SiFiveは、オープンソース命令セットアーキテクチャ(ISA)のRISC-Vに基づいてコンピューターチップを製造するファブレス半導体企業です。SiFiveの製品には、SoCおよび開発ボードが含まれます。

SiFiveは、2015年にカリフォルニア大学バークレー校の3人の研究者であるKrsteAsanović、Yunsup Lee、およびAndrew Watermanによって設立されました。2016年11月29日に、SiFiveはFreedom Everywhere 310 SoCとHiFive開発ボードをリリースし、SiFiveがRISC-V ISAを実装するチップを製造した最初の企業となりました。

2017年8月、SiFiveはNaveed SherwaniをCEOとして雇いました。Naveed SherwaniはSiFiveで14社目というスタートアップの雇われCEOのプロです。共同創業者のKrsteAsanovićはチーフアーキテクト、Yunsup Leeは最高技術責任者という布陣を整えました。社内のビジネス体制が固まり、以降、資金調達が本格化しています。

会社はイノベーションを民主化することをビジョンとしており、もっと狭い範囲で言えば、IP(知的財産権)の民主化をセミコンダクター業界において実行しようとしています。

SiFiveを利用するメリット

SiFiveは、市場投入までの時間が短縮された、低コスト、低リスク、カスタム可能なチップを提供します。

業界にはArmへの不満があります。Armのライセンス料の科し方や複雑化し柔軟性に欠けた契約は、インターネット・オブ・シングス(IoT)時代のハードウェアが要請する要件と齟齬をきたしています。命令セットのオープンソース化を目指すRISC-Vが、カルフォルニア大学バークリー校から生まれました。このRISC−Vの牽引車として期待されているのが、同校の研究者が創業した新興企業SiFiveです。同社は、最初にコミュニティを構築し、その潜在性着目する業界大手からの投資を獲得し、急速な勢いで拡大しています。

SiFiveは2017年5月初めに、組み込み機器用のRISC-Vコアを発表し、そのとき、数十万ドルのライセンス料を1回支払えば、Web上からそのプロセッサコアにアクセスすることができるという手法を提示し始めました。

SiFiveのアプローチはユニークで、ユーザーへの価値提案は成功しています。SiFiveを利用することで、より多くの企業がチップを設計でき、所要時間は通常の1年以上ではなく数か月で、コストは低くなります。この成功は、SiFiveにも前例のない成長をもたらしています。

半導体業界の現況としては、半導体製造技術の微細化とともに、開発費が急増しているが、開発件数は減少傾向にあるということです。つまりコストの高騰とともに新規参入者の参入余地は少なくなり、イノベーションが停滞している、と考えられます。

この問題を解決するのが、RISC-Vの特徴の一つであるオープンソースという設計手法です。RISC-VではISAがオープンソースとして無償で公開され、使用料(ライセンス料)とLSIごとのロイヤリティを支払うことなく、誰でも自由に改良・再配布が可能です。マイクロプロセッサーを独自に開発する場合に注意する必要のある特許侵害の懸念も払拭できます。ISAを使う敷居を下げて、企業や組織の枠を越えたコミュニティの集合的な知識を集めて、低コストで技術の開発と改善を促す、というLinuxのようなオープンソースプロジェクトを例にした哲学を実行しようとしています。端的に言えば、RISC-Vは「ハードウエアのLinux」を狙っているといえるかもしれません。

このときに、特にスモールプレイヤーが、SoCの設計とカスタマイズを手助けすることで、RISC-Vを利用する障壁を下げる役割を果たしそうなのが、SiFiveなのです。

New Semi-Custom Chip Business Model

SiFiveは、市場投入までの時間が短縮された、カスタム可能なチップを提供します。その対価として顧客から一定のライセンス料を取りますが、価格はプロプライエタリのプレイヤーのそれよりもだいぶ安く、その契約内容は柔軟そのものです。

現在、市場に出回っているチップは多くのアプリケーションのために使用されており、今後数年間、顧客が特定のドメインに特化したハードウェアを要求するにつれて、カスタムSoCの必要性が高まるとみられています。ただし、最新型SoCの開発は、財務的な観点からは非常に手頃なタスクではありません。単純なチップを構築するには、ArmやImagination Technologiesなどの企業から汎用コンピューティングコア(またはISA自体)のライセンスを取得する必要がありますが、さまざまなサポートIP(メモリコントローラー、I / Oインターフェイスなど)も取得する必要があります。あるいは、Rambusのような会社に発注するか、またはすべてをゼロから構築するしかありません。

