NFTのわかりやすい解説

NFTとは、メディアが固有なものであることを示すブロックチェーンベースの記録だ。NFTには、メディアの歴史や起源に関する信頼性の高い記録が含まれており、プログラマーは様々な目的を伴うコードを添えることができる。

NFTのわかりやすい解説

NFTとは、メディアが固有なものであることを示すブロックチェーンベースの記録だ。メディアは、アート、ビデオ、音楽、GIF、ゲーム、テキスト、ミーム、コードなど、デジタルのあらゆるものが対象となる。NFTには、メディアの歴史や起源に関する信頼性の高い記録が含まれており、プログラマーは様々な目的を伴うコードを添えることができる。

デジタルアーティストたちは、NFTを通じたオーディエンスからの膨大な売り上げを享受するようになっている。しかし、デジタルアートは、NFTの一つの利用法に過ぎない。NFTは、デジタルまたは物理的な領域にあるアイテムの証書のように、あらゆる固有の資産の所有権を表すために使用できる。

NFTがクリエイターの経済性を変えた点として、きめ細かな価格設定を可能にすることが挙げられる。NFTでは、熱狂的なファンに対して、価格の高い特別なアイテムを提供することで、クリエイターは需要曲線のニッチな領域を捉えることができる。

米ベンチャーキャピタルのアンドリーセン・ホロウィッツのクリス・ディクソンは、NFTがクリエイターの経済性を変えるポイントとして、ユーザーをオーナーにすることで、顧客獲得コストをゼロに近づけることを指摘している。「暗号通貨は、マーケティング費用をほとんどかけずに時価総額が100兆ドルを超えるまでに成長した。ビットコインやイーサリアムには、マーケティング予算はおろか、その背後にある組織もありませんが、何千万人もの人々に利用され、所有され、愛されている」。

マーケットプレイス、ソーシャルネットワーク、ショーケース、ゲーム、仮想世界など、NFTを中心としたデジタル体験が構築されれば、その有用性は高まると主張している人達がいる。また、NFTと組み合わせた他の消費者向けの暗号通貨製品が登場する可能性もある。Fortniteのような最新のビデオゲームには、V-Bucksのような流通性のあるゲーム内通貨とNFT/スキンのような仮想商品を組み合わせた高度な経済が生まれるかもしれない。問題はNFTが代替不可能なものではないということで、何らかの別のイノベーションが求められている。NFTが表現していることは面白いが、実現していることは幻滅に値するだろう。

NFTとは何か?

NFTは「non-fungible token」の略だ。Non-fungible(ノンファンジブル)とは、経済用語で、代替不可能なことを指す(実際には代替可能、複製可能だ。マーケティング文句と捉えれば良い)。

Ethereumのユニークな機能であるスマートコントラクトは、ユーザーによるトークンの生成を許容する。2018年1月にWilliam Entriken、Dieter Shirley、Jacob Evans、Nastassia Sachsによって提案されたERC-721(Ethereum Request for Comments 721)は、スマートコントラクト内のトークンのためのAPIを実装するNon-Fungible Token Standard(非ファンジブル・トークン規格)である。

ERC-721標準は、トークンをあるアカウントから別のアカウントに転送したり、アカウントの現在のトークン残高を取得したり、特定のトークンの所有者を取得したり、ネットワーク上で利用可能なトークンの総供給量を取得したりといった機能を提供する。このほかにも、あるアカウントのトークンを第三者のアカウントが移動できることを承認するなどの機能もある。

スマートコントラクトが求められるメソッドやイベントを実装している場合、それは「ERC-721 Non-Fungible Token Contract」と呼ぶことができ、いったんデプロイされると、Ethereum上で作成されたトークンを追跡する責任を負うことになる。

NFTの送付量のトラッカー(2021年3月11日現在)。ファンタジーフットボールゲームのSorareのNFTが1週間で4万回を超える送付を示している。via https://etherscan.io/tokens-nft

これらの過程は、もしかしたらその非代替性を表現しているように見えるがまやかしである。いくらでもハックできる。気をつけたほうがいい。

NFTの歴史

2017年6月、マット・ホールとジョン・ワトキンソンからなる2人組のアメリカのスタジオLarva Labsによって、Etherumのブロックチェーン上の最初のNFTとして、CryptoPunksがリリースされた。

CryptoPunksは、独自に生成された1万個のキャラクターからなる。それぞれがEthereumブロックチェーン上で一人一人によって公式に所有される。当初は、Ethereumのウォレットを持っている人なら誰でも無料で所有することができたが、1万人全員がすぐに所有権を取得された。現在、ユーザーがPunksを所有するためにはマーケットプレイスを介して購入する必要がある。

CryptoPunksのキャラクターたち。すべてNFT化されている。via CryptoPunks.

2017年末、CryptoKittiesという別のプロジェクトがリリースされ話題になった。CryptoKittiesは、Ethereumの基礎となるブロックチェーンネットワーク上で、各CryptoKittyに固有の非ファンジブルトークン(NFT)として動作。各CryptoKittyは、ユーザーが所有するユニークなものであり、ブロックチェーンを通じて検証され、その価値は市場に基づいて評価される。CryptoKittyは複製できず、ゲーム開発者であってもユーザーの許可なく譲渡することはできない。ユーザーは自分のCryptoKittyと対話することができ、売買や繁殖を行うことができる。

CryotoKittiesはあまりの人気のため、Ethereumのネットワークが詰まった。その後、運営会社は1250万ドルを調達した。

via CryptoKitties.

