岸田政権のスタートアップ投資「5年で10倍」目標は小さすぎる
岸田政権はスタートアップ投資を「5年で10倍」に増やす目標を立てているが、10倍に増やしても2021年のインドの投資額に及ばない。目標はもっと高く設定されなければならないはずだ。
岸田政権はスタートアップ投資を「5年で10倍」に増やす目標を立てているが、10倍に増やしても2021年のインドの投資額に及ばない。目標はもっと高く設定されなければならないはずだ。
政府は1日「スタートアップ担当大臣」を新設することを正式に決定した。岸田政権はスタートアップ企業への投資額を5年で10倍に増やす計画を打ち出しているという。
「5年で10倍」というと野心的な目標に聞こえるが、そうでもない。日本は世界の潮流に乗り遅れたスタートアップ後進国だからだ。
2021年、世界は未曾有のベンチャー投資ブームを経験した。CB Insightsによると、全世界のベンチャー投資額は過去最高の6210億ドルに上り、米国で3,110億ドル、欧州932億ドル、中国901億ドルとなっている。
昨年は新興国・地域に大きな萌芽があった年でもある。日本経済新聞が7万社以上のベンチャー企業の資金調達データを持つオランダの調査会社、ディールルームからデータの提供を受けて行った分析を基にすると、インドは477億ドルに到達している。東南アジアは257億ドル(DealStreetAsia調べ)、南米は148億ドル(PitchBook調べ)である。
では、2021年の日本の実績はどの程度なのか? 前述の日本経済新聞の分析を基にすると、日本は35億ドルとのことだ。「日本は11位の35億ドルで全体に占める割合は0.57%だった。日本より上位の国にはほかに英独仏、スウェーデンなどの欧州各国やイスラエルが含まれる」と日経は書いている。
この数字は納得行くものだ。2021年の国内でのベンチャーキャピタル(VC)・コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)の投資額は2,277億円(一般財団法人ベンチャーエンタープライズセンター)。これに補足されていない、事業会社、個人投資家、海外投資家等の取引を加え、さらに隣の活況を呈したプライベート・エクイティ市場のグロースエクイティ案件のほんの一部を加えると、35億ドル程度になるのではないだろうか。
上述の日経が引用したディールルームのデータでは、為替レートは現在の円安を織り込んでいないとは思われるため、1ドル=110円と想定すると、やはり適切なレンジのように推察される。
さて、35億ドルを10倍にすると、350億ドルとなるが、これはインドの今年の実績に劣るわけだ。東南アジアも今後伸び続け、5年後には350億ドル以上のレンジにいるのではないだろうか。
「5年で10倍」ではインドや東南アジアよりも小さいということになる。誰もが忘れつつあるが、日本は世界で3番めの経済規模を誇っている。対GDP比という観点では、「5年で10倍」は少なすぎるように見受けられる。
参考文献
- CB Insights, State of Venture 2021.
- Bain & Company, India Venture Capital Report 2021.
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