中国電池メーカーCATLの牙城

電池産業の川上から川下まで

中国電池メーカーCATLの牙城
中国電池メーカーCATLのバッテリー

要点

中国電池メーカーの寧徳時代(CATL)の躍進が止まらない。テスラとの供給契約は延長され、電池産業の川上から川下まで版図を広げている。再エネとEVの追い風を受ける中、同社はどこまで大きくなるのか。


中国電池メーカー最大手の寧徳時代(CATL)は、6月下旬、2025年12月までテスラの上海子会社に電池パックを提供することで合意したと証券取引所への提出書類で明らかにした。

これにより、同社が昨年2月にテスラ社と締結した2022年6月までの契約は2年6ヵ月延長されることになった。今回の契約でテスラに供給されるリチウム電池の数量について、詳細は明らかにされていない。

両者の最初の協力関係は、2020年2月にCATLが初めてテスラに電池を供給することを発表したときからのもの。 供給契約の有効期間は、2020年7月1日から2022年6月30日までだった。 その後、双方の協力によるモデル3向けのバッテリーパックも公式サイトで正式に公開され、9月から合計3万台以上の国内モデル3に搭載された。

今回締結された契約は、前回の契約とは異なり、CATLが全世界のビジネスにバッテリーセルを供給する可能性を開いている。今回は、前回と比べて国内の地域制限がなくなり、CATLがテスラと直接契約したのに対し、前回は上海テスラと契約したため、テスラの上海工場への供給に加えて、テスラの海外グローバル工場への供給の可能性もある。

中国市場制圧により世界シェア1位

近年、CATLは中国政府の電気自動車(EV)への補助金の波に乗り、市場シェアを拡大してきた。中国にはEVのサプライチェーンの集積が見られ、「中国市場を制したものが世界市場を制する」の様相を呈している。そして、その中国を制しているのがCATLである。

カナダのコンサルティング会社であるアダマス・インテリジェンス社の統計によると、CATLは、2021年第1四半期の新型電気自動車用のバッテリーセルのサプライヤーとして、LGを抜いてトップになった。CATLは、今年の最初の3ヵ月間に、総容量13.3GWhのバッテリーセルを販売している。2位と3位にはLG Energy Solutionが11.9GWh、テスラのパートナーであるパナソニックが9.1GWhで続いている。

出典:アダマス・インテリジェンス

アダマスによると、CATLは1月の好調な業績で首位を確保していた。LGは、2月と3月の両方でCATLを上回った。しかし、四半期ごとの全体像では、CATLが韓国企業を上回った。

出典:アダマス・インテリジェンス

CATLの大きな強みは、自国市場である中国だ。アダマスの統計によると、第1四半期にCATLが提供したGWhの量は「他の32社のセルサプライヤーの合計を上回る」。CATLは乗用車市場向けには10.6GWh。それに加えて、商用車および特殊車両市場向けに0.9GWhを提供している。

出典:アダマス・インテリジェンス

CATLの株価は5月31日に過去最高となる1株429元をつけ、時価総額が初めて1兆元(約17兆円)を超えた。株価はその後一時軟調となったが、

2018年以降にCATLが出資もしくは合弁で設立した企業は45社を超え、設立した完全子会社は10社以上になるという。これらの企業は車載バッテリー、リチウム電池材料、バッテリー充電・交換、自動運転、半導体など幅広い分野に及び、各プロジェクトへの投資額を合計すると総額2000億元(約3兆4300億円)以上に達するとされる。

コスパの高さが競争力の源泉

ダイムラー、フォルクスワーゲン、テスラ、GM、吉利(Geely)、比亜迪(BYD)など大手自動車メーカーは、駆動用バッテリーの自給自足を目指して続々と自社バッテリー工場の建設にかじを切っている。CATLは、電池をめぐるサプライチェーンで版図を広げ、博士号持ちの研究者を多数抱えるR&D部門への莫大な投資で、電池専業の強みをみせつけられるだろうか。

CATLは技術研究開発に莫大な投資を行っている。2020年のデータによると、研究開発に35億6900万元を費やしており、過去5年間の複利成長率は33.2%で、研究開発への投資額は同業他社を大きく上回っている。現在、CATLは、製品開発、技術設計、試験・検証、プロセス製造などを含む完全で包括的な研究開発システムを有しており、これが同社の競争力を支えているようだ。

