TikTok、広告売上拡大のため動画尺を長くする
TikTokは広告収益を拡大するため、動画の尺を長くすることをテストし続けている。一方、米競合企業はショート動画製品を続々と投入している。TikTokは他の侵入を許さない堀を築けるか。
米テクノロジーメディアWiredは、TikTokの代表者が、そのユーザーベースの約半数を調査し、その結果ユーザーには集中力がなく1分以上の動画を見ることにストレスを感じることを知ったと報じている。
Wiredの寄稿者クリス・ストークル・ウォーカーがTikTokの幹部から確認した内部調査データによると、ソーシャルメディアユーザーは「大量の動画コンテンツのなかで溺れている」という。大量の動画にさらされることで人々の集中力が打撃を受けていたのだ。TikTokが調査したユーザーの50%近くが、1分以上の動画はストレスになると答え、ユーザーの3分の1が倍速でオンライン動画を視聴していたという。
2022年1月下旬にTikTokが企業顧客向けに行ったプライベートプレゼンテーションで共有されたデータによると、全世界で10億人、米国で1億人以上、英国で2300万人いるTikTokユーザーの平均は、毎日1時間25分をアプリで過ごしているという。平均的なTikTokユーザーは、1日に17回、アプリを開いて動画を視聴している。
2021年6月、日本の広告主向けに発表されたスライドデッキでは、スマートフォンユーザーは集中力が短い時間に限られているため、TikTokの60秒の手軽な動画が他のどのソーシャルメディアよりもユーザーを惹きつけられると主張しているとWiredの記事は報告している。
昨年、TikTokは動画の最大再生時間を1分から3分に延長することを発表した。8月以降、TikTokは、さまざまなユーザーグループに対して、5分間の動画の大規模なベータテストを実施した。少人数のグループを対象にした10分動画のテストも行われてきた。
TikTokが動画の時間を延ばそうとするのは、尺が長ければ長いほど、広告を挿入する機会が増え、広告の種類も多様にできるためだ。また、広告主に対し「高い集中力」の存在を主張するのもたやすくなる。
TikTokの上手な使い方を教えるコンテンツ・プレイブックは、11秒から17秒の動画がTikTokで最も効果的であると指摘している。2021年11月までに、最適な推奨動画の長さは21秒から34秒と倍増した。TikTokが2022年初頭に一部のクリエイターと共有し、Wiredが確認データによると、TikTokで「最もパフォーマンスの高い」動画の約4分の1が、このスイートスポットに該当するという。昨年、TikTokはスマートTVアプリを世界中で展開し、テレビ番組を見るのと同じように、人々が動画に没頭することに未来を見出していることを示唆している。
TikTokの競合他社が最近、独自の形式のショートビデオをリリースしたことと、TiKTokの変化は無関係ではないだろう。インスタグラムにはReelが、スナップチャットにはSpotlightが、YouTubeにはショートが登場した。これらのプラットフォームはすべて、最大で1分の動画を配信している。
Snapchatととの競争と同様、インスタグラムによるコピーキャット作戦をとるメタは、昨年10月からTikTok広告と同様に、Reelsの間にフルスクリーン広告と没入型広告をテストしており、今後数カ月のうちに全世界で展開する予定だ。ユーザーは、これらの広告にコメント、「いいね!」、保存、共有したり、スキップしたりすることができるようになる予定だ。
YoutubeもTikTokのコピーであるショートをすでに投入しているが、まだ広告の挿入は始まっていない。
TikTokとしてはコピーで追走してくる競合に対して、広告商品の優秀さを広告主に印象づけ、先行者利益を築いておきたい。広告主や代理店は一度広告のパイプラインを築くと、そのスイッチングコストのため、別のプラットフォームを採用することに抵抗を示す傾向がある。
TikTokはそのプレゼンスを収益化に結びつけることに成功しているとは言い難い。TikTokの親会社の収益の大部分は抖音(Douyin)と今日頭条(Toutiao)等の中国国内のアプリからもたらされている。
プレゼンスと売上のギャップを埋めたいバイトダンス
ウェブサイトセキュリティ会社のCloudFlareの報告によると、昨年、TikTokはGoogleを抜いて世界で最もアクセス数の多いウェブサイトになった。10億人以上のグローバルユーザーを持つTikTokは、ブランドと広告主の注目をしっかりと確保した。ブランドは、認知度とエンゲージメントを高めるためにTikTokで強い存在感を示すことの重要性を理解しているが、多くのブランドはまだ「TikTokは販売成果や広告費に対するプラスのリターンを促進できるのか?」と疑問を抱いている。
TikTokでのマーケティングを評価する調査も存在する。ニールセンの新しいリサーチでは、これに対応している。東南アジアの15のCPGブランドのデータを使用したニールセンのマーケティングミックスモデリング研究(MMM)の結果、ブランドがメディア効率を高め、ビジネスの成長を実現するためにTikTokが果たすことのできる深い役割が明らかになった。この調査結果では、広告主がTikTokへの投資を最大化し、プラスの広告費収益率(ROAS)を達成する方法を紹介している。
MMMによる調査によると、より高い広告費用対効果を達成したブランドは、TikTokの幅広い広告フォーマットを活用し、複数の頻度または常時接続のキャンペーンを実施していることが明らかになった。TikTokの有料メディアは、ニールセンの他の測定メディアと比べて1.6倍高い広告費用対効果を実現した。さらに、TikTokでのアーンドインプレッションの増加により、広告費用対効果(ROAS)は2.6ドルに倍増した。
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