスラーはゴールドマンサックスのM&A部門の部門長、米商品先物取引委員会(CFTC)委員長、MITスローン校教授という規制当局と既存金融を通過したキャリアであり、フィンテックと仮想通貨には厳しい発言が多い。

SECはロビンフッドに対して、顧客の注文を取引会社にルーティングするために取引会社から報酬を受け取っていたことを開示せず、また、顧客の注文を実行するために合理的に入手可能な最善の条件を求める義務を果たさなかったとして起訴し、ロビンフッドはこの訴訟を解決するため6,500万ドルを支払った。

ゲンスラー委員長は、ロビンフッドがCitadelのような卸売業者に注文を回送して、その代わりにキックバックを得ているのを非難しているが、従来型の証券会社と比べて投資家が負担する手数料は著しく圧縮されている。この点、ロビンフッドは新しい価値を提供しており、個人投資家の取引は株式市場の多数派を形成するようになっている。

これはすべての資産が個人投資家の投資対象となる時代の先駆けの出来語だ。あらゆる資産にこれまで経験したことのない流動性がもたらされようとしている。

すべての資産は個人投資家の投資対象になる
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