いま生成AIで最もホットな市場:企業向け

企業向けサービスの世界は、先端技術に沸いている。エンタープライズ大規模言語モデル(LLM)である。業界のリーダーたちは、今後10年間にエンタープライズLLMを統合しない企業は、競争上不利になる可能性があると予測している。

いま生成AIで最もホットな市場:企業向け
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企業向けサービスの世界は、先端技術に沸いている。エンタープライズ大規模言語モデル(LLM)である。業界のリーダーたちは、今後10年間にエンタープライズLLMを統合しない企業は、競争上不利になる可能性があると予測している。


OpenAIは8月末、プライバシーとセキュリティ対策を強化した企業向けChatGPTバージョン、ChatGPT Enterpriseを発表した。データ保護に関する企業の懸念に対応するため、OpenAIはChatGPT Enterprise上のユーザーデータがモデルのトレーニングに利用されないことを保証する。このエンタープライズ版は、GPT-4への高速アクセス、データ分析の強化、より複雑なユーザーの要求を処理する機能を約束する。

Introducing ChatGPT Enterprise
Get enterprise-grade security & privacy and the most powerful version of ChatGPT yet.

ChatGPT Enterpriseのローンチは、GPT-4のような大規模言語モデルへのセキュアなアクセスを提供するベンダーとOpenAIの競争が激化することが予想される。GPT-3.5のカスタム可能なファインチューニング(微調整)を可能にするOpenAIの最近の動きは、包括的なエンタープライズソリューションを強化する意図が透ける。

GPT-3.5 Turbo fine-tuning and API updates
Developers can now bring their own data to customize GPT-3.5 Turbo for their use cases.

現在、昨冬からブームである大規模言語モデル(LLM)の最もホットな市場は、間違いなくB2Bの世界にある。

初速の遅かった中国も追走を始めている。9月7日には、テンセントはLLM製品を初公開し、企業は同社のモデル「Hunyuan」を使用できるようになったと発表した。テンセントは、中国語と英語の両方で会話できる自社のモデルは、数千語の長文を書いたり、特定の数学の問題を解いたりといった分野で、OpenAIのChatGPTよりも「優れている」と主張した。このモデルは、テンセント自体にも提供されており、同社の50以上の製品とサービスの基盤になっているという(*1)。Hunyuanの登場は、百度とセンスタイムを含むいくつかの中国のテクノロジー企業が最近、独自のAIモデルを発表したのに続くものだ。

世界最大級の経営コンサルティング会社が独自のLLMを導入した事例は、ニーズの存在の明快なシグナルである。マッキンゼー・アンド・カンパニーは8月中旬、従業員向けに開発した独自のAIチャットツール「Lilli」を発表した。Lilliは2023年6月から現在ベータ版として提供されており、秋までにはマッキンゼーの従業員が広く利用できるようになる予定だ。このツールはすでにその可能性を示しており、わずか2週間で5万件の質問に回答し、初期のユーザーから好評を得ている、という。

生成AIは近年、国際的な急成長を遂げてきたコンサルティング業界にも圧力をかけている。マッキンゼー・グローバル・インスティテュートのパートナーであるMichael Chuiらは、昨年12月に公表された論考で、「生成AIは、顧客サービスのような相互作用に対する技術的介入が最も不十分だった領域を変えることになる」とし、これらがビジネス・プロセスを変化させる可能性を主張した。これには、経営コンサルタントも当てはまる部分があるだろう。もちろん、機械代替性への免疫を持ったドメイン特化の技能や知識を持つ経営コンサルタントは多数いるものの、生成AIと仕事のカテゴリがリンクする従業員は少なからずいて、淘汰の波に対して脆弱に見える(*2)。

生成AIが経営コンサルを淘汰する?
キャリア形成の花形となった経営コンサル。しかし、その仕事は生成AIという脅威にさらされている。時代の波の中で淘汰されるのか、それとも新たな進化の始まりか。

データウェアハウス企業Snowflakeの製品管理ディレクターであるTorsten Grabsは、企業における開発者と非開発者の両方の生産性を向上させる生成AIの変革の可能性を強調する。しかし、彼は、LLMがうっかり機密情報を開示してしまうような、潜在的なデータ漏えいの懸念について指摘する。こうしたリスクを軽減するために、(i)データを安全に保管すること、(ii) データを整理する (iii) ニーズに合わせてAIを調整する (iiii) あらゆる種類のデータを活用する ― を提案している。

注釈

*1:中国で最も価値のあるインターネット企業であるテンセントは、Hunyuanは1,000億以上のパラメーターを持ち、2兆以上のトークンで訓練されていると述べた。OpenAIのGPT-3 AIモデルは2020年に1750億のパラメータを持ち、Meta Platform Inc.のLlama 2モデルは2023年に700億のパラメータを持っていた。

*2:ゴールドマン・サックスは、3月、AIが3億人のフルタイムの仕事を置き換える可能性があるという報告書を発表した。昨年、PwCが行った年次グローバルワークフォース調査では、回答者のほぼ3分の1が、3年後に自分の役割がテクノロジーに取って代わられる見通しを心配していると回答している。

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新たなスエズ危機に直面する米海軍[英エコノミスト]

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By エコノミスト(英国)
新型ジェットエンジンが超音速飛行を復活させる可能性[英エコノミスト]

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1960年代以来、世界中のエンジニアが回転デトネーションエンジン(RDE)と呼ばれる新しいタイプのジェット機を研究してきたが、実験段階を超えることはなかった。世界最大のジェットエンジン製造会社のひとつであるジー・エアロスペースは最近、実用版を開発中であると発表した。今年初め、米国の国防高等研究計画局は、同じく大手航空宇宙グループであるRTX傘下のレイセオンに対し、ガンビットと呼ばれるRDEを開発するために2900万ドルの契約を結んだ。 両エンジンはミサイルの推進に使用され、ロケットや既存のジェットエンジンなど、現在の推進システムの航続距離や速度の限界を克服する。しかし、もし両社が実用化に成功すれば、超音速飛行を復活させる可能性も含め、RDEは航空分野でより幅広い役割を果たすことになるかもしれない。 中央フロリダ大学の先端航空宇宙エンジンの専門家であるカリーム・アーメッドは、RDEとは「火を制御された爆発に置き換える」ものだと説明する。専門用語で言えば、ジェットエンジンは酸素と燃料の燃焼に依存しており、これは科学者が消炎と呼ぶ亜音速の反応だからだ。それに比べてデトネーシ

By エコノミスト(英国)