TSMC元幹部の蒋尚儀がSMICを退社した内幕:人生で最も愚かな決断だった
世界最大の受託チップファウンドリの構築に貢献した台湾の半導体業界のベテラン、蒋尚儀が、中国本土のトップチップメーカーへの入社を決めたことを「愚かなことの1つ」と呼んだことが、新たに公開されたインタビュー記録から明らかになった。
世界最大の受託チップファウンドリの構築に貢献した台湾の半導体業界のベテラン、蒋尚儀が、中国本土のトップチップメーカーへの入社を決めたことを「愚かなことの1つ」と呼んだことが、新たに公開されたインタビュー記録から明らかになった。
台湾積体電路製造(TSMC)の元幹部で、2006年まで同社の研究開発を率いていた蒋は、カリフォルニア州にあるコンピューター歴史博物館(CHM)との3月のインタビューで、SMICに入社したのは間違いだったと語っている。 「人は一生のうちで愚かなことをするときがある、SMICに入ったのもその愚かなことの一つだ」。
中国の重慶市で生まれ、台湾で育った蒋は台湾のチップ産業の発展に貢献した半導体専門家の1人である。
現在76歳の蒋氏はTSMCを退職後、2016年12月から2019年6月まで上海に本社を置く中芯国際集成電路製造(SMIC)で独立した非執行取締役を務めていた。2019年6月に一度退社して武漢弘芯半導体のCEOを務めたが、2020年12月にSMICに副会長として復帰した。武漢弘芯は2021年4月に創業前に2兆円の負債を抱えたまま倒産し、蒋は武漢弘芯での経験を「悪夢」と呼んだ。彼は当時、2020年7月に地元政府が問題を暴露するまで、HSMCの財政難の程度を知らなかったと述べている。
彼がSMICに入社してわずか3日後、米国はSMICに対して、10ナノメートル以下のチップを製造する先端設備の購入を禁ずる制裁措置を発動した。
プリンストン大学とスタンフォード大学の大学院で学んだ蒋は、「米国籍を持つ台湾人ということで、中国本土の政府から信頼されていないのではと思った」と語っている。
蒋は2021年11月、副会長や執行役員など、SMICでのすべての役割を放棄した。当時、彼は、家族のもとで老後を楽しむために米国に戻ると語っていた。
CHMとのインタビューで蒋は、SMICの取締役に就任することを決めたのは、TSMCの元同僚で当時SMICの最高経営責任者だった親友の邱慈雲最高経営責任者(CEO)が協力を求めたからだと述べた。また、TSMCの創業者である張忠謀からも祝福を受けたという。
しかし、TSMCの競合他社に入社した蒋の決断は、台湾では反国民的だとの見方が強かった。「それまでは、台湾では結構いいイメージを持っていたんだけどね」と、彼は言う。