中国は5nmの半導体を作れる、とTSMC元幹部は言う

半導体業界の有名研究者は、中国の中芯国際集成電路製造(SMIC) が5ナノメートル(nm)の半導体を製造する能力があると推定した。米国の禁輸は中国に独自進化の機会を与えているのだろうか。

中国は5nmの半導体を作れる、とTSMC元幹部は言う
2023年9月19日火曜日、カナダ・オンタリオ州オタワで撮影された、SMICによって中国で製造されたKirin 9000sチップを含むスマートフォンMate X5の分解部品。写真家 James Park/Bloomberg

半導体業界の有名研究者は、中国の中芯国際集成電路製造(SMIC) が5ナノメートル(nm)の半導体を製造する能力があると推定した。米国の禁輸は中国に独自進化の機会を与えているのだろうか。


TSMC研究部門の元幹部バーン・J・リン(林本堅)は、既存の深紫外線(DUV)露光装置で5ナノメートル(nm)チップを製造するのは非常に高価になるが可能だ、と述べた。林はこのプロセスに使われるDUV露光装置の一種を最初に提案した半導体専門家である。

台湾エレクトロニクス誌DigiTimesの報告によると、SMICの現在のDUV技術では、5nmのSoC(システム・オン・チップ)を大量生産するためには、通常の4倍のパターニング(チップの微細加工プロセス)が必要になると指摘されている。

もう1つの課題は、DUV装置を使用する場合、複数回の露光時に精密な調整が必要となり、時間がかかる可能性があることである。林は、DUV装置の一つである、ArF液浸露光装置(ArFi)では6倍パターンが可能であると述べているが、やはり問題は、上記の関連する欠点に起因する。これは、通極端紫外線 (EUV)露光装置が使用される5nmプロセスに対してDUVで対応することの技術的な難易度とコストを示唆している。

ファーウェイのフラッグシップスマホ「P70」は2024年に向けて開発中とされ、5nmのチップが搭載されるかは、米国の禁輸措置に対する中国の耐性をはかる試金石となっている。

10月のブルームバーグのDebby Wuによるインタビューでも、林は、SMICとファーウェイは米国の規制にもかかわらずチップ技術を進歩させている、と警鐘を鳴らしていた。

5nmのマイルストーン達成を目指すだけでなく、中国はより強力な半導体を作るために新しい材料や先進的なチップパッケージングを試す可能性が高い、と林は述べた。林によると、ASMLの遠紫外線(DUV)露光システム「TWINSCAN NXT:2000i」は、オランダ政府によって中国への輸出が制限されているが、7nmおよび5bnプロセスのチップを製造できる。5nmクラスのプロセスでは限界があるが、SMICは特殊な技術を使って必要な解像度を達成し、ファーウェイにとって十分な歩留まりを実現している。

TechInsights Finds SMIC 7nm (N+2) in Huawei Mate 60 Pro | TechInsights
TechInsights, the semiconductor industry’s leading information platform, conducted an analysis of the Huawei Mate 60 Pro smartphone and uncovered groundbreaking evidence of SMIC’s 7nm (N+2) technology, marking a significant milestone in China’s domestic design and manufacturing capabilities.

林は、中国の半導体の進歩を妨げようとする米国の努力は無駄であると指摘し、米国はチップ設計のリーダーシップを維持することに集中するよう提唱している。また、TSMCが特定の中国企業と取引できなくなったことで、SMICが成長し技術力を高める機会が生まれたとして、米国の制裁がSMICに不注意にも利益をもたらしたと指摘した。このような指摘は半導体業界全般から聞かれた。

ファーウェイの最新チップの衝撃:禁輸が中国の独自技術成長促す
欧米日の禁輸措置のなか、ファーウェイの最新スマートフォンと半導体が重要な技術ベンチマークを実現したことが確定的だ。輸出規制は裏目に出て、自主開発を促し、中国の半導体技術の「独立」を加速させたのかもしれない。

林は、SMICの先端チップ製造が依拠する技術である液浸露光装置を最初に提案した人物として、台湾では「液浸露光の父」と呼ばれ、業界で高く評価されている。かつてTSMCの研究開発担当副総経理(副部門長の意)を務め、同社の「研究開発六騎士」の1人だった。

米国の禁輸措置にもかかわらず、中国の半導体製造能力は急激に改善している。今年9月、米半導体分析企業TechInsightは、ファーウェイがSMICの7nmプロセスによって、初の中国製5Gスマートフォン向けシステム・オン・チップ(SoC)を開発したと分析し、世界中に衝撃が走った。

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新たなスエズ危機に直面する米海軍[英エコノミスト]

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世界が繁栄するためには、船が港に到着しなければならない。マラッカ海峡やパナマ運河のような狭い航路を通過するとき、船舶は最も脆弱になる。そのため、スエズ運河への唯一の南側航路である紅海で最近急増している船舶への攻撃は、世界貿易にとって重大な脅威となっている。イランに支援されたイエメンの過激派フーシ派は、表向きはパレスチナ人を支援するために、35カ国以上につながる船舶に向けて100機以上の無人機やミサイルを発射した。彼らのキャンペーンは、黒海から南シナ海まですでに危険にさらされている航行の自由の原則に対する冒涜である。アメリカとその同盟国は、中東での紛争をエスカレートさせることなく、この問題にしっかりと対処しなければならない。 世界のコンテナ輸送量の20%、海上貿易の10%、海上ガスと石油の8~10%が紅海とスエズルートを通過している。数週間の騒乱の後、世界の5大コンテナ船会社のうち4社が紅海とスエズ航路の航海を停止し、BPは石油の出荷を一時停止した。十分な供給があるため、エネルギー価格への影響は軽微である。しかし、コンテナ会社の株価は、投資家が輸送能力の縮小を予想している

By エコノミスト(英国)
新型ジェットエンジンが超音速飛行を復活させる可能性[英エコノミスト]

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1960年代以来、世界中のエンジニアが回転デトネーションエンジン(RDE)と呼ばれる新しいタイプのジェット機を研究してきたが、実験段階を超えることはなかった。世界最大のジェットエンジン製造会社のひとつであるジー・エアロスペースは最近、実用版を開発中であると発表した。今年初め、米国の国防高等研究計画局は、同じく大手航空宇宙グループであるRTX傘下のレイセオンに対し、ガンビットと呼ばれるRDEを開発するために2900万ドルの契約を結んだ。 両エンジンはミサイルの推進に使用され、ロケットや既存のジェットエンジンなど、現在の推進システムの航続距離や速度の限界を克服する。しかし、もし両社が実用化に成功すれば、超音速飛行を復活させる可能性も含め、RDEは航空分野でより幅広い役割を果たすことになるかもしれない。 中央フロリダ大学の先端航空宇宙エンジンの専門家であるカリーム・アーメッドは、RDEとは「火を制御された爆発に置き換える」ものだと説明する。専門用語で言えば、ジェットエンジンは酸素と燃料の燃焼に依存しており、これは科学者が消炎と呼ぶ亜音速の反応だからだ。それに比べてデトネーシ

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ビッグテックと地政学がインターネットを作り変える[英エコノミスト]

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By エコノミスト(英国)