Waymo、莫大な投資が実り始めたか

Waymoの長年に渡る自律走行車への投資がロボタクシーと物流を担う自律走行トラックによって実る兆しを見せている。すでに商業化は一部で行われており、今後は規模拡大に注目が集まる。

Waymo、莫大な投資が実り始めたか
吉利とWaymoの自律走行EVのコンセプトカー. Image via Waymo.

要点

Waymoの長年に渡る自律走行車への投資がロボタクシーと物流を担う自律走行トラックによって実る兆しを見せている。すでに商業化は一部で行われており、今後は規模拡大に注目が集まる。


アルファベットの自動運転車会社であるWaymoは、中国の自動車メーカーである吉利汽車と提携して、全電動式の自律走行ロボタクシーを作ると12月下旬に発表した。

この車は、吉利がスウェーデンの自動車メーカーVolvoを所有していることから、スウェーデンで設計され、吉利の全電動5ドア車「Zeekr」をベースにしたものになる。Waymoはこの車に、自律走行に必要なハードウェアとソフトウェアを搭載する。Waymoはブログで、数年後に既存の自動運転ロボタクシーの一部として、この車両を米国に配備する予定だと書いている。

Waymoが公開した完成車のコンセプト画像には、自律走行による配車のために特別に設計された車が写っている。フラットなフロア、低いステップインハイト、乗降しやすいセンターピラーレス構造に加え、スライドドア、リクライニングシート、十分なヘッドルームを備えている。将来のモデルでは、ハンドルやペダルがなく、スクリーンだけの内装になるという。

ただし、これらはあくまでもコンセプトイメージであり、吉利とWaymoが最終的に道路に投入する完成車を必ずしも反映していない可能性がある。注目すべきは、Waymoのコンセプトカーがミニバンに近いデザインであるのに対し、吉利のZeekr 001は、ステーションワゴンとSUVを掛け合わせたようなデザインであることだ。

ドライバーではなく「乗客」のためにデザインされたミニバンのような車のコンセプト。Image via Waymo
ドライバーではなく「乗客」のためにデザインされたミニバンのような車のコンセプト。Image via Waymo
車のインテリアには、ハンドルやペダルはなく、スクリーンだけが設置される。Image via Waymo
車のインテリアには、ハンドルやペダルはなく、スクリーンだけが設置される。Image via Waymo

1つだけ懸念点がある。それは国際情勢だ。自律走行のような先端技術における中国企業との協働には、米国政府が目くじらを立てそうだ。実際、今月初めにタイガーグローバルが出資した中国の人工知能企業SenseTimeに発動された制裁措置のように、米国が中国のテクノロジー企業に制裁を科す可能性は大いにある。

2017年、昨年のようにテクノロジーの所有権をめぐる中米間の緊張が加速するよりもずっと前に、中国の配車企業Didi Globalは、米国の防衛上の懸念から、米国の自律走行車スタートアップAuroraの買収を断念したと米テックメディアThe Informationは2021年4月に報じている。

“最難関”のニューヨークでのロボタクシーに挑戦

これに先立ち11月、 Waymoは2人が乗った手動運転の車を使ってニューヨークのマップ作成を開始した。自律走行車の大半は、LiDAR等のセンサーで得られた情報を予め取得したHDマップのなかにマッピングすることで自律走行を実現している。これは、Waymoはニューヨークでのロボタクシー事業のための最初のフェイズに入ったことを意味している。

Waymoの車両は、主にセントラルパークの南側に位置するマンハッタンを走行し、最終的には市内を通って金融街まで、さらにはリンカーントンネルを通ってニュージャージー州の一部にも乗り入れる予定だ。当初は、高出力のセンサーと演算ユニットを搭載したクライスラー社のミニバン「パシフィカ」を使用し。後には、同社のSUVであるジャガー I-PACEも加わる。

ニューヨークは自律走行車にとって最難関の都市のひとつだ。ニューヨークの道路は、世界で最も危険で、混雑していて、管理が行き届いていない。また、建設作業員、歩行者、自転車、そして2重、3重に駐車している車であふれている。ニューヨークの渋滞はかつてないほど悪化しており、歩行者の死亡率も上昇している。

他の州では自律走行車のテストが盛んに行われているが、ニューヨークではあまり行われていない。その理由のひとつは、安全運転者は常にハンドルから手を離さないことを義務づけたり、テスト会社が負担する州警察の護衛を常時必要としたりするなど、同州の厳格な規則にあると考えられる。

2017年には、GMが支援するCruiseが、マンハッタンの下で自動運転車をテストする計画を発表したが、その理由をほとんど説明せずに、後に計画は頓挫した。ボストンに本拠を置くOptimus Rideは、ブルックリンで自律走行シャトルのテストを行っているが、それは同区の海軍工廠の一部としての私道に限られていた。

また、インテルの一部門であるモービルアイも、最近、市内で車両のテストを始めた。一方、事業者たちは、規制が緩和された場所(アリゾナ州など)や、本社にとって利便性の高い場所(カリフォルニア州など)に集中している。

Waymoは、フェニックスでロボタクシーサービスを展開しており、その中には完全な無人運転の車両も含まれている。また、サンフランシスコでも実験を行っており、先日、カリフォルニア州自動車局から乗客を乗せるための許可を得た。

車両の知覚システムの開発が進む

Waymoは完全な自律走行技術であるWaymo Driverを自動車会社に提供したり、自らロボタクシーや物流業者を運営することで、大量の資金を費やしたプロジェクトを収益化したいと考えている。

Waymo Driverの知覚システムには、完全自律走行専用に開発した高度なカスタムセンサー群と、その情報を理解するための最先端のソフトウェアの2つの部分がある。

優れたセンサーデータがなければ、物体を正しく分類したり、その経路を推定したり、その意図を理解したり、物体の行動を正確に予測したり、適切な運転判断を下すことができない場合がある。機械学習の進歩により、これらの利点は実際にスタック全体に浸透する。簡単に言えば、優れたハードウェアはより良いデータをもたらし、より賢いソフトウェアを可能にする。知覚システムを支えるのは、LiDARセンサー群、カメラ、レーダー画像システムの三種類であり、これらにより様々な路面状況への冗長性が担保されている。

Waymo Driverに関するブログでは、チームはこのように説明している。「Waymo Driverのセンサーは、運転という唯一のタスクのために設計され、最適化されている。例えば、交通量の多い街中でスケート選手が車を追い越すような、あらゆる方向からの予期せぬ行動に対応できるように設計されている」

「Waymoは人工知能(AI)と機械学習(ML)の最先端の研究を活用して、最新世代のソフトウェアスタックを構築した。知覚、行動予測、計画など、Waymoのソフトウェアのすべての主要部分には、2,000万マイル以上の自律走行による比類のない運転経験と、センサーが収集する豊富なデータを活用した高度なMLモデルが使用されている」とチームは記述している。

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