生成AIが経営コンサルを淘汰する?
キャリア形成の花形となった経営コンサル。しかし、その仕事は生成AIという脅威にさらされている。時代の波の中で淘汰されるのか、それとも新たな進化の始まりか。
キャリア形成の花形となった経営コンサル。しかし、ホワイトカラーを代表するその仕事は生成AIという脅威にさらされている。時代の波の中で淘汰されるのか、それとも新たな進化の始まりか。
マッキンゼー・グローバル・インスティテュートのパートナーであるMichael Chuiらは、昨年12月に公表された論考で、「生成AIは、顧客サービスのような相互作用に対する技術的介入が最も不十分だった領域を変えることになる」とし、これらがビジネス・プロセスを変化させる可能性を主張した。
この論考で無視されていた側面がある。それは生成AIは経営コンサルの仕事自体を変える、あるいは置き換える可能性を秘めていたことだ。この潜在性は、生成AIの性能が加速度的に進歩していくことが社会に認められることで、より鮮明なものへと変化した。
ゴールドマン・サックスは、3月、AIが3億人のフルタイムの仕事を置き換える可能性があるという報告書を発表した。昨年、PwCが行った年次グローバルワークフォース調査では、回答者のほぼ3分の1が、3年後に自分の役割がテクノロジーに取って代わられる見通しを心配していると回答している。
日本でも、日本株式会社の衰退や官公庁の仕事のハードさが知れ渡るにつれ、大量採用にかじを切った経営コンサルは、学歴エリートのキャリア形成における重要な目的地となっている。この新たなフロンティアは、AIに脅かされているかもしれない。
AIはマッキンゼーを代替する?
著名SF作家のテッド・チャンは先月、AIが「新たなマッキンゼー」になりうるという論考を発表し、話題を呼んだ。AIを採用した企業が、株主価値を追求するために環境と労働者階級を破壊してしまうことに警鐘を鳴らした。マッキンゼーのソリューションが株主価値を最大化するという評判は、オピオイドや汚職への関与疑惑など世界各国で噴出するスキャンダルと表裏一体のものだ。チャンはAIが資本主義の過剰な実践をもたらしうるのではいかと危惧している。
コンサル側は、生成AIによって代替可能な仕事ではないと主張している。マッキンゼーのシニアパートナーで、A.I.コンサルティング部門QuantumBlackのグローバルリーダーであるアレックス・シングラは、AIが情報処理や経営コンサルの一部の仕事を代替しうる強力なツールとなりうる一方で、戦略的思考、問題解決能力、創造性、そして人間関係の管理といった要素を置き換えることはできないと米メディアObserverに対して主張した。テクノロジーはツールであり、その使用方法や目標への適応は人間のリーダーシップと判断に依存するという。
淘汰される前に使いこなす
経営コンサルは、クライアントワークという性質上、生成AIのアーリーアダプターになっているようだ。クライアントがそれを利用するのを支援すれば、新たな役割を確固たるものにできるかもしれない。
- 従業員の半分が使用。世界67カ国に3万人以上の従業員を擁するマッキンゼーは、約50%の同社従業員がChatGPTなどの生成AIツールを使用したことがあることを明らかにした。同社のAIコンサルティング部門であるQuantumBlackのシニアパートナー兼グローバルリーダーであるベン・エレンヴァイグは、主要な生成AIサービスのほとんどをテストしていることを示唆した。
- 週に数回使う人も。ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)が最近実施した調査によると、同社の従業員の46%が少なくとも一度は生成AIを実験したことがあることが判明した。さらに、26%の回答者が週に数回生成AIを使用していると回答している。
- 経営者と従業員で見通しが異なる。BCGの調査では、生成AIの利用が増えるにつれて、テクノロジーに対する楽観的な意見が増えることが明らかになった。生成AIの常用者は、より前向きな見通しを示し、62%がAIに対する感情として楽観主義を上位に挙げている。また、リーダー層と第一線の従業員との間の相違も浮き彫りになり、リーダーの80%が生成AIツールを常用しているのに対し、第一線の従業員はわずか20%に留まった。