ベゾス, マスク, エリソン, ティール…政治権力化する米テック富豪
ジェフ・ベゾス、イーロン・マスク、ラリー・エリソン、ピーター・ティールのような米テクノロジー企業の創業者で大富豪となった人物が「スルタン(君主)化」し、政治的影響力を発揮しようとする場面が目立つようになり、波紋を広げている。
ジェフ・ベゾス、イーロン・マスク、ラリー・エリソン、ピーター・ティールのような米テクノロジー企業の創業者で大富豪となった人物が「スルタン(君主)化」し、政治的影響力を発揮しようとする場面が目立つようになり、波紋を広げている。
世界的な富豪の一人で、ソフトウェア会社オラクルの共同創業者であるラリー・エリソンが、2020年11月、トランプ前大統領の敗戦に異議を唱える計画を策定するための通話に参加していたことが明らかになった。エリソンはイーロン・マスクが試みたツイッター買収の最大の支援者でもある。
この事実はワシントンポストが法廷文書と参加者の証言を取材した結果、判明した。同紙によると、2020年11月14日の通話には、リンゼイ・O・グラハム上院議員(サウスカロライナ州選出)、バラク・オバマ大統領が正当なアメリカ市民ではないという陰謀論でよく知られるフォックス・ニュースの元司会者やトランプ前大統領の弁護士、そしてトランプを追い落とすための占拠不正が行われたという主張を唱えたテキサス州の非営利団体トゥルー・ザ・ボートの弁護士らが参加した。最終的にトランプ氏は激戦州で計62の訴訟を提起し「選挙を盗まれた」キャンペーンを敷くことになった。
エリソンは、Bloomberg Billionaires Indexによると、世界で11番目に裕福な人物で、純資産は約850億ドル。トランプ政権時代には、2020年にカリフォルニア州コーチェラバレーの自身の不動産で大統領を招いて資金集めを行い、共和党の候補者や委員会に数百万ドルを寄付するなど、トランプ政権のパワーブローカーとして大きな存在となった。
エリソンはトランプ大統領の「返礼」の受益者の側面があった。2020年秋には、実現しなかった中国企業バイトダンスとの取引候補の中で、TikTokの優先的な米国での買い手となり、トランプから「素晴らしい企業」との賞賛を受けた。
エリソンはCOVID-19の治療で実績のない抗マラリア薬に関連する試験データについて、トランプ前大統領と緊密に協力して情報収集に努め、最近では、2024年の大統領選でトランプの伴走者になることに関心を示しているティム・スコット上院議員(共和党)を支援する特別政治活動委員会(スーパーPAC)に1,500万ドルの寄付を行っている。
証券取引委員会(SEC)に提出された書類によると、エリソンは今月、マスクの440億ドルのTwitter買収を支援するために10億ドルを拠出することを約束した。この買収は、マスクとその関係者がコンテンツ規制を緩和し、前大統領をツイッターに復帰させる可能性があると発言したことから、トランプ支持者からは喝采を浴びている。マスクは最近のツイートで「共和党に投票する」との意思を明らかにしている。
法人税増税案でバイデンに「荒らし」を仕掛けるベゾス
これに先立って、アマゾン創業者のジェフ・ベゾスはTwitterでバイデン大統領に対して荒らしを行った。バイデンがインフレ率の低下と企業が「公正な分け前」を支払うことを結びつけた後、ベゾスは「新しく作られた誤情報委員会はこのツイートを見直すべきで、あるいは代わりに“前提から導かれない推論をしない委員会”を新しく作る必要があるかもしれない」と口走った。彼は、インフレ率の低下と法人税の上昇を混同することは、”誤った方向づけ "に相当すると述べた。
アマゾンは2021年に約360億ドルの税引き前利益を計上したが、連邦税の支払いは約20億ドルにとどまったと発表した。これは6%の税率であり、企業や労働者が支払わなければならない税率の3分の1以下である。バイデン氏は昨年、税率を引き上げ、税の抜け穴をなくす計画を発表した際、アマゾンを取り上げ、「彼らを罰したくはないが、それは間違っている」と述べた。
Twitter買収と共和党支持を表明したマスク
マスクは先週、バイデン政権と民主党をツイッターで非難し、世界一の富豪が共和党に投票するという誓いを再度固めたとツイートした。「過去には民主党に投票した。彼らは(ほとんど)親切な政党だったからだ。しかし、彼らは分裂と憎しみの党になったので、もう彼らを支持することはできず、共和党に投票するつもりだ」
彼が明確に支持政党を明示したことは、マスクが現在行っているTwitter買収の行く末に暗雲を漂わせている。SNSという政治に対して影響力の高く、誤情報の伝播という深刻な問題に直面している情報インフラを扱うことになる人物が、一方の政治勢力に便宜を図った場合、その影響は貼りしれないからだ。
共和党支持ツイートの数時間後、ビジネスインサイダーは、スペースXのロンドン行きの便で、マスクがプライベートジェットの客室乗務員に全身マッサージを求め、性器を露出したという疑惑の詳細を伝える報道を掲載した。報告書によると、彼は性的な要求に応じると、彼女に馬を買うと申し出たという。マスクは女性の主張を否定した。ビジネスインサイダーは、女性がスペースXの人事部に出した苦情を補強するために提出された、彼女の友人からの申告書に詳細が記されていると報じた。
マスクもスペースXも、女性が彼の疑惑の行為について訴えた後、沈黙と引き換えに25万ドルの退職金を支払ったというビジネスインサイダーの報道を否定していない。
極右を支援するピーター・ティール
シリコンバレーの起業家で最も政治活動に熱心なのは、ピーター・ティールだろう。彼は今年に入りトランプ前大統領の派閥を支援するため、Facebookの取締役会を辞めた。ティールは、ザッカーバーグとドナルド・トランプ大統領(当時)との間を取り持った。ティールは2016年の共和党全国大会で演説し、大統領移行チームのメンバーを務めている。私的にはソーシャルネットワークに批判的な立場をとり、ザッカーバーグを非難するキャンペーンの重要な一角を占めている。
エリソン同様、数少ないシリコンバレーのトランプの友人として、ティールはその恩恵に預かったことがある。ティールの経営するパランティアはトランプ政権との蜜月によって、規模が3桁ほど違うGAFAMたちと同じ大統領との会談のテーブルにつくことが許可されたことがある。パランティアはシステムインテグレーターで、顧客の大半は政府機関だが、トランプ政権の間は競合他社を差し置いて受注が相次いだ。
最近、ESG投資に関する議論が盛んになっているが、ティールはリバタリアニズムの立場から独自の切り口を示している。彼が共同設立した投資会社ストライブの共同創業者は、ブラックロックのようなESG投資推進派を念頭に米国企業や米国人一般に特定の政治的スタンスを事実上強要する「カルテル」が存在すると結論づけている。