コロナ支援策で増えたゾンビ企業は救うべきか?
2022年10月1日(土)、東京・港区の商業ビルと住宅。週明けの短観景況感と東京都消費者物価指数のデータは、9月の物価上昇の強さと、インフレと世界的な景気後退懸念が企業活動に与える影響を示すことになる。Photographer: Akio Kon/Bloomberg.

コロナ支援策で増えたゾンビ企業は救うべきか?

中小企業のコロナ支援策は、経済的なダメージを緩和することに役立ったかもしれないが、ゾンビ企業の増加という副作用があったようだ。自民党が検討する追加的な支援策はゾンビの延命につながるか?

吉田拓史

中小企業のコロナ支援策は、経済的なダメージを緩和することに役立ったかもしれないが、ゾンビ企業の増加という副作用があったようだ。自民党が検討する追加的な支援策はゾンビの延命につながるか?


自民党の金融調査会長の片山さつき氏はブルームバーグのインタビューで、党は債務不履行の危機にある企業に対する新たな支援案を作成し、月末までにまとめられる政府の経済対策に反映させることを目指しているとのことである。

新たな措置は、2020年3月に開始された、実質無利子・無担保のコロナ関連融資(ゼロゼロ融資)に続くもの。この融資の募集は9月に終了した。党が提案する予定の経済対策の一つが、官民ファンドの「地域経済活性化支援機構(REVIC)」が、経営難に陥っている企業の負債を買い取り、返済の負担を軽減することだ、と片山は語っている。

この追加支援策は、ゾンビ企業のさらなる増加を引き起こすかどうか、議論を呼びそうな政策である。片山氏は、「ゾンビ企業を存続させるような無秩序なことを計画しているわけではないが、地方を維持するためにはこのような取り組みが必要だ」とブルームバーグに対し述べている。

ゼロゼロ融資は、パンデミック期間に日本の多くの企業を支えるために必要だったが、一方で「ゾンビ企業」の増加を招いた、と帝国データバンクは8月に分析内容を発表した。

国際決済銀行(BIS)の定義では、設立から10年以上経過し、3年連続で負債を返済するのに十分な利益を生み出していない企業(インタレスト・カバレッジ・レシオが1未満であることとしても知られている) だ。この基準に基づき、帝国データバンクが算出した2020年度の日本のゾンビ企業率は11.3%、16万5千社である。

帝国データバンク情報統括部長の上西伴浩は、金融危機時の資金繰り対策に加え、実質無利子・無担保のコロナ関連融資(ゼロゼロ融資)がゾンビ企業問題の背景にある、とFACTAに対し語っている。

より詳細なアカデミックな分析は、4月に発表された独立行政法人経済産業研究所(RIETI)のディスカッション・ペーパーでされている。RIETIとIMFの研究者らは東京商工リサーチ(TSR)の2021年までの企業レベルの退出情報と財務情報を用いて、コロナ禍が企業の退出パターンと負債構造に与えた影響を明らかにした。

その結果、この調査は2つの結論を導き出している。

  1. 不健全な企業の退出の減少に伴う自浄作用の低下。
  2. 借入の増加、支払能力に問題のある企業(「ゾンビ企業」)の数が増加、

ペーパーは、コロナショック以降、企業の特性と退出率の相関が崩れ、生産性の低い企業が退出し、生産性の高い企業の参入を可能にするという、いわゆる浄化作用のメカニズムが弱まったことを示唆している、と主張している。

1990年代の日本や、最近では2012年頃から欧州中央銀行が前例のない資金調達緩和策を打ち出し、ユーロ圏で企業のゾンビ化が進行していることが経済調査で報告されている。また、米連邦準備制度理事会(FRB)は金融危機後、景気刺激策として数兆ドルの米国国債を購入し、企業の借入コストを引き下げたと思われる。

米国では、BISの定義に基づけば、米国に拠点を置く企業の約13%がゾンビ企業とみなされる。しかし、ゴールドマン・サックス・リサーチのアナリスト、Michael PuempelとBen Shumwayは、この指標は、ハイグロース企業であるテクノロジー企業に代表される企業の一群を捉えたものである、と書いている。投資家は、これらの企業を、寿命が近いというよりも、まだ潜在能力を発揮していない企業と見ているというのだ。

ゴールドマン・サックス・リサーチは、過去2年間の各期間において、米国株のS&P500インデックスを5%以上アンダーパフォームした企業のみを対象とすることで、この点を考慮した。このフィルターを通すと、いわゆるゾンビの数は米国企業の4%未満に減り、その企業群は約2000億ドルの純負債をぶら下げているという。今世紀に入り前例のない政策にもかかわらず、米国の信用市場がゾンビに「一斉に」資金を提供した形跡はないと、ゴールドマン・サックス・リサーチは述べている。

ゾンビが好ましくない理由

ゾンビ企業の出現が好ましくないとされる理由は、ゾンビ企業の存在が資源配分の非効率性を生むからである。

例えばゾンビ企業研究の先駆けであるとされるRicardo J. Caballeroらの研究によると、同じ業界にゾンビ企業が存在するほど、非ゾンビ企業の設備投資と雇用が縮小し、生産性が低下するという。国際決済銀行(BIS)のRyan BanerjeeとBoris Hofmannの2020年の研究では、ゾンビ企業は「規模が小さく、生産性が低く、レバレッジが高く、物的・無形の資本への投資が少なく、資産、負債、雇用を縮小している」とそのダウンサイドを主張している。しかし、回復したゾンビは、ゾンビになったことのない企業に比べてパフォーマンスが低下し、ゾンビ状態に再発する可能性が高い、とBanerjeeらは書いている。

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参考文献

  1. Ricardo J. Caballero & Takeo Hoshi & Anil K. Kashyap, 2008. "Zombie Lending and Depressed Restructuring in Japan," American Economic Review, American Economic Association, vol. 98(5), pages 1943-77, December.
  2. Banerjee, Ryan and Hofmann, Boris, Corporate zombies: anatomy and life cycle (September 2, 2020). Available at SSRN: https://ssrn.com/abstract=4051592 or http://dx.doi.org/10.2139/ssrn.4051592