「Wifiを設置すると儲かる」Web3プロジェクトが惨状を呈する

「WiFiを設置し開放するだけで暗号資産が儲かる」とうたう夢のようなWeb3プロジェクトが、その綻びを多方から指摘され、惨状を呈している。

「Wifiを設置すると儲かる」Web3プロジェクトが惨状を呈する
出典:Helium

「WiFiを設置し開放するだけで暗号資産が儲かる」とうたう夢のようなWeb3プロジェクトが、その綻びを多方から指摘され、惨状を呈している。

7月下旬、米テクノロジーメディアMashableは、アンドリーセン・ホロウィッツ(a16z)のようなベンチャーキャピタル(VC)によって親会社が支援されているWeb3プロジェクトHelium(ヘリウム)が、提携していない企業を「提携先」と公表してきたと報じた

Heliumはホームページで、あの電動キックボードのモビリティ企業であるLimeが、同社の製品を利用したメッシュ無線ネットワークを使っていると宣伝してきた。しかしLimeはMashableに対し、2019年以降、同社とは関係を持たず、Heliumの技術で初期テストを行ったことがあるだけだと述べている。

これを受けて、HeliumのウェブサイトにLimeのすぐ隣にロゴが表示されていたSalesforceもすぐさまHeliumとの提携を否定した。

LimeやSalesforceを提携先とするHeliumのウェブサイトのスクリーンショット。出典:Mashable

米国東部時間午後4時35分から午後5時30分の間に、LimeとSalesforceのロゴがHeliumのトップページから削除された。同社はメディアからの質問に対して沈黙を続けているという。

LimeやSalesforceがHeliumのウェブサイトから消えた。出典:Mashable

Limeの顧客とされる地位は些細なものではなく、Heliumのマーケティングの核心部分と思われるものだった。Heliumは「既存のインターネット・サービス・プロバイダーが接続できない、あるいは接続しようとしない場所に独自の接続を提供できる、モノのインターネット(IoT)デバイスの分散型ネットワークである」と自称している(おそらく彼らはWiFiホットスポットの仕組みを知らないのだ)

2月のニューヨークタイムズの記事では、LimeによるHeliumネットワークの利用が、Heliumが「実在の人物や企業によって毎日使われている本物の製品」であることの証拠として引用されている。

Heliumは数百ドルから数千ドルする「Helium ホットスポット」と呼ばれるWi-Fi ホットスポットを家に設置し、ネットワークのユーザーが近くにいてデータが必要なときにそれに接続するというものだ。ホットスポットを経由するデータが多ければ多いほど、HNT(Heliumの暗号通貨)を獲得することができる。

しかし、このクリプトエコノミクス(暗号通貨経済学)はうまくいっていない。The Generalistのレポートによると、先月Heliumのネットワークにアクセスするために使われたデータクレジット(DC)は約6,500ドル分しかなかったという。これは、利益を得ることを期待してネットワークのホットスポットを設置するために人々が機器に費やした数百万ドルとは対照的で、衝撃的に低い数字となっている。

Web3に懐疑的なエンジェル投資家のLiron Shapiraは「平均して、彼らはホットスポットを購入するために400〜800ドルを費やした。彼らは月100ドル、つまりコストを回収して受動的な収入を得るのに十分な金額を期待していた。しかし、その後、彼らの収益はわずか月20ドルにまで落ち込んだ」とツイートしている。

ニューヨークタイムズの記事は、Heliumのソリューションが有用な例として、Limeだけでなく、ネズミや爬虫類の罠の会社であるVictorもHeliumのユーザーとしてリストアップしていた。Heliumが提携発表時にHelium対応のVictor製ねずみ取りが購入できるとアピールしていたサイトでは、もう販売していないようだ。

ネズミ取りとWiFiホットスポットの優雅な合体。「私たちのチームは、効果の高いネズミ駆除装置を作る専門家であり、120年以上にわたってこの仕事に携わってきました。私たちの専門知識とヘリウムのユニークなネットワークを組み合わせる機会を得たことは、新しい観客に革命的なトラップを提供するエキサイティングな機会です」 - アシュリー・ブラウン、Victor商業害虫駆除担当シニアディレクター
ネズミ取りとWiFiホットスポットの優雅な合体。「私たちのチームは、効果の高いネズミ駆除装置を作る専門家であり、120年以上にわたってこの仕事に携わってきました。私たちの専門知識とヘリウムのユニークなネットワークを組み合わせる機会を得たことは、新しい観客に革命的なトラップを提供するエキサイティングな機会です」 - アシュリー・ブラウン、Victor商業害虫駆除担当シニアディレクター