CATLは営業コストが低く、事業規模が大きく、車載電池の川上と川下の強力な価格決定力を持っているため、業界全体の粗利益率が低下した場合でも、CATLの粗利益率は大幅に増加するような事業戦略を持っている。

電池業界には、CATLだけではなく、高級製品の供給者としてパナソニックやLG、比較的安価な製品は国内勢がひしめいているが、CATLは「コストパフォーマンス」を重視している。 2021年初めの寧徳時報の財務報告から、多額の減損が発生しており、これらの損失のほとんどはCATLの在庫の価値低下によるもので、CATLが製品の値下げを実施したことも意味している。

テスラのモデルが継続的に値下げされる前には、必然的にサプライヤーにもある程度の価格の譲歩が求められるが、CATLの費用対効果を重視する戦略は、テスラの戦略に合致しているようだ。

一方、6月7日には、テスラがLG化学の四元系電池(NCMA)正極材を組み込んだ車載電池を国内モデルの「Model Y」に採用する準備が整ったというニュースがあった。この電池には最大90%のニッケルが含まれており、コバルトの含有量は大幅に低下すると予想されている。

これは、CATLに一定の影響を与えることは明らかだが、CATLの顧客集中度を見ると、上位5社の占める割合は10%を超えていないため、テスラがLG化学を選択してもそれほど大きな影響はない。

CATLの電池は、ほとんどのEVブランドに採用されている。昨年8月には、米国上場の電気自動車メーカーNIO、金融サービスグループの国泰君安国際、湖北省科学技術投資集団と合弁会社「武漢蔚能電池資産」を設立し、中国全土にバッテリー交換ステーションを設置して、自動車オーナーにバッテリーパックをリースしている。

鉱業への進出

CATLは電池の原材料を確保すべく鉱業へと進出している。4月11日、中国の洛陽モリブデンと戦略的な提携を結び、洛陽モリブデンがコンゴ民主共和国に保有するキサンフ銅・コバルト鉱山に出資すると発表した。

CATLの発表によると、同社子会社の寧波邦普時代新能源が、洛陽モリブデン傘下KFMの株式25%を1億3,700万ドルで取得する。KFMはキサンフ鉱山の95%を保有している。

この取引には複数の利点がついている。第1に、CATLはキンサフ鉱山のコバルトの売却先や売却量について発言権を確保できる。第2に、CATLは投資計画や生産計画に影響力を及ぼすことができる。第3に、CATLはコバルト価格が暴騰した場合に備えて有用なヘッジ手段を手に入れることだ。

CATL、EVと再エネを両取りする電池帝国の台頭
CATLは電気自動車(EV)向け車載電池と再生可能エネルギー発電設備向けの電池、スマートグリッドや消費地での定置型電池等の次世代産業の核になる部分を押さえている。中国で誕生した巨大な電池帝国は日韓勢を超える力をつけようとしている。

📨ニュースレター登録とアカウント作成

平日朝 6 時発行のAxion Newsletterは、デジタル経済アナリストの吉田拓史(@taxiyoshida)が、最新のトレンドを調べて解説するニュースレター。同様の趣旨のポッドキャストもあります。登録は右上の「Subscribe」ボタンからFreeのプランを選ぶと届くようになります。あるいはこちらから。

クリエイターをサポート

運営者の吉田は2年間無休、現在も月8万円の報酬のみでAxionを運営しています。

  • 右上の「Subscribe」のボタンからMonthly 10ドルかYearly 100ドルご支援することができます。大口支援の場合はこちらから。
  • 300円の投げ銭 👉 https://buy.stripe.com/7sI4grbMg9kf2t25kl
  • 毎月700円〜の支援👇
デジタル経済メディアAxionを支援しよう
Axionはテクノロジー×経済の最先端情報を提供する次世代メディアです。経験豊富なプロによる徹底的な調査と分析によって信頼度の高い情報を提供しています。投資家、金融業界人、スタートアップ関係者、テクノロジー企業にお勤めの方、政策立案者が主要読者。運営の持続可能性を担保するため支援を募っています。

Special thanks to supporters !

Shogo Otani, 林祐輔, 鈴木卓也, Kinoco, Masatoshi Yokota,  Tomochika Hara, 秋元 善次, Satoshi Takeda, Ken Manabe, Yasuhiro Hatabe, 4383, lostworld, ogawaa1218, txpyr12, shimon8470, tokyo_h, kkawakami, nakamatchy, wslash, TS, ikebukurou 黒田太