アマゾン、社員引き止め策の報酬体系見直しが進行中

ハードワーク文化が有名でビッグテック企業の中では給与水準が低いことで知られるアマゾンが、従業員の離職を避けるため株式報酬や昇給、カウンターオファーなどの報酬体系の見直しを進めているようだ。

吉田拓史

要点

ハードワーク文化が有名でビッグテック企業の中では給与水準が低いことで知られるアマゾンが、従業員の離職を避けるため株式報酬や昇給、カウンターオファーなどの報酬体系の見直しを進めているようだ。


アマゾンは従業員の報酬への不満と上級職の相次ぐ離職に直面しており、一部の従業員の給与総額を25~40%増加させるために株式報酬の導入を検討していたと米メディア「ビジネス・インサイダー」が報じた。

同誌が確認したというアマゾンの内部関係者や文書によると、アマゾンは、シニア人材の「流出」と呼ばれる事態に直面しており、給与に対する不満が高まっており、従業員への報酬体系を変更することが期待されているという。同社は、特別株式付与、カウンターオファーの引き上げ、従業員が会社に不満を持っている時期を特定するための社内ツールなどの方策を検討しているようだ。

アマゾンは一部の従業員の総報酬を25~40%引き上げるために、30ヶ月間にわたって6ヶ月ごとに権利が確定する特別株式報酬を検討したことが少なくとも一部であったという。

同誌が引用した関係者によると、アマゾンは報酬の変更を従業員に伝えるためのチームを社内で形成しつつあるという。最近アマゾンを去った上級幹部たちは、退職理由として成長が鈍化していること、他の場所でより高い報酬を得られること、そして厳しい文化を理由に挙げている。また、同誌が入手したスクリーンショットによると、今年の夏に実施された社内意識調査の結果では、基本給の低さの認識が、会社員が退職を検討する理由の上位に浮上していた。

アマゾンの従業員は、他の場所でもっと稼げることが多い

多くのテクノロジー企業と同様に、アマゾンは企業の従業員に対して、一部は現金で、一部は譲渡制限株式ユニット(RSU)で報酬を支払っている。しかし、アマゾンの場合は、会社員の基本給の上限を16万ドルとしており、同業他社と比べて比較的低い水準となっている(ただし、ベイエリアやニューヨークなど、一部の地域の従業員の基本給は若干高くなっている)。

アマゾンは従業員の権利確定スケジュール(クリフ、崖と呼ぶ)を後ろ倒しにしており、評判はあまり良くない。アマゾン社員の株式のうち、付与されてから2年間で権利が確定するのはわずか20%だ。

アマゾンの株式は、2020年の急激な上昇により、多くのアマゾン社員の報酬パッケージの価値が上がり、同社の時価総額がほぼ2倍になった後、2020年の第3四半期以降、ほぼ同じレベルで推移しています。

同誌が引用したアマゾンの技術系社員によると、アマゾン株の価値が上昇トレンドを終えた後、一部の従業員は、それまで考えていなかった転職へと目を向けたかもしれないという。

同社が毎年実施している従業員意識調査では、2021年に別の仕事を探したいと考えた要因として44.6%の回答者が基本給を挙げており、退職したい理由の第2位となっています。基本給」は、45%の回答者が挙げた「明確な成長の道筋が見えない」に僅差で続いている。

対照的に、2018年から2020年までに別の仕事を探していると答えたアマゾン社員のうち、基本給を理由に挙げたのは約3分の1だけで、これは「変化を求めている」「新しい機会に期待している」と答えた人とほぼ同じ割合だったようだ。また、2018年から2020年の調査では、「明確な成長の道筋が見えない」も理由の第1位に挙げられている。

アマゾンを辞めた複数の人が、今年初めにビジネス・インサイダーに語ったところによると、他の場所の方が給料が良いことが退職の主な理由だったという。アマゾンの幹部は、これらの人々の給料を簡単に倍にすることができる魅力的な報酬パッケージを提供する企業からの需要が高い。

この問題は、アマゾンに限ったことではない。アップル、グーグル、そしてフェイスブックの親会社であるメタも、優秀な人材を逃がさないために報酬パッケージの増額を迫られているが、現役社員や元社員によると、この問題はアマゾンの方が顕著だそうだ。

カウンターオファーや不定期の昇給

アマゾンがどのような変更を計画しているかは不明だが、他の従業員は、同社が給与に対するアプローチを変えているようだと気づいている。

あるアマゾン社員によると、第1四半期に昇給できるという手紙を受け取ったそうだが、これは珍しいことで、多くの社員は昇進しない限りインフレに追いつく程度の昇給しかないと思っているそうだ。

ソーシャルメディア「Blind」では、アマゾンの従業員向けの社内グループに参加しているユーザーがカウンターオファー(他で受けたオファーに対抗するオファー)が増えていることに気づいたという。また、要求されていない昇給のパターンと思われるものを指摘し、アマゾンが日々の従業員の感情調査を監視し、離職のリスクがあると思われる従業員に昇給させているのではないかと推測する人もいた。Blindで公開されたスクリーンショットによると、アマゾンは「従業員を維持するための現実的な行動を管理者に支援するリテンション・アプリケーション・ツール」なるものも展開しているようだ。

アマゾンのあるマネージャーがビジネス・インサイダーに語ったところによると、入社して以来初めて、上司から、従業員が他社から受けたオファーに対抗できると言われたという。