リビアンはテスラ一強を崩すか

リビアンは、商用バン、ピックアップトラックとテスラが力強くないEVカテゴリで力をつけている。製品の評判はよく、一台あたりの損失は急速に縮小しており、黒字化と量産化が次に超えるべきハードルだ。

リビアンはテスラ一強を崩すか
リビアンの電気ピックアップトラック「R1T」。出典:リビアン

リビアンは、商用バン、ピックアップトラックとテスラが力強くないEVカテゴリで力をつけている。製品の評判はよく、一台あたりの損失は急速に縮小しており、黒字化と量産化が次に超えるべきハードルだ。


電気自動車(EV)メーカーのリビアン・オートモーティブは10月3日、電気ピックアップトラック「R1T」と電気SUV「R1S」の旺盛な需要に対応した増産を示し、市場予測を上回る第3四半期の納車台数を報告した。同社は、2023年に52,000台の生産を目指しているが、これはサプライチェーンの問題が緩和されたため、もともとの50,000台から増加した。

Rivian Releases Q3 Production Figures and Sets Date for Third Quarter - Newsroom - Rivian
Rivian Releases Q3 Production Figures and Sets Date for Third Quarter 2023 Results

報告によると、リビアンの第3四半期の納車台数は15,564台で、第2四半期の合計12,640台から24%改善した。生産台数ベースでは、第2四半期の13,992台から17%増の16,304台に増えた。イリノイ州ノーマルの工場(元々三菱自動車の工場だった)をより有効に活用することで、リビアンは来年末までに生産した各車両で利益を上げることができる、と同社は見通しを示した。

余談を許さない財務

黒字化への道のりはまだタフである。8月に公表された株主への書簡で、リビアンは2023年第2四半期に販売した車両1台につき32,595ドルの損失を出していることを明らかにした。これは米国では、ホンダのシビック1台をゆうゆうと買える金額である。

ただし、損失幅は四半期ごとに着実に改善している。株主書簡を参照すると、リビアンは、第1四半期は67,329ドル、その前の四半期は124,162ドルの損失を出していた。リビアンが生産台数を増やし続け、新モデルを投入する可能性がある限り、トンネルを出る可能性がある。

米メディアWSJが引用したウェルズ・ファーゴのアナリスト、コリン・ランガンの試算によると、リビアンは部品代として一般的な相場より1台あたり25,000ドル多く支払っている。リビアンは、R1Tが同クラスの他の車種よりも衝突テストで優れた性能を発揮するようにしたかった。しかし、それはコストと重量を増加させる金属部品の追加を意味した。WSJはまた、リビアンのシャーシは「組み立てが複雑」であり、シャーシのいくつかの部分はロボットと手作業で2度溶接する必要がある、という現役社員と元社員の証言も引用している。

さらに、生産規模を拡大すると1台あたりのコストは下がる傾向にあるが、リビアンはまだそのレベルに達していない。2023年第2四半期、リビアンは合計13,992台生産した。リビアンは第3四半期に16,034台を生産したと発表した。予想を上回る第3四半期の数字は、2023年の総生産台数を52,000台から60,000台に押し上げた。確かに改善されたとはいえ、リビアンが目指すべきところに比べればまだほんのわずかだ。これに対し、フォードは2022年に米国だけで180万台を組み立てている。リビアンが追いつくにはまだまだ時間がかかるということだ。

この2年間で、リビアンは180億ドルの現金の半分を使い果たした。生産台数は増加し、赤字幅は縮小したものの、リビアンはいまだに赤字を出している。狭い利幅と厳しい競争で知られる自動車業界で、リビアンは部品代が高すぎ、生産台数が少なすぎてコストをカバーできないのだ。

リビアンの生産台数が増えるにつれて赤字幅は縮小しているが、6月末時点のキャッシュバーン(資金燃焼)は四半期で10億ドルを超えている。

WSJによると、ウェルズ・ファーゴのランガンは、リビアンが目標を達成するためには、コスト削減と値上げの両方が必要だが、現在の環境では難しいだろうと言う。ランガンは、リビアンがこの目標を達成するためには、1台あたり平均96,000ドルの価格でモデルを販売し、工場をフル稼働させなければならないと推測している。

5日には、リビアンは15億ドルの転換社債を発行する計画を発表し、株価はその日23%急落した(*1)。この取引によって、リビアンの現金、現金同等物、短期投資の合計は、第2四半期の102億ドルから減少し、四半期末時点で91億ドルになったと推定される、とブルームバーグのDana Hullは報じた

完成車は高評判

希望があるのは、リビアン車の評判がいいことだ。米メディアThe VergeのNilay Patelは、リビアンは自動車業界への新規参入者であるにもかかわらず、テスラのようにハードウェアとソフトウェアの両方を見事に制御している、と評した。彼は、SUVのR1Sは、ゼロから作り上げたハードウェアとソフトウェア・アーキテクチャを含む多くの特徴を共有しており、この垂直統合により、迅速な無線アップデートが可能になる。R1Sは、835馬力のクアッドモーター・ドライブトレインを備え、高速道路でもオフロードでも非常に優れたパフォーマンスを発揮するという。

業界初のバッテリー駆動ピックアップトラックR1Tは、購入者や自動車評論家はそのモデルの機能とオンロード、オフロードでの性能を称賛している。米自動車メディアMotor TrendはR1Tを「これまで乗ったピックアップトラックの中で最も注目に値する」と評した。「私たちはR1Tでトランズ・アメリカ・トレイル(編注:米国を横断路、主にオフロード)を横断し、5,000マイルを超える壮大な旅をした。同時に、スポーツカーのように素早く走ることもできる」。ライバルのテスラのサイバートラックは発表から投入までに長い時間がかかっており、先行きに不透明感がある。

 アマゾンの支援

同時にアマゾンの支援も大きい。リビアンのR1TとR1Sのほか、EV商用バンを製造している。前述のWSJの報道で引用されたMotor Intelligenceのデータによると、リビアンのトラックとSUVは多くの部品を共有しており、8月の売上の83%を占めている。

商用バンは、これまでに1億5,000万個以上の荷物を配達し、そのうちの5,000台以上がアマゾン向けに製造されている、と明らかにされた。これらのバンはアメリカの800以上の地域と都市で運用されている。

一部はすでにドイツの都市でも使用されている。アマゾンは7月、ヨーロッパで初めてリビアンの商用バンを導入し、ミュンヘン、ベルリン、デュッセルドルフといったドイツの主要都市に300台以上のバンを配備したと明らかにした。

アマゾンは2030年までにこのバンを10万台稼働させることを目指している。

米EV新興企業リビアンの量産体制が軌道に乗り始めた[ブルームバーグ]
EV新興企業のリビアン・オートモーティブは、過去最大級の新規株式公開を果たした当時投資家がEVメーカーに見いだした可能性を、いまようやく実現し始めている。

脚注

*1:水曜日に提出された有価証券報告書によると、カリフォルニア州アーバインに本社を置く同社は、2030年を期限とするグリーン転換社債を適格機関投資家向けに私募する予定。購入者にはさらに2億2500万ドルを購入するオプションが付与される。

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