中国CATLの電池覇権、今後数年は堅い
最近の決算や提案する電池の幅広い種類が示す研究開発能力が、CATLの電池市場での覇権の堅さを物語っている。次世代電池次第ではゲームはひっくり返るが、ここでもCATLは研究開発能力の高さを見せている。
最近の決算や提案する電池の幅広い種類が示す研究開発能力が、CATLの電池市場での覇権の堅さを物語っている。次世代電池次第ではゲームはひっくり返るが、ここでもCATLは研究開発能力の高さを見せている。
寧徳時代新能源科技(CATL)は電池市場において、堅い優位性を築いた。
CATLは2023年8月16日に、新型の電池「神行超充電池(Shenxing)」を公開した。同社の公式発表によると、CATL乗用車部門CTOである高煥は、神行超充電池は、リン酸鉄リチウムイオン(LFP)電池であり、10分間の急速充電で400km走行可能であり、最大航続距離は700kmと説明した。今年末に量産を実現し、来年の第1四半期に、電池を搭載した新車が市場に投入される予定という。
CATLの電池のライナップでは、このLFP電池と中国国外のスタンダードである三元系(NMC)リチウムイオン電池のほか、ナトリウムイオン電池と詳細の明らかになっていない「凝聚態電池」のような「リチウム電池以外」も含まれる。LFPとNMCでは、CATLの優位は確立していると言っていい。
- 生産能力で有利に立っている。フィナンシャル・タイムズ(FT)が引用したバーンスタインのアナリストによると、 CATLとBYDは、世界最大のEV市場で圧倒的な電池生産能力を持ち、中国国内でサプライチェーンを確立しているため、工場の資本コストを電池生産1ギガワット時あたり6,000万ドル以下に抑えることに成功している。このコスト差は克服不可能に見えるため、海外のライバルたちは新興技術に将来を賭けているという。
- 市場シェアで世界一を確立。韓国の市場調査会社SNEリサーチが8月3日に発表したデータによると、1~6月の世界のEV用電池消費量における市場シェアでは、CATLは今年上半期もシェア36.8%で世界1位を維持し、30.0%以上の市場シェアを持つ世界唯一の電池サプライヤーである。2位も中国のBYDが15.7%を占め、韓国のLGエナジーソリューションを凌いでいる。
- 財務基盤も確立している。7月に発表された同社の上半期決算をブルームバーグが集計したところ、6月までの3ヶ月間で売上高は56%増の1000億元(約2兆円)、純利益は63%増の109億元(約2,200億円)だった。
- R&Dで優位に立つ。CATLは1万8,000人の研究スタッフと、昨年倍増した20億ドル以上の研究開発予算は、ライバル企業が追いつくのがいかに難しいかを示している。
- 海外展開が進みつつある。電池のサプライチェーンのほとんどが中国国内にあり、国内での生産の利得はかなり大きい。しかし、世界中のエンドユーザーのニーズに応えるため、海外進出を進めている。CATLは6月、タイの企業にバッテリーの組み立て技術と生産設備を提供すると発表した。CATLは東南アジアの他の地域でEV用電池の供給を検討している。ドイツでは、CATLはBMWを顧客とする新工場で生産を開始した。昨年8月、ハンガリーに工場を建設すると発表していた。米国でもフォードとの協業プロジェクトがあるが、補助金をめぐり政治問題化している。
- 蓄電池の分野でもCATLの優位性は堅い。中国は世界で最も太陽光発電設備に投資する国であり、日中の余剰電力を蓄える手段が必要だ。巨大な需要地が自国にある。
日米韓勢の対応策は
これに対して、他国のプレイヤーはCATLの得意分野で争うのではなく、パナソニックのようにハイエンドに特化するか、あるいはトヨタのように全固体電池のような新技術によるゲームの転換を狙っている。