ライセンスでは通常、企業は一連の権利とSDKの前払い料金を支払い、その後、販売するIPを含むすべてのASIC(特定用途向け集積回路)のロイヤリティを支払う必要があります。言い換えれば、チップを製造している会社は多額の投資をする必要があり、ライセンス料は販売されたすべてのユニットの価格に影響します。さらに、チップを作成するには、要件を指定し、IC(集積回路)を設計し、欠陥を分析し、必要に応じて修正を実装する半導体開発チームが必要です。たった1つのチップに専任の開発チームを雇うことは、費用がかかり複雑です。その結果、多くの新規参入者は、より大きなプレーヤー(社内に適切なチームを持っている)に参加するか、ソフトウェアに集中し、市販のシリコンを利用して最新のデバイスを構築する必要があります。SiFiveは、RISC-Vコアとその一般的なFreedomプラットフォームおよびテクノロジーを使用して、後者の企業向けのセミカスタムチップを設計しています。RISC-Vコア(およびSiFiveによって設計された一般的なコンポーネント)の使用により、開発コストを大幅に削減することが共用されます。

最初、SiFiveは、さまざまなアプリケーション向けに2つの基本プラットフォームを提供します。パフォーマンスを要求するアプリケーション向けのFreedom Unleashed(U500)と低電力デバイス向けのFreedom Everywhere(E300)です。 両方のプラットフォームがTSMCで検証されており、SiFiveがカスタマイズを迅速に追加できるようになりました。これは、FreedomベースのASICの大部分が既に開発されているからです。

HiFive Unleashed. HiFive Unleashed is the ultimate RISC‑V development board. Featuring the Freedom U540—the world’s first-and-only Linux-capable, multi-core, RISC‑V processor—the HiFive Unleashed ushers in a brand-new era for RISC‑V. Source: SiFive

SiFiveによると、特定のケースでは、シリコンチームをまったく持たない新興企業に製品を提供できるということです。つまり、SiFieの開発者は非常に小さなプレーヤーのニーズに対応する予定です。通常、このような企業は高コストやその他の困難によりカスタムシリコンにアクセスできませんが、SiFiveは、事前に開発されたFreedomプラットフォームを使用すると、スタートアップがセミカスタムチップを構築し、より高いパフォーマンスや既製のカスタマイズされていないチップまたはFPGA(Field Programmable Gate Array:現場で書き換え可能な論理回路の多数配列?)と比較して消費電力が低い。SiFiveは、ガレージ内の数人のエンジニアが「中程度のキックスターターキャンペーンで」カスタムSoCにアクセスできる未来を想定しています。

従来の半導体企業とIPプロバイダーは、取引が非常に困難です。 彼らはビジネスプロセスを最大の顧客を追いかけることだと信じています。たとえば、インテルはAppleを常に追いかけています。つまり、半導体ベンダーは、大規模な顧客が必要とするソリューションを作成し、販売し、サポートするという業界構造が確立しています。他方、IPベンダーは多くの質問と遅延を顧客に投げかけ、大規模で複雑な契約を要求し、一度顧客を獲得したあとは、ロイヤリティ料を請求し続けます。

SiFiveは、自分たちはRISC-V互換コアに基づくさまざまなチップの開発を専門とするファブレス半導体企業である、と主張しています。セミカスタムRISC-V SoCは最も収益性の高い市場セグメントではないかもしれませんが、SiFiveはここで唯一のプレーヤーであり、同社は明らかにその独自の地位を享受する可能性があります。RISC-V ISAを使用するというSiFiveの決定は、RISC-Vの開発者である創業者のバックグラウンドと会社のビジネスモデルを考えれば当然です(RISC-Vは無料です)。ただし、背景とコストだけが理由ではありません。マイクロアーキテクチャへの関心が高まっています。AMD、Google、IBM、NVIDIA、Microsoft、Qualcomm、Western Digitalなどの企業が、テクノロジーの開発を管理するRISC-V Foundationに参加しました。

セミカスタムチップビジネスの性質を考えると、SiFiveは自社のプラットフォームに関心のある会社の名前を公開できません。これは民間企業であるため、商用チップを開発しているかどうかを確認する必要はありません。ただし、前述の業界の重鎮からRISC-Vへの関心を考えると、SiFiveは興味深いセミカスタムSoCを構築できるというだけでなく、実際に基づいて業界初の商用チップを開発できるため、注目すべき企業のようです。

ベンチャー投資調査会社のCrunchbaseによると、SiFiveは4回のラウンドで1億2950万ドルを調達しています。投資家は、投資サイクルが半導体業界に適合しづらいベンチャーキャピタルではなく、半導体業界の大企業が占めています。

同社は、2018年4月に5,060万ドルを調達しました。投資家はWestern Digital Capital、Samsung Venture Investment、Intel Capitalです。同社によると、中国でのSiFiveの技術に対する関心は米国よりも急速に高まっており、中国の姉妹会社SaiFan Chinaはすでに約40人の従業員を雇用しています。Qualcomm Venturesは昨年6月、RISC-VプロセッサIPスタートアップであるSiFiveの最新の投資家になりました。SiFiveは、6,540万ドルの資金を調達し、SaiFan Chinaにさらに1,100万ドルの資金を提供したと発表しています。

参考文献

Qualcomm Ventures. Portfolio Watch: By Democratizing Custom Silicon, SiFive Is Igniting Global Innovation in the Semiconductor Industry and Beyond.

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