中国は5nmの半導体を作れる、とTSMC元幹部は言う
半導体業界の有名研究者は、中国の中芯国際集成電路製造(SMIC) が5ナノメートル(nm)の半導体を製造する能力があると推定した。米国の禁輸は中国に独自進化の機会を与えているのだろうか。
半導体業界の有名研究者は、中国の中芯国際集成電路製造(SMIC) が5ナノメートル(nm)の半導体を製造する能力があると推定した。米国の禁輸は中国に独自進化の機会を与えているのだろうか。
TSMC研究部門の元幹部バーン・J・リン(林本堅)は、既存の深紫外線(DUV)露光装置で5ナノメートル(nm)チップを製造するのは非常に高価になるが可能だ、と述べた。林はこのプロセスに使われるDUV露光装置の一種を最初に提案した半導体専門家である。
台湾エレクトロニクス誌DigiTimesの報告によると、SMICの現在のDUV技術では、5nmのSoC(システム・オン・チップ)を大量生産するためには、通常の4倍のパターニング(チップの微細加工プロセス)が必要になると指摘されている。
もう1つの課題は、DUV装置を使用する場合、複数回の露光時に精密な調整が必要となり、時間がかかる可能性があることである。林は、DUV装置の一つである、ArF液浸露光装置(ArFi)では6倍パターンが可能であると述べているが、やはり問題は、上記の関連する欠点に起因する。これは、通極端紫外線 (EUV)露光装置が使用される5nmプロセスに対してDUVで対応することの技術的な難易度とコストを示唆している。
ファーウェイのフラッグシップスマホ「P70」は2024年に向けて開発中とされ、5nmのチップが搭載されるかは、米国の禁輸措置に対する中国の耐性をはかる試金石となっている。
10月のブルームバーグのDebby Wuによるインタビューでも、林は、SMICとファーウェイは米国の規制にもかかわらずチップ技術を進歩させている、と警鐘を鳴らしていた。
5nmのマイルストーン達成を目指すだけでなく、中国はより強力な半導体を作るために新しい材料や先進的なチップパッケージングを試す可能性が高い、と林は述べた。林によると、ASMLの遠紫外線(DUV)露光システム「TWINSCAN NXT:2000i」は、オランダ政府によって中国への輸出が制限されているが、7nmおよび5bnプロセスのチップを製造できる。5nmクラスのプロセスでは限界があるが、SMICは特殊な技術を使って必要な解像度を達成し、ファーウェイにとって十分な歩留まりを実現している。
林は、中国の半導体の進歩を妨げようとする米国の努力は無駄であると指摘し、米国はチップ設計のリーダーシップを維持することに集中するよう提唱している。また、TSMCが特定の中国企業と取引できなくなったことで、SMICが成長し技術力を高める機会が生まれたとして、米国の制裁がSMICに不注意にも利益をもたらしたと指摘した。このような指摘は半導体業界全般から聞かれた。
林は、SMICの先端チップ製造が依拠する技術である液浸露光装置を最初に提案した人物として、台湾では「液浸露光の父」と呼ばれ、業界で高く評価されている。かつてTSMCの研究開発担当副総経理(副部門長の意)を務め、同社の「研究開発六騎士」の1人だった。
米国の禁輸措置にもかかわらず、中国の半導体製造能力は急激に改善している。今年9月、米半導体分析企業TechInsightは、ファーウェイがSMICの7nmプロセスによって、初の中国製5Gスマートフォン向けシステム・オン・チップ(SoC)を開発したと分析し、世界中に衝撃が走った。