2018年には、NFTの市場と取引所であるRareBitsが600万ドルの投資を調達した。 NFTによって実現されたコレクティブルカードゲームのプラットフォームであるGamedexは、80万ドルのシードラウンドを調達した。ブロックチェーンベースの仮想世界であるDecentralandは、イニシャル・コイン・オファリングで2,600万ドルを調達し、2018年9月時点で2,000万ドルの内部経済を有している。

2018年秋、日本のPreffered Networksのリサーチャーらは、Crypko.aiをリリースした。GAN(敵対的生成ネットワーク)を搭載したCrypkoは、アニメキャラクターの高品質の2Dキャラクターの立ち絵を自動生成し、それが固有のイラストであることを担保する手段としてNFTを使用している。

Dapper Labsは、NBAと提携して、2018年から取り組んでいたNBA TopShotの収集・取引可能なNFTベースのアプリのベータ版を2020年前半に発売した。2020年10月1日、ベータを終了し、すべてのファンに開放したことが発表された。 2021年2月28日の時点で、Dapper Labsはアプリで2億3000万ドル以上の総収益を報告していた。TopShotでは、ユーザーがマルチメディアの「決定的瞬間」を集めることができる。「決定的瞬間」には様々な希少性があり、バスケットボールの歴史にわたる重大な場面を表している、とDapper Labsは説明している。

左)2020年10月11日、NBA Finalのレブロン・ジェームズが決めた決定的なダンクの瞬間、最低入札額6万ドル、右)2020年12月25日、3ポイントシュートの決定的瞬間、最低入札額2万9,000ドル

2021年2月、ミュージシャンのグライムス(イーロン・マスクの妻)がNifty Gatewayでデジタルアートを表現したトークンを約600万ドル分販売した。その後、2月にはミームアニメ「Nyan Cat」を表現したNFTがインターネット上のマーケットプレイスで60万ドル弱で販売された。 その数日後、アメリカのデジタルアーティスト、Beepleの作品「Everydays: The First 5000 Days」が、著名なオークションハウスであるクリスティーズに、作品のNFTとして初めて出品された。

"Everydays: The First 5000 Days" by Beeple.

フルアルバムとしてオークションに出品された最初のNFTは、2021年3月4日に発売されたClarian NorthのWhale Sharkである。2021年3月5日に発売されたKings of Leonのアルバム『When You See Yourself』は、NFTトークンで販売される最初の音楽アルバムとして計画されていた。

参考文献

Image via CryptoKitties.

Special thanks to supporters !

Shogo Otani, 林祐輔, 鈴木卓也, Mayumi Nakamura, Kinoco, Masatoshi Yokota, Yohei Onishi, Tomochika Hara, 秋元 善次, Satoshi Takeda, Ken Manabe, Yasuhiro Hatabe, 4383, lostworld, ogawaa1218, txpyr12, shimon8470, tokyo_h, kkawakami, nakamatchy, wslash, TS, ikebukurou 太郎, bantou, shota0404, Sarah_investing, sokimura.

700円/月の支援

Axionは吉田が2年無給で、1年が高校生アルバイトの賃金で進めている「慈善活動」です。有料購読型アプリへと成長するプランがあります。コーヒー代のご支援をお願いします。個人で投資を検討の方はTwitter(@taxiyoshida)までご連絡ください。

デジタル経済メディアAxionを支援しよう
Axionはテクノロジー×経済の最先端情報を提供する次世代メディアです。経験豊富なプロによる徹底的な調査と分析によって信頼度の高い情報を提供しています。投資家、金融業界人、スタートアップ関係者、テクノロジー企業にお勤めの方、政策立案者が主要読者。運営の持続可能性を担保するため支援を募っています。
Takushi Yoshida is creating writing/journalism | Patreon
Patreon is a membership platform that makes it easy for artists and creators to get paid. Join over 200,000 creators earning salaries from over 6 million monthly patrons.

投げ銭

投げ銭はこちらから。金額を入力してお好きな額をサポートしてください。

Betalen Yoshida Takushi met PayPal.Me
Ga naar paypal.me/axionyoshi en voer het bedrag in. En met PayPal weet je zeker dat het gemakkelijk en veiliger is. Heb je geen PayPal-rekening? Geen probleem.

Read more

OpenAI、法人向け拡大を企図 日本支社開設を発表

OpenAI、法人向け拡大を企図 日本支社開設を発表

OpenAIは東京オフィスで、日本での採用、法人セールス、カスタマーサポートなどを順次開始する予定。日本企業向けに最適化されたGPT-4カスタムモデルの提供を見込む。日本での拠点設立は、政官の積極的な姿勢や法体系が寄与した可能性がある。OpenAIは法人顧客の獲得に注力しており、世界各地で大手企業向けにイベントを開催するなど営業活動を強化。

By 吉田拓史
アドビ、日本語バリアブルフォント「百千鳥」発表  往年のタイポグラフィー技法をデジタルで再現

アドビ、日本語バリアブルフォント「百千鳥」発表 往年のタイポグラフィー技法をデジタルで再現

アドビは4月10日、日本語のバリアブルフォント「百千鳥」を発表した。レトロ調の手書き風フォントで、太さ(ウェイト)の軸に加えて、字幅(ワイズ)の軸を組み込んだ初の日本語バリアブルフォント。近年のレトロブームを汲み、デザイン現場の様々な要望に応えることが期待されている。

By 吉田拓史