SPAC、ブーム崩壊から即座の復調

一連のスキャンダルと規制当局の監視により、年初に最高潮に達した特別目的買収会社(SPAC)ブームがQ2に崩壊したが、Q3からSPACは再び動き出し、復調の気配だ。

SPAC、ブーム崩壊から即座の復調
"NYSE"by Justin in SD is licensed under CC BY-NC-SA 2.0

要点

一連のスキャンダルと規制当局の監視により、年初に最高潮に達した特別目的買収会社(SPAC)ブームがQ2に崩壊したが、Q3からSPACは再び動き出し、復調の気配だ。


SPACの欠陥はスポンサー(発起人)やその他のインサイダーが過分な報酬を取り、その歪みを公開市場の投資家(主に個人投資家)に負わせることだ。これらは早い段階から、アカデミアや弁護士、会計士などから指摘されてきた。

バブルは再び起こっており、本質的に価値のない企業が、数十億ドルのバリュエーションを楽しんでいる。

今年Q1がピークで、この四半期だけでSPACは2020年代の資金調達の記録を超え、1,090億ドル相当の取引を成立させた。また、Dealogicのデータによると、今年の最初の3ヵ月間に、投資家はPIPE(上場企業の私募増資)案件に300億ドルを投じた。これは前四半期の2倍以上の量だ。

フィナンシャルタイムズが引用した市場関係者によると、PIPEの量は現在、月平均約40億ドルにまで減少しており、その多くは大手投資信託や政府系ファンドではなく、内部の人間からのものだという。この変化は、大型プレイヤーがSPACのPIPEへの自信を失い、その結果、より狭い範囲の経営者や投資家が市場を支えていることを意味している。

フィナンシャルタイムズがRefinitivのデータの分析したところ、2021年に完了した評価額10億ドル以上の案件の65%が、合併完了時の価格である10ドル以下で取引されていることがわかった。すべての企業が最高値を下回っており、中には70%も下落している企業もある。

電気飛行機の新興企業であるアーチャーはユナイテッド航空やアブダビの政府系ファンドの子会社であるムバダラ・キャピタルなどの投資家から、PIPEを通じて6億ドルを調達した。しかし、その5ヵ月後、企業価値を10億ドル下がった。

アーチャーの株価は2月のピーク時から65%下落して6ドルを切っている。それでも「プロモート」と呼ばれるスポンサーに割り当てられた株式特典は、割当時の2万5,000ドルから現在では約7,500万ドルの価値がある。

自動車保険会社のMetromileは2月のSPACとの取引で市場価値が25億ドルに達したが、今月、住宅保険会社のLemonadeにその5分の1の価格で買収された。MetromileにはSPACのスポンサーとしてTwitterで150万人のフォロワーを持つChamath Palihapitiyaをはじめとする支援者が1億7,000万ドルを投資し、約13億ドルの企業価値で上場した。SPACの投資家のほぼ全員が、合併後の会社の株主として残ることを選択し、5分の1の価格で手放すことになった。

米経済誌FortuneによるとMetromileは、今年の有効な保険契約数が40%増の約13万件になると予測していた。しかし、第2四半期には600件以上の契約が減少した。この減少は、コロナウイルス感染症による「予想以上の解約」と「ライフスタイルの変化」によるものだと同社は説明している。

MetromileがLemonadeへの売却を発表した時点で、同社の株価は80%も下落し、最安値の3ドルにまで達していた。

復活の最大の兆しは、ドナルド・トランプ元米国大統領が提唱したソーシャルメディア「Truth Social」の運営会社との合併計画を進めるSPAC「Digital World Acquisition Corp(DWAC)」が登場したことだ。DWACが計画を公表すると、株価は800%上昇した。

SPACの株価は、誇大広告に基づいているように見えた。買収に伴うプレゼンテーションは、大学生のインターンさながらのもので、同社の事業内容やソーシャルメディアアプリ「Truth Social」の詳細はほとんど書かれておらず、「ビッグテックの専制政治に立ち向かう」とだけ書かれていた。

フィナンシャルタイムズ によると、2020年以降に完了した各SPAC案件の高値取引時点では、スポンサー株式の総額は370億ドルにも膨れ上がっていたと分析されているという。このデータには、スポンサーがSPACの合併を最終的に決定する前に行う譲歩は考慮されておらず、スポンサーは株式の価値を完全に受け取るまでに何年も待たなければならなかったり、目標価格を達成しなければならないことが多い。

しかし、このデータは、比較的少額の投資でもスポンサーに大きな利益をもたらし、実行可能な取引を追求する動機付けになることを示している。また、この総額には、スポンサーが先行投資の対価として受け取る有利なワラントは含まれていない。

また、イナゴの大群のように行われたSPACのIPOは投資銀行を儲けさせている。Refinitivのデータによると、2020年以降、IPOの引受会社はSPACから58億ドルの手数料を得ている。最も活発な引受人であるCitiは、その期間中に140件近いIPOを手掛けて7億4000万ドルを稼いだ。さらに、投資銀行はSPACの合併やPIPEの資金調達に関する企業へのアドバイスで20億ドルを得たとRefinifivのデータは示している。

「必要悪」かそれとも…?

SPACのスポンサー(発起人)は、このような崩壊と復活のサイクルが成熟化の兆しであることを期待している。ジャンク債市場は、1980年代に猛烈なブームとスキャンダルに見舞われた後、現代の金融システムに不可欠な存在となった。

SPACのスポンサーが享受している不当に有利な報酬は、エリザベス・ウォーレン上院議員をはじめとする議員たちの注目を集めている。エリザベス・ウォーレン上院議員は12日、ドナルド・トランプ前大統領の新しいソーシャルメディア・プラットフォームに関わるSPAC取引の計画について、証券取引委員会に証券違反の可能性を調査するよう求めた

ウォーレンは"Trump's SPAC Is Screwing His Own Supporters While Enriching Wall Street Elites”(トランプのSPACは、彼自身の支持者をねじ伏せる一方で、ウォール街のエリートたちを豊かにしている)と題された米経済誌フォーブスの記事の一節を引用して「この取引は『彼らの売り文句に引っかかった人が騙されたとしても背後にいるセールスマンは傷を負わない』というスキームのように疑わしく見える」と主張している。

億万長者のヘッジファンドマネージャー、ビル・アックマンが立ち上げたPershing Square Tontine Holdingsに対する集団訴訟が注目を集めたことを受けて、米国の大手法律事務所数十社が団結し、公開書簡で反論した(法律事務所はSPACで多額の手数料収入を望める)。原告はPershing Square Tontine Holdingsに対する訴訟では、同社が事業会社というよりも投資ファンドに近い運営をしており、ヘッジファンドと同様に、1940年法によって規制されるべきだと主張している。この注目を集めている公判はSPACの規制に影響を与える可能性がある。

また、燎原の火は他に燃え広がる可能性がある。原告は元米国証券取引委員会委員のロバート・ジャクソンやイェール大学法学部教授のジョン・モーリーなどの弁護士グループが支援しており、今後数ヶ月の間に50もの異なるSPACを対象に訴訟をすることを検討している。

一口15万円の投資を受け付け中

1口15万円の投資を常時受け付けます|吉田拓史 株式会社アクシオンテクノロジーズ代表取締役|note
こんにちは、株式会社アクシオンテクノロジーズの代表取締役社長、吉田拓史です。弊社は11月15日をもちまして常時開催型の公募を開始しました。今後は投資家の方々はいつでも弊社に1口15万3,000円で投資できます。 これまで弊社は1口50万円で公募・私募を行ってきましたが、以前からサイズをより細かくしてほしいという要望を頂いていました。 常時開催型の公募のキモは月末〆です。15万3,000円の入札をいただき、それを都度都度、登記する事務コストはあまりにも膨大なため、その月に頂いた入札をすべて月末〆、翌月登記で処理させていただくことで、1口15万円の公募が可能となります。 公募に至るま

クリエイターをサポート

運営者の吉田は2年間無給、現在も月8万円の役員報酬のみ。

BTCアドレス:3EHYZm8hyCRyM1YSrF97dq8a25t5c2wJy9

Betalen Yoshida Takushi met PayPal.Me
Ga naar paypal.me/axionyoshi en voer het bedrag in. En met PayPal weet je zeker dat het gemakkelijk en veiliger is. Heb je geen PayPal-rekening? Geen probleem.
デジタル経済メディアAxionを支援しよう
Axionはテクノロジー×経済の最先端情報を提供する次世代メディアです。経験豊富なプロによる徹底的な調査と分析によって信頼度の高い情報を提供しています。投資家、金融業界人、スタートアップ関係者、テクノロジー企業にお勤めの方、政策立案者が主要読者。運営の持続可能性を担保するため支援を募っています。

Read more

OpenAI、法人向け拡大を企図 日本支社開設を発表

OpenAI、法人向け拡大を企図 日本支社開設を発表

OpenAIは東京オフィスで、日本での採用、法人セールス、カスタマーサポートなどを順次開始する予定。日本企業向けに最適化されたGPT-4カスタムモデルの提供を見込む。日本での拠点設立は、政官の積極的な姿勢や法体系が寄与した可能性がある。OpenAIは法人顧客の獲得に注力しており、世界各地で大手企業向けにイベントを開催するなど営業活動を強化。

By 吉田拓史
アドビ、日本語バリアブルフォント「百千鳥」発表  往年のタイポグラフィー技法をデジタルで再現

アドビ、日本語バリアブルフォント「百千鳥」発表 往年のタイポグラフィー技法をデジタルで再現

アドビは4月10日、日本語のバリアブルフォント「百千鳥」を発表した。レトロ調の手書き風フォントで、太さ(ウェイト)の軸に加えて、字幅(ワイズ)の軸を組み込んだ初の日本語バリアブルフォント。近年のレトロブームを汲み、デザイン現場の様々な要望に応えることが期待されている。

By 吉田拓史