日本企業が直面する中国の法執行の不確実性

中国のデジタルデータに関連する法律の成立や最近の広範な業種に対する取り締まりの強化は、中国の経済成長に伴い相互依存を深めた日本企業にとってリスクとなっている。特に読みづらい法執行についての懸念は大きい。

日本企業が直面する中国の法執行の不確実性
Photo by Ling Tang on Unsplash

要点

中国のデジタルデータに関連する法律の成立や最近の広範な業種に対する取り締まりの強化は、中国の経済成長に伴い相互依存を深めた日本企業にとってリスクとなっている。特に読みづらい法執行についての懸念は大きい。


近年、中国ではデジタルデータの取り扱いに関する法律が次々と成立した。特にデジタルデータをめぐる3法、2017年、サイバーセキュリティ法(2017年6月施行)、データセキュリティ法(2021年9月施行)、個人情報保護法(2021年11月施行予定)は企業活動への影響があると見られている。

PwCコンサルティングのパートナー、山本直樹は、データの囲い込みがビジネスの成功に直結することが背景にあり、中国だけが特別ではなく、欧州連合(EU)のGDPR(一般データ保護規則)、日本の改正個人情報保護法などのように他の国も必要と考えていることをやっているにすぎない、と語った。

一方で、法執行に関しては不確実性が残るという。山本は「(政府が法律を)どう運用するかは不透明。個人や法人を罰するときの名目として使われる可能性がある。中国特有の難しさがある」と説明した。

不確実性の例として、今年6月、滴滴出行(DiDi Grobal)が米上場直後に中国サイバースペース管理局(CAC)が同社の調査に乗り出し、株価が暴落した件について私は質問した。中国政府の法執行の不確実性によって、滴滴の筆頭株主のソフトバンク・ビジョン・ファンドのように日本企業が打撃を受ける可能性があるだろうか。

山本は「可能性があるかというと、ある。個別企業の企業の状況についてはなんとも言えないが、政府高官の移動履歴のビッグデータを持っているといろんなことが分析でき、中国は米国にそういう情報が渡ることを嫌ったと報道されている」と語った。「どのような手段を使うかは後付ということもあるだろうし、タイミングも事前に予測することは難しい」

山本は「中国企業が海外に上場するときはすべからく審査するとなっているので今後は対応可能だ。当局がしたいと考えていることは、文脈がある。その文脈に注意をはらう必要がある」と説明した。

売上規模100億円以上の日本企業に勤める管理職を対象とした、PwC 「地政学リスクに関する日本企業の対応」調査によると、日本企業が最も懸念している地政学リスクとして「中国国内政治・経済の不安定化」「中国の台頭による周辺国との軋轢」「ロシア・中国・北朝鮮などのサイバーアタック/サイバーテロ」の3点が上位に食い込んでいる。

また「地政学リスクによるビジネスへの影響の懸念により、事業拡大や投資を控えたほうが良いと思われる国・地域を最大で3つまで挙げてください」との質問に対し、中国との回答が47%に達し、2019年の前回調査時の21%から倍増した。2位が「特にない」、3位が香港であることからも、中国への「関心」が高まっていることがわかる。

サーベイ対象の企業は44%が直近5年以内に損失を受けており、3割強は損失額が10億円以上と回答している。「地政学リスクが原因でビジネスに損失を受けたことがあるか」との質問には10年以上前の事例を含むと53%があると回答し、前回調査の39%から伸びた。「地政学リスクが原因で受けた損失額」では10億円以上が33%、そのうち20億円以上が25%を占めている。

本記事はPwCのメディア・イベント「2021調査結果発表:米中欧3極間の緊張関係に伴い急速に高まる日本企業の『経済安全保障・地政学リスク」』への意識」の取材によるもの。
本記事はPwCのメディア・イベント「2021調査結果発表:米中欧3極間の緊張関係に伴い急速に高まる日本企業の『経済安全保障・地政学リスク」』への意識」の取材によるもの。

※本記事はPwCのメディア・イベント「2021調査結果発表:米中欧3極間の緊張関係に伴い急速に高まる日本企業の『経済安全保障・地政学リスク」』への意識」の取材によるもの。