チップの微細化のルールはすでに「ムーアの法則の終わり」に達したと考えられている。微細化が処理速度や消費電力、コストを低下させる時代はすでに終わった。近年、チップ産業はコストを容認しながらも微細化やマルチコア化を進めてきた。チップメーカーはチップを三次元構造にしていくことで物理的な集積の壁を越えようとしている。

インテル共同創業者ゴードン・ムーアは1965年にチップ当たりのトランジスタ数が1~2年で2倍になると予測した(その後期間を「18ヶ月から24ヶ月」に訂正した)。この法則はIntelの存在理由であり、現代社会の圧倒的進化の原動力のひとつでもあった。だが、法則は終わりを迎えている。

2014年のDRAMチップには80億個のトランジスタがあったが、160億個のトランジスタをもつDRAMチップは2019年まで量産されなかった。5年で”たったの2倍”である。ムーアの法則が正しいのならば、2019年には4倍のDRAMチップが開発されていないといけないだろう。2010年のIntel Xeon E5マイクロプロセッサは23億個のトランジスタを有し、2016年のXeon E5は72億個のトランジスタを有している。これも6年で”たったの3倍”で法則に反する。半導体製造技術は改善を続けているが、その性能改善の速度は目に見えるように遅くなっている。

あまり知られていないが重要なのはデナード則(デナードスケーリング)だ。1974年のロバート・デナード(Robert Dennard)の洞察は、微細化が進めば処理速度は向上し、同じ面積の中に複雑な回路を集積することができ、消費電力が低下すると主張した。微細化が性能向上と電力消費の効率化を約束する魔法のような法則である。デナード則は最初に観測されてから30年たった2000年代なかばに終了した。微細化がもたらすメリットは低下し、半導体企業はシングルプロセッサでの性能向上からマルチコアで性能を増やすことでムーアの法則を守ることを考えたのだ。

ただし、このマルチコア化による性能改善にも「アムダールの法則」という制約が課せられている。アムダールの法則は複数のプロセッサを使ったときの理論上の性能向上の程度を予測するためにしばしば使われるが、簡単に説明すると、性能向上率を決定するのはプロセッサ数ではなくアルゴリズムであり、アルゴリズムは、最終的にこれ以上並列化できないという地点に達する。これがマルチコア化による並列コンピューティングの制約である。

業界はシステムオンチップのような形で経済的得を表現し、ソフトウェアの改善の力を借り、命令セットの簡易化、アウト・オブ・オーダー実行、投機的実行などの様々な最適化を施している。万策を尽くしているが成果がサチってきている。MicroProject Catapult の責任者 Doug Burger は「私たちは今、減速している時期にいると思います。半導体技術の各新世代交代の間は確実に長くなっています。そして実際の問題は、私たちが原子の限界に直面しているということです」と指摘している。

カリフォルニア大学バークレー校教授でグーグルAIのデイビッド・パターソンは、プロセッサの性能改善は「パフォーマンスは3パーセントしか伸びなかったため、倍増するのに20年を要します。そこに座ってチップが速くなるのを待っているだけなら、長い時間待たなければなりません」と指摘している。