サムスンはArmを買うか?

サムスンがArmの買収候補として浮上した。可能性は低い。それでも、サムスンとの会談によって他の潜在買収者やIPO引受証券会社を刺激できる。ソフトバンクは昨年から模索するArmの現金化を実現できるか。

サムスンはArmを買うか?
2022年8月12日(金)、韓国ソウルのソウル中央地方裁判所前にて、サムスン電子トップの李在鎔共同副会長が登場した。SeongJoon Cho/Bloomberg

サムスンがArmの買収候補として浮上した。可能性は低い。それでも、サムスンとの会談によって他の潜在買収者やIPOを引き受ける証券会社を刺激できる。ソフトバンクは昨年から模索するArmの現金化を実現できるか。


サムスン電子トップの李在鎔が来月、ソウルでソフトバンクグループ(SBG)創業者である孫正義と会談することが明らかになった。孫は10月に韓国の首都を訪問するが、メディアは、この会談が、英国のチップ設計会社Armの買収と関係があるのではないかと疑っている。

孫の訪問は、SBGのArm売却計画と関係があるのかという質問に対して、李は「おそらく、孫はそのような提案をするかもしれないが、それが何であるかは分からない」と回答した、と韓国紙The Korea Heraldは報じている。

Armの親会社であるSBGは当初、チップ事業をNVIDIAに売却することを計画していた。しかし、独占禁止の観点や国家安全保障上の脅威など、いくつかの理由により、この取引は今年初めに決裂した。SBGは現在、Armを米国上場させる計画を公にしながら、他の買い手候補を探している、と考えられる。

BusinessKoreaが引用した業界関係者は、Armの買収がサムスンのチップ製造ビジネスに打撃を与える可能性に言及している。Armとロイヤリティ支払いに基づいてチップを設計している、あるいはしてきたグローバルファブレス企業が、企業秘密の漏洩を恐れてサムスンとの取引を止める可能性もある、という。

Armベースのスマートフォン向けシステムオンチップ(SoC)で支配的な市場シェアを誇るクアルコム(Qualcomm)は、コンソーシアム(企業連合体)での一部、あるいは全面的な株式取得の意思を示していた。インテルもまたコンソーシアムに興味を示している。

半導体企業連合がArmをSBGから買収し中立化するシナリオ
半導体企業のコンソーシアム(共同企業体)がソフトバンクグループ(SBG)からArmを買収し中立化する可能性は否定できない。新規株式公開(IPO)の枯渇と景気後退観測は、SBGにIPO以外の選択肢を有望視させる可能性がある。

しかし、Armは最近、Qualcommとその傘下のNuviaがArmのライセンスの使用許諾に違反したとして、両者を相手取り、デラウェア州連邦地方裁判所に提訴した。QualcommはNuviaのArmベースの半導体によって従来から強かったモバイルではなくデスクトップやサーバーなどの市場を開拓することを目論んでいた。

Armの提訴は、Armにとって好ましいように見えるNuviaの試みを潰しかねないものだ。また、潜在買収者のQualcommとの関係を悪化させかねないものでもある。QualcommはRISC-Vに布石を置いており、そちらへの投資の比重が高まる可能性すらある。

アームのクアルコム提訴は不合理:対抗馬RISC-Vへの移行を早めるか
英半導体大手Armによる米半導体大手Qualcomm提訴は、Armアーキテクチャの市場シェアを拡大しようとするQualcommの試みを頓挫させる不合理な梯子外しだ。QualcommにはArmの対抗馬RISC-Vに投資するインセンティブが生まれた。

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