プレスリリースを読んだが、ねずみ取りとWiFiホットスポットの組み合わせによって何が可能になるのかを理解することは難しかった。

Victorの商業害虫駆除担当シニアディレクターであるアシュリー・ブラウンは「私たちのチームは、効果の高いネズミ駆除装置を作る専門家であり、120年以上にわたってこの仕事に携わってきました。私たちの専門知識とHeliumのユニークなネットワークを組み合わせる機会を得たことは、新しい顧客に革命的なトラップを提供するエキサイティングな機会です」 と語っている。

革命的なトラップ…ぜひ見たかったものだ。

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米国のEV革命は失速?[英エコノミスト]

米国のEV革命は失速?[英エコノミスト]

米国人は自動車が大好きだ。バッテリーで走らない限りは。ピュー・リサーチ・センターが7月に発表した世論調査によると、電気自動車(EV)の購入を検討する米国人は5分の2以下だった。充電網が絶えず拡大し、選べるEVの車種がますます増えているにもかかわらず、このシェアは前年をわずかに下回っている。 この言葉は、相対的な無策に裏打ちされている。2023年第3四半期には、バッテリー電気自動車(BEV)は全自動車販売台数の8%を占めていた。今年これまでに米国で販売されたEV(ハイブリッド車を除く)は100万台に満たず、自動車大国でない欧州の半分強である(図表参照)。中国のドライバーはその4倍近くを購入している。

By エコノミスト(英国)
労働者の黄金時代:雇用はどう変化しているか[英エコノミスト]

労働者の黄金時代:雇用はどう変化しているか[英エコノミスト]

2010年代半ばは労働者にとって最悪の時代だったという点では、ほぼ誰もが同意している。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスの人類学者であるデイヴィッド・グレーバーは、「ブルシット・ジョブ(どうでもいい仕事)」という言葉を作り、無目的な仕事が蔓延していると主張した。2007年から2009年にかけての世界金融危機からの回復には時間がかかり、豊かな国々で構成されるOECDクラブでは、労働人口の約7%が完全に仕事を失っていた。賃金の伸びは弱く、所得格差はとどまるところを知らない。 状況はどう変わったか。富裕国の世界では今、労働者は黄金時代を迎えている。社会が高齢化するにつれて、労働はより希少になり、より良い報酬が得られるようになっている。政府は大きな支出を行い、経済を活性化させ、賃上げ要求を後押ししている。一方、人工知能(AI)は労働者、特に熟練度の低い労働者の生産性を向上させており、これも賃金上昇につながる可能性がある。例えば、労働力が不足しているところでは、先端技術の利用は賃金を上昇させる可能性が高い。その結果、労働市場の仕組みが一変する。 その理由を理解するために、暗

By エコノミスト(英国)
中国は地球を救うのか、それとも破壊するのか?[英エコノミスト]

中国は地球を救うのか、それとも破壊するのか?[英エコノミスト]

脳腫瘍で余命いくばくもないトゥー・チャンワンは、最後の言葉を残した。その中国の気象学者は、気候が温暖化していることに気づいていた。1961年、彼は共産党の機関紙『人民日報』で、人類の生命を維持するための条件が変化する可能性があると警告した。 しかし彼は、温暖化は太陽活動のサイクルの一部であり、いつかは逆転するだろうと考えていた。トゥーは、化石燃料の燃焼が大気中に炭素を排出し、気候変動を引き起こしているとは考えなかった。彼の論文の数ページ前の『人民日報』のその号には、ニヤリと笑う炭鉱労働者の写真が掲載されていた。中国は欧米に経済的に追いつくため、工業化を急いでいた。 今日、中国は工業大国であり、世界の製造業の4分の1以上を擁する。しかし、その進歩の代償として排出量が増加している。過去30年間、中国はどの国よりも多くの二酸化炭素を大気中に排出してきた(図表1参照)。調査会社のロディウム・グループによれば、中国は毎年世界の温室効果ガスの4分の1以上を排出している。これは、2位の米国の約2倍である(ただし、一人当たりで見ると米国の方がまだひどい)。

By エコノミスト(英国)