未曾有のベンチャー投資ブーム

世界中がバブルに踊っている―ただし日本はのけものだ。

未曾有のベンチャー投資ブーム
"TechCrunch Disrupt Europe: Berlin 2013 (Day 2)"by TechCrunch is licensed under CC BY 2.0

要点

コロナ禍によってあらゆる産業のデジタル化が急加速。投資慣行もデジタル化した。これに伴い世界は未曾有のベンチャー投資ブームを楽しんでいる。米国だけでなく中国も欧州もアジアもブームに踊っている―ただし日本はのけものだ。


CB Insightsの報告書によると、2021年第2四半期の世界のベンチャーキャピタル投資額は1,560億ドルで、2020年第2四半期の607億ドルから著しい増加となった(前年同期比157%増加)。調査会社FactSetのチャートによると、第2四半期の資金調達額は約1,500億ドルで、CB Insightsの集計結果と同じように前年同期比で増加している。

記録的な第2四半期を含めた2021年上半期についても、同様に衝撃的なデータが出ている。CB Insightsは資金調達額を2924億ドルとし、2020年通年の3,026億ドルに迫っている。世界のスタートアップ企業は、2021年の第1四半期と第2四半期に、2020年の全期間に調達した金額と同額、またはほぼ同額の資金を調達したということだ。今四半期の成績が継続するなら、2021年通年で昨年の2倍に到達する。

CB Insightsのデータによると、取引件数については第2四半期のスタートアップ企業の取引件数は7,751件で、過去最高となっている。一方、FactSetでは5,400件となっているが、これは過去の記録には遠く及ばない。ただ、これらは数え方であり、両者は金額では似通っている。

ユニコーンの増殖具合は常軌を逸している。CB Insightsによると、2021年第2四半期には、136社のユニコーンが誕生した。これは、1年前の2020年第2四半期に誕生した23社のユニコーンの約6倍であり、2020年全体で誕生した128社のユニコーンをすでに上回っている。2021年上半期にユニコーンクラブに入会した企業の平均企業価値は16億ドルで、2016年の12億ドルから33%増加した。

ドットコムバブルとの違いは、北米だけでなく世界中がこのブームに踊っていることだ。例えば、今週インドのeコマース企業であるフリップカートは、主要株主であるウォルマートが主導する投資ラウンドにおいて企業価値376億ドルで、36億ドルを調達したと発表した。同社は来年計画されるIPOでは500億ドル超えのバリュエーションを想定しているとされる。

今年、ヨーロッパで最大の投資を受けたのは、スウェーデンに拠点を置く企業2社だった。Klarnaはクレカのリボ払いをモバイルペイメントに充当した「Buy Now Pay Later」を提供する企業で、欧州で最も価値のある未上場フィンテック企業だが、過去6ヶ月間に16億4,000万ドルの資金を調達し、同社の価値は456億ドルに達した。もうひとつは、リチウムイオン電池メーカーのNorthVoltで、27億5,000万ドルの株式を調達し、117億5,000万ドルの価値があると報じられている。

年金基金や財団・寄付金が自ら投資先企業に直接投資を行うようになった。FactSetによると、2021年上半期、年金基金や財団は、すでに35のベンチャーキャピタルラウンドに参加している(2020年は58)。投資ラウンドの総額は47.6億ドルに上る。これらは、通常はLP(VCへの出資者)として投資を行う企業からの直接投資参加が大幅に増加していることを示している。

2021年第2四半期の世界のベンチャーキャピタル投資額は1,560億ドルで、2020年第2四半期の607億ドルから著しい増加 via CB Insights.

タイガーグローバルの台頭

ユニコーンの増殖を引き起こしたのが、近年ファンドサイズを引き上げている上位のVCである。CB Insightsによると、第2四半期で最も多くの投資件数を叩き出したのはタイガーグローバルだ。タイガーは投資件数を前年同期の8倍の81件に増やした。これはタイガーが「毎営業日1.3件のペース」で新規投資を行っていることを示している。アンドリーセン・ホロウィッツが64件で2番目に活発な投資を行っており、セコイアが62件、アクセルが60件で続いている。これはかつてのベンチャーキャピタルでは考えられなかったことだ。

Factsetの上半期のデータでもタイガーは投資額で首位を射止めている。タイガーは143の投資ラウンドに参加している。この期間のVC投資活動の総額は260億ドルに達している。

近年のVC業界では、上位ファンドの巨大化が進んでいる。直近の四半期において、未上場テック企業投資に最も積極的な5つのVCのうち、アンドリーセンホロウィッツ、セコイア・キャピタル・チャイナ、アクセルの3社は、これまで以上に大規模な投資資金を調達することで賭け金を増額した。このリストには、4年前に1,000億ドルのビジョンファンドでパーティに乱入し、賭け金を一気に引き上げたソフトバンクも含まれている。

タイガーのファンドも大きくなっている。タイガーは、1月に投資家に向けて、13本目のファンドのために37億5,000万ドルを調達するというレターを送ったが、新しいSECファイリングによると、この新しいファンドはその約2倍の金額でクローズしたばかりである。66億5,000万ドルだ。その前のファンドが約37.5億ドルを集めてから約1年しか経過していなかった。衝撃的なファンド組成の速度だが、米国では当たり前になりつつある。

The Economistによると、タイガーはターゲットを見つけると、すぐに飛びつき、長いデューデリジェンスを省いて数日で投資契約を結び、しばしば従来のVCが提示する企業価値をはるかに上回る金額を提示する。ソフトバンクが、創業者が8桁か9桁の小切手を要求したときに10桁の小切手にサインすることがあるように、タイガー・グローバルも、必要のない現金を受け取るように起業家を説得することがある。タイガー・グローバルが最近支援したある創業者は、「すでに投資した後でも、もっとお金を入れていいかどうかを尋ねるメールを次々と送ってくる」と語っている。

タイガーはシリコンバレーが築いた文化を変えている。タイガーは投資可否の決断が非常に早いことで知られ、Zoomでの会合が終わってすぐにオファーを出すこともあると言われている。シリコンバレーの多くのVCが行う慎重な吟味による3年がかりでの投資執行ではなく、ファンドを組成するとすぐにその資金をスタートアップ企業に注ぎ込む。

次に、タイガーは新興企業の評価をよりシステマティックに行おうとしている。タイガーは、時間の無駄だと考えて取締役会への出席を求めないが、企業の業績を判断するための指標が増えてきたおかげで、投資先については十分に把握しているという。

タイガーのインパクトの一つとして、投資家と起業家のパワーバランスの変化が挙げられる。これまでは、投資家が優位に立っていた。新興企業の創業者たちは、お金だけでなく、最高のVCが提供してくれる貴重なアドバイスを求めて、サンドヒル・ロード(シリコンバレーのVCが集積する通り)を巡礼していた。しかし、タイガーや他のプレイヤーとの競争により、カリフォルニアのVCは、金銭面でもその他の面でも、より寛大な条件を提示せざるを得なくなった。

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