LINEがヤフーの軍門に降る理由

赤字続きのLINEは、ヤフーにしがみつくしかなかった。巨大な利用者数を儲けに繋げられるかは経営統合の当初から問われているが、両社はまだ答えを出していない。新興勢力の台頭とAIトレンドのうねりの中で「老舗連合」に残された時間は多くない。

LINEがヤフーの軍門に降る理由
ZホールディングスのCoCEOの川邊健太郎。ブルームバーグ。

赤字続きのLINEは、ヤフーにしがみつくしかなかった。巨大な利用者数を儲けに繋げられるかは経営統合の当初から問われているが、両社はまだ答えを出していない。新興勢力の台頭とAIトレンドのうねりの中で「老舗連合」に残された時間は多くない。


Zホールディングス(以下、Z)は、先月初旬に開催された取締役会において、同社と、同社の完全子会社であるLINEおよびヤフーを中心とする合併方針を決議したことを発表した。3社を中心に、2023年度中をめどに合併が実施されるという。

2020年の経営統合では、持株会社のZの持ち分をソフトバンクとLINEの親会社だった韓国ネイバーで50%ずつ持つ形式をとった。ネイバーとヤフーのどちらかが望めば、統合を解消できる「出口」があったと推察される。しかし、今回の統合で、この3つのエンティティは一つになる。不可逆の合併と考えていいだろう。

LINEの事業規模はヤフーよりも小さく、赤字だったことを勘案すると、ネイバーは合併後のエンティティの何割を持つか、は注視に値するだろう。

現金を燃焼し続けていたLINEは、ヤフーのキャッシュフローに依存する以外の選択肢がなかったと考えられる。LINEは2016年の日米同時上場で調達した現金を燃やし続け、統合直前まで赤字が続いていた。統合後はヤフーとLINEを完全に別にした収支は開示されていないものの、LINEに決定的なキャッシュカウが生まれていないところを見ると、「ヤフーがLINEを養う構造」に変化はなかったようだ。

優越的立場にあったヤフーは、統合を実現するために一回り小さいLINEにZの持ち分の半分を譲ったが、統合後、LINEの脆弱性を扱うことにした。LINEによるユーザー・データの韓国への転送問題である。

LINEには疑いなく非があった。日本のユーザーのトーク機能の画像・動画のほか、「LINEドクター」では、健康保険証、領収書、明細書、医師の本人確認書類、医師免許証などの情報も韓国で保管・管理していたという。

一連のスキャンダルで優位に立ったように見えるヤフーだが、彼らがLINEを余裕で養えるほど裕福かというと、そうでもなさそうだ。Zの22年10月-12月期のNet Debt-to-EBITDA Ratioは2.48で、危険水域とされる3〜4のレンジに近づいている。

また、連結子会社化したPayPayのバリュエーションも疑問を呼ぶ。35%保有するPayPayの企業価値は、1兆円弱とされている(3,500億円程度の資産がZのバランスシートに載っていることになる)が、フィデリティは遥かに規模が大きいAlipay運営のアントグループを700億ドルと値付けている。PayPayの技術供与元で、やはり規模が断然大きいインドのPaytmの時価総額は、6,400億円ほどだ(しかも、アントとソフトバンクグループはPaytm株を売り、完全撤退しようとしている)。

経営統合のシナジーは、いまだ明確ではない。両者は統合の際に「スーパーアプリ」を作ることを宣言したが、AppleやGoogleのアプリストアの規約の壁に阻まれたと推察される。現状、ルールが緩い中国かインド、その他の新興国でないと、効果的なスーパーアプリは作れない。

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両社は「合理化」の必要があり、それは合併前から進められている。直近の決算説明会では、ZのCoCEOの川邊健太郎は2022年中に集約や廃止、売却が発表されたサービスに加え、現在10程度のサービスが整理または縮小されることを示唆した。

それでも、ヤフーとLINEは日本の上位を形成するサービスである。調査会社ニールセンのデータによると、日本における「トータルデジタルリーチ」はヤフーが首位、LINEが3位を占める。「35歳以上の中・高齢層が増加していることで利用者数が拡大した」ようだ。日本のような少子高齢化社会では依然としてユーザー数を維持できるだろう。

しかし、巨大なユーザー数をビジネスに繋げられるかは経営統合の当初から問われ続けていたが、Zはまだ答えを出していない。TikTokのような新興勢の台頭やAIへの急速なシフトの中で、ライブドアとヤフーによる「老舗サービスの百貨店」に残された時間はそこまで多くなさそうだ。

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新たなスエズ危機に直面する米海軍[英エコノミスト]

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新型ジェットエンジンが超音速飛行を復活させる可能性[英エコノミスト]

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