トランプが仕掛けた米中貿易戦争の大失敗 ― ポール・クルーグマン
2021年7月11日(日)、米国テキサス州ダラスで開催された保守政治行動会議(CPAC)で講演するために到着したドナルド・トランプ前米大統領. Photographer: Dylan Hollingsworth/Bloomberg

トランプが仕掛けた米中貿易戦争の大失敗 ― ポール・クルーグマン

【ニューヨーク・タイムズ】トランプ前大統領は中国から2,000億ドルの米国製品の追加輸入枠を引き出したと誇ったが、騙されただけだった、とポール・クルーグマンは言う。トランプ時代の古めかしい「重商主義」は米経済に暗い影を落としているとクルーグマンは批判している。

吉田拓史

【ニューヨーク・タイムズ、著者:ポール・クルーグマン】ドナルド・トランプの貿易戦争を覚えているだろうか? 公正な選挙を覆して権力を維持しようとする彼の努力に比べれば、些細なことに思えるだろう。在任中の政策においても、パンデミックを否定したことに比べればはるかに重要度は低く、減税や医療制度の破壊に比べれば、おそらく重要度は低いだろう。

しかし、貿易戦争はトランプ特有のものだった。彼の他の政策は共和党の標準的なものだったが、他の党員は彼の貿易赤字への執着を共有していなかった。実際、米国の法律では大統領が関税を設定する際に大きな裁量権を与えられているという事実を除けば、彼は貿易赤字の面ではそれほど大きなことはできなかった。トランプだけが貿易赤字を重要視し、中国が2021年末までに米国の商品・サービスを2,000億ドル追加購入することに合意した「歴史的な貿易取引」と称して、えーと、自慢していた。

さて、貿易戦争について当初からの有力な情報源であるピーターソン国際経済研究所のチャド・バウンが、この取引の最終的な評価を行っている。中国は、トランプ大統領が約束した2,000億ドルの追加輸出を何も買わなかった。

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