四面楚歌のBNPLは生き残れるか?

パンデミックのブームが去り、BNPL(後払い決済)は四面楚歌の状態にある。債務不履行の高まりやインフレによる需要の減退が、BNPL企業の収益性を圧迫する中、企業価値は落ちるナイフのようだ。

四面楚歌のBNPLは生き残れるか?
代表的なBNPL企業、スウェーデンのクラーナ(Klarna)。出典:Klarna

パンデミックのブームが去り、BNPL(後払い決済)は四面楚歌の状態にある。債務不履行の高まりやインフレによる需要の減退が、BNPL企業の収益性を圧迫する中、企業価値は落ちるナイフのようだ。

代表的なBNPL企業、スウェーデンのクラーナ(Klarna)の企業価値が急降下している。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)によると、資金調達の交渉は続いており、投資家が同社につける企業価値は、最初は約300億ドル、次に約150億ドルと下がってきていると、この関係者は述べている。ある関係者によれば、企業価値は100億ドルまで下がる可能性があり、同社はこれに抵抗しているという。

WSJによると、投資家や銀行関係者との議論の焦点の1つは、クラナが最も成長率の高い米国市場において、どの程度積極的に取り組むべきかということだ。投資家筋は多額の先行投資による損失を敬遠しているが、クラーナは積極的な姿勢を崩していないという。

パンデミック時にクラーナほど恩恵を受けた非上場企業はないだろう。消費者は、買い物客がオンラインで注文した商品の支払いを分割できるフィンテック企業に殺到した。クラーナの評価額は、わずか2年の間に55億ドルから460億ドルへと急騰した。

パンデミック時の成功は、ソフトバンクグループのビジョンファンド2を含む新しい投資家を魅了した。このファンドは2021年の投資を主導し、クラーナは決済処理会社のStripeに次いで世界第2位の非上場フィンテック企業になった。他の投資家には、セコイア・キャピタル、シルバーレイク、ドラゴニア・インベストメント・グループなどがいる。

クラーナは5月、不安定な経済環境の中でコスト削減を進めるため、従業員の10%をレイオフすると発表している。クラーナの競合会社であるアフターペイとジップは、デフォルトの増加と景気低迷に対抗するため、新規組成を遅らせている。ジップの株価は今年に入ってから90%下落している。

クレジット・カルマが今年初めに行ったある調査では、回答者の4分の1がアプリの利用後に負債総額が増加し、20%以上がBNPLの債務残高を返済するためにクレジットカードを使用することになったという結果が出ている。借り手が借金を重ねることへの懸念から、米消費者金融保護局は現在、BNPL企業を調査している。

BNPLが消費者に支持される主な理由の一つは、支払いが滞りなく行われる限り、事実上無利子でローンが組めるからである。Bloombergが引用したCreditCards.comの分析によると、クレジットカードの金利が上昇し、2020年3月以来初めて平均が17%に近づいているため、これは特に魅力的なことだ。

BNPLは中国の先行例を真似たものだ。それはアント・グループ(螞蟻集団)傘下の小口金融サービスを手掛ける「花唄(Huabei)」である。花唄は決済アプリ「支付宝(アリペイ)」を利用する際に後払いができるようになるサービスだ。利用者の消費レベルやアント・グループが運営する個人信用評価システム「芝麻信用(Zhima Credit)」のスコアに基づき、1,000元(約2万円)から5万元(約100万円)の幅で限度額が設定される。クレジットカードよりもハードルが低いため、学生を含む若い利用者が多い。

アントグループ (蚂蚁科技集団) の企業分析
Ant Group(螞蟻科技集團股份有限公司)は、世界の金融の最先端を走るフィンテック企業。欧米の金融に着想を得て開始された製品群は、いまではデータ活用に優れ、現代的なクラウド技術に裏打ちされた、ユニークなポジションを獲得している。

中国ではアリペイの中に様々な金融機能がオールインワンで存在するが、欧米では規制上、それが不可能だった。このため、花唄単体を真似ることが流行っていた。しかし、真似をすれば儲かる時期は終わり、BNPLは試練にさらされている。

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