自動車産業の未来は広東省にある?
広東省は世界の自動車産業において存在感を増している。元々、供給網の集積地であった同省は、中央・地方政府の支援を受けながら、電気自動車(EV)やインテリジェントコネクティッド車(ICV)、そして自律走行車の不可欠なハブへと変貌している。
広東省は世界の自動車産業において存在感を増している。元々、供給網の集積地であった同省は、中央・地方政府の支援を受けながら、電気自動車(EV)やインテリジェントコネクティッド車(ICV)、そして自律走行車の不可欠なハブへと変貌している。
広東省が自動車産業の世界的に重要なハブへと変貌していく状況を8つのポイントにまとめた。
- BYDの工場拡張。BYDは、EVに対する中国の消費者の関心の高まりを利用しようと、広東省深センの生産拠点の一つを拡張し始めた。経済特区にある工業団地に立地する組立工場の第2期工事は200億元(約4,100億円)かかり、2023年7月の操業開始時には年間売上高1,000億元を目指すという。地元当局の承認は迅速で、自動車メーカーが土地を購入してからわずか数週間で、すでに建設が始まっている。
- ホンダもEV新工場を建設予定。 EV専用となる新工場は、2024年の稼働開始を目指して広東省広州市の広州経済技術開発区内に建設され、敷地面積は40万m2、年間生産能力は12万台を予定とのこと。新工場への投資額は34.9億元の予定。
- EV産業政策の力点。広東省は国家のリーダーがEVへの投資意思を宣言するパフォーマンスの場にも選ばれる。李克強首相は8月17日、広東省深センの比亜迪汽車(BYD)本社を視察した際、電気自動車(EV)の生産と購入を促進するための政策を引き続き採用することを明らかにした、と国営新華社通信が報じた。
- 広東省のEV充電器設置数は全米を凌ぐ。広東省は過去数年間に何十万もの公共充電施設(EVのガソリンスタンドに相当)を建設してきた。中国EV充電インフラ推進連盟によると、9月末現在、広東省には345,126基の公共充電器と19,116基の充電ステーションがあり、中国最大のEV充電ネットワークとなっており、1年前と比べて2倍以上になっている。BloombergNEFのデータによると、これはアメリカ全土の公共充電器の約3倍に相当する。
- 広東省は中国最大の自動車産業の集積地。日本貿易振興機構(ジェトロ)の汪涵芷はそのレポートで、「2021年における同省の自動車生産台数は前年比8.1%増の338万5,000台と、全国の生産台数の12.8%を占め、5年連続で中国第1位。 広東省の自動車生産台数のうち、広州市での生産が87.6%を占め(296万6,400台)、都市別で第1位となった」と書いている。「広州市には、広州汽車集団や広汽ホンダ、広汽トヨタ、東風日産など大手自動車メーカーのほか、新興EVメーカーのBYDや小鵬汽車など計11社の完成車メーカーが生産拠点を有する。また、同市には、これら完成車メーカーに部品を供給する自動車部品メーカーや商社が約1,200社集積している」。
- サプライチェーン集積は途上。愛知県周辺の集積度まではまだ到達していないようだ。汪涵芷は「自動車部品メーカーの生産額は、完成車の生産額に見合う規模には達していない(一部部品は省外からの供給に依存する構造にある)」と書いている。
- V2X(Vehicle to Everything)の制度設計。ICVは、条件付き、高度、完全な自律走行など、自律走行システムによって道路を安全に走行できる車両を指し、レベル3、4、5とも呼ばれる。国営中国日報網が取材した深圳市交通局によると、145kmの道路を自律走行試験用に開放し、93の免許を発行している(うち23は乗客を乗せての無人走行試験用)。
- 自律走行車のテストベッド。中国の改革開放のパイオニアである広東省は、長年、起業家精神と革新的なアイデアを熱心に推進してきた。2019年、省都の広州市は、自律走行の路上テストを許可することで全国に先んじた。現在、同市の自動運転走行距離は255万kmに達している、と北京周報は報じている。自律走行車新興企業のAutoXやPony.aiは広東省に拠点を置いている。