破綻のSVBは米スタートアップ業界を「独占」していた

米国の地方銀行シリコンバレーバンク(SVB)がまたたく間に破綻し、同社が米国のスタートアップ・エコシステムに不可分なまでに組み込まれていたことが分かった。

破綻のSVBは米スタートアップ業界を「独占」していた
2023年3月10日(金)、米カリフォルニア州サンタクララにあるシリコンバレーバンク(SVB)本社。フィリップ・パチェコ/ブルームバーグ

米国の地方銀行シリコンバレーバンク(SVB)がまたたく間に破綻し、同社が米国のスタートアップ・エコシステムに不可分なまでに組み込まれていたことが分かった。


SVBは多くのスタートアップと独占的に取引していた。SVBとの独占的取引が、「ベンチャーデット」と呼ばれるスタートアップ向けの高利の融資に伴うコベナンツ(特約条項)に盛り込まれていたという。

米スタートアップはSVBのベンチャーデットをよく利用していた。SVBは長い間、ベンチャーデットのリーダーとして知られてきた。SVBの破綻は、負債調達に傾斜する業界で、ますます注目を集めているベンチャーデットにどのような影響を与えるのだろうか。

SVBの融資にはプライベート・エクイティやVCのファンド向けのものもあり、「キャピタル・コール・ライン」という信用枠を専門に扱っていた。この信用枠は、VCが投資決定を下した瞬間にSVBから現金を調達し、すぐにスタートアップに投資できるようにするものだ。VCはその後、年金基金のようなLPから事前に投入を約束した資金を受け取り(これを「キャピタル・コール」と言う)、SVBに返済する。

SVBはVCの金主でもある。年間報告書によると、SVB傘下のSVB CapitalはVCのリミテッド・パートナー(LP)として95億ドルを運用。多くのプライベート・エクイティがこの投資枠に興味を示しているという。

SVBはライトスピード、ベインキャピタル、インサイトパートナーズなど、2,500社以上のVCの取引銀行でもあった。また、多くの技術系エグゼクティブの個人資産を管理し、シリコンバレーの技術系カンファレンス、パーティー、ディナー、メディアなどのスポンサーとして確固たる地位を築いていた。

不動産リース・スタートアップの創業者Brad Hargreavesによると、SVBは、スタートアップに口座を提供し、貸し手であっただけでなく、顧客企業の創業者の多くに個人住宅ローンを含む資産管理サービスを提供していた。

Jenkins作者の川口耕介はこう自身のブログに書いている。「シリコンバレーには、工場のようにスタートアップを製造する仕組みがあるのである…機関投資家は地元の法律事務所ともSVBとも繋がっているので、彼らの流れ作業で必要な書類などが作られる」

「投資家とSVBの間には、間違いなく何かの契約が存在していて、自分のところで作る会社はSVBに持っていくという約束になっているはずだ。こちらとしても、周りの創業者は全部SVBだし、あえてベルトコンベアを外れる理由がないから、言われるままである。スタートアップ向けの融資プログラムも充実している。このようにして、SVBがテックスタートアップを独占する仕組みが盤石のものになる。法人向け銀行口座はじゃんじゃん手数料を取られていくから、結構馬鹿にならない儲けになっているはずだ」

毎年大量のスタートアップを生み出すYコンビネーターのゲイリー・タンは、SVB破綻を「スタートアップの絶滅レベル」の出来事と呼んだ。「政府から何らかの計画がなければ、これらの預金者は数週間、数ヶ月を生き延びることはできないだろう」(最終的に預金は保護されることになった)。

破綻は、中国の投資家や新興企業の懸念を引き起こした。中国のスタートアップは、オフショア銀行口座がなければ、海外の投資家から外貨で資金を調達することができない。SVBの口座開設は、最も簡単な選択肢だったのだ。その預金が一時危機にさらされた。

ベンチャーキャピタルファンド、クレオキャピタルのマネージングディレクター、サラ・クンストは、米ビジネス誌Fortuneに対し、「SVBでは、他の銀行が負わないようなリスクをたくさん負っていた」と述べた。「それが最終的に彼らの終焉の一因となった」

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