Sea Limited、3桁成長が長期継続
Sea Limitedの2020年第3四半期(Q3)決算からは驚きを隠せない。上場企業で前年同期比の収益成長率3桁が維持され続けていることはほぼあり得ないことだ。
Sea Limitedの2020年第3四半期(Q3)決算からは驚きを隠せない。上場企業で前年同期比の収益成長率3桁が維持され続けていることはほぼあり得ないことだ。
パンデミック以降の業績ブーストは以前途絶えていない。 GAAPベースの収益は前年同期比122%増の27億ドル、売上総利益は前年同期比148%増の10億ドルに達した。
もちろん、これに応じてコストが増えている。売上原価、営業マーケティング費、研究開発費は前年同期と比べて倍増以上の状態だ。コストは主に東南アジア、南米、欧州でeコマースアプリShopeeを多国展開したことや、ゲームとフィンテック事業での研究開発費が嵩んだことが関係しているという。
しかし、財務状況は盤石だ。まず、純損失は2020年Q3の4億2,530万ドルから5億7,100万ドルへの増加に留まった。次にSeaは9月にクラスA普通株式に相当する米国預託株式(ADS)の1,100万株の公募を実行し、総額25億ドル転換社債型新株予約権付社債(Convertible Notes)も公募を行った。この結果、現金と現金同等物は、2021Q2の56億ドルからQ3には118億ドルまで増えた。
Seaは元々はゲーム主体の会社だったが、成長の牽引役は明確に電子商取引に移行している。
第3四半期の電子商取引部門であるShopeeの流通総額(GMV)は、前年同期比80.6%増の168億ドルとなり、前年同期の93億ドルから増加した。Shopeeの総受注額(Gross Order)は17億ドルを記録し、2020年第3四半期の7億ドルから前年同期比123.2%増となった。
リサーチ会社App Annieの調査によると、Shopeeは、東南アジアと台湾において、平均月間アクティブユーザー(MAU)数とアプリ内での総利用時間で、ショッピングカテゴリーの1位を継続している。また、ブラジルでは、Shopeeは2021年第3四半期にダウンロード数とアプリ内での総利用時間で1位となり、平均MAUでは2位となった。
開拓期が続いた南米のビジネスが拡大し始めているようだ。Shopeeは、2019年にブラジルでの試験的な取り組みとして小規模展開を開始し、その後、事業を拡大してきた。Shopeeのブラジル部門は、わずか1年で、250人以上のチームへと膨らみ、現地のマーチャントとの連携も開始した。2021年2月にはメキシコでも事業を開始し、6月にはコロンビアとチリにも進出した。
アーニングコールでは、Group Chief Corporate OfficerのYanjun WangはShopee事業について「まず第一に、既存市場である東南アジアや台湾、そして新たな成長市場であるブラジルに焦点を当てている」と説明している。
ゲームとECの二本柱
ゲームは堅調な成長が続く。Seaのデジタルエンタテインメント部門であるGarenaは、収益が11億ドル、前年同期比93.2%増となり、好業績を収めた。Garenaの四半期ごとのアクティブユーザー数は7億2,900万人だった。また、四半期ごとの有料ユーザー数は9,320万人で、2020年の同時期と比較して1.4%増加した。
リサーチ会社Sensor Towerによると、旗艦タイトル「FreeFire」は8〜9月に世界で3番目にダウンロードされたモバイルゲームで、売上ではFree Fireは8月に世界6位、9月に9位となった。
Free Fireは、東南アジアおよび南米では9四半期連続、インドでは4四半期連続でトップの座を維持。米国では、3四半期連続でモバイル向けバトルロイヤルゲームの最高売上を達成し、Google Playの全ゲームカテゴリーにおいて、第2位の売上高を記録した。
Seaは今後、Free Fire MAXの発売や、Craftlandなどのユーザー生成コンテンツ用ツールを含む新機能、および今後ゲームに導入する可能性のあるその他のツールや機能を提供する、としている。
現状は東南アジアと南米はゲームとコマースでがっちり囲い込む体制になっている。118億ドルのキャッシュで狙う次の目標はインド、スペイン、フランス、ポーランドだ。
同社の進出先は米系ビックテックの絶対的な影響力が及ばない「非英語圏」が目立つ。テンセントが大株主のSeaは、テンセントとアリババを合体させた究極のビジネスを非英語圏でビッグテックの間隙をついて陣地を広げる戦略をとっているようだ。インターネットがモバイル主体の新興国では中国ノウハウが応用可能で、東南アジアも南米も後発だったが、異様な強さで市場に食い込んでいる。
フィンテックも芽が出てきた
注目したいのはフィンテック部門SeaMoneyで、第3四半期のデジタルウォレットの総支払額は46億米ドルで、前年同期比111%の増加となった。また、デジタルウォレットの四半期ごとの支払ユーザー数も3,930万人に増加した。
東南アジアや南米の経済成長やShopeeアプリとのバンドルで相当伸びしろが期待できそうだ。シンガポールのデジタルバンク認可も追い風になる。
さらに、Seaは最近、ホテル予約という新しい分野にも進出している。Shopee Hotelは、シンガポール、マレーシア、タイ、台湾、インドネシア、ベトナム、フィリピンで利用可能な機能だ。この新機能により、ユーザーはShopeeアプリを通じてAgodaとBooking.comの宿泊施設の在庫にアクセスできるようになる。
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