Appleがプライバシーポリシーで自社検索広告に利益誘導か
Appleは、iPhoneにプライバシーに関する変更を導入し、Facebookを含むライバル企業が消費者に向けて広告を出すことを妨害してから6ヶ月間で、広告事業の市場シェアを3倍以上に伸ばした。
要点
Appleは、iPhoneにプライバシーに関する変更を導入し、Facebookを含むライバル企業が消費者に向けて広告を出すことを妨害してから6ヶ月間で、広告事業の市場シェアを3倍以上に伸ばした。
10月17日付けのフィナンシャル・タイムズ(FT)が報じたところによると、Appleの広告による収益は今年の50億ドルから3年以内に200億ドルにまで上昇するとある調査グループは推定している。
「Search Ads」(検索広告)と呼ばれる自社事業は、App Storeで検索結果の上に表示されるスポンサー枠を提供している。
FTが引用したモバイルマーケティングの効果を測定するBranchの調査によると、広告をクリックした結果、iPhoneアプリがダウンロードされる割合は、現在、アップル社の自社事業が58%を占めているとのことだ。1年前、そのシェアは17%に過ぎなかった。BranchはBuzzFeed、Instacart、Strava、Starbucksなど主要250アプリのデータを収集している。
検索広告が急に魅力的になったのは、新しい機能ではなく、AppleがiOSの世界で他の広告業界を「盲目」にしてしまったからだ、とFTは書いている。
Chart of the Day:@Apple’s advertising business has more than tripled its market share in the six months after it introduced privacy changes to iPhones that obstructed rivals, including @Facebook and @Google, from targeting ads at consumers.
— Patrick McGee (@PatrickMcGee) October 17, 2021
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ATTの背景
Appleは以前、広告主が使用するための固有のデバイス識別子を作成した。最近になってAppleは「App Tracking Transparency(ATT)」ルールを導入して、開発者が識別子を利用するためにユーザーの許可を求めることを義務付けた。
App Trackingは、Appleが顧客のデバイスに固有の識別子を割り当てることで機能する。識別子をもとに特定のウェブサイトの閲覧履歴で特定の広告の対象となりうると判断できる。さらに特定のウェブサイトで特定の商品の広告を表示し、その後、特定の小売店のサイトに行って購入したため、その広告が成功した(可能性が高い)ことがわかる。
ATTが適用されると、アプリ開発者は、トラッキングを許可するかどうかを聞かなければならない(下の画像)。もしあなたが「いいえ」と言えば(ほとんどの人がそうだと思いますが)、そのアプリはそのシステムを使うことができない。そうなると、サードパーティの広告の価値が下がる。
かつてはユーザーが広告にどのように反応しているかを示すデータは、かつてはリアルタイムできめ細やかなものだったが、現在では最大72時間遅れており、集計結果のみが提供されている。
最近、Facebook(FB)の製品マーケティング担当バイスプレジデントのグラハム・マッドは、iOSのアップデートに伴うターゲティングの制限により、広告主がFacebook上の広告が効果を発揮したかどうかを判断することが難しくなっていることを認めるブログ記事を公開した。
FBのCFOであるデビッド・ウェナーは、7月の業績発表の際に、iOSの変更による潜在的な影響を警告し、第3四半期には変更による影響が大きくなるだろうと述べていた。
広告IDのオプトアウトがiOSに組み込まれて以来、FB広告においての効果測定の精度が低下していると広告代理店の従業員は言っている。「FBがいかに有効なのかを確かめるために、いまはGoogleアナリティクスを使っている」という。FBで広告を打ち、FBで効果を測定できるクローズトループが売りだったが、「ウォールドガーデン」(塀で囲まれた庭)に穴が空いてしまった。
一方、Appleは、広告サービスに登録した人に詳細な情報を提供している。Appleは他のモバイル広告企業が従うポリシーを自らだけ例外にしていると指摘するものもいるようだ。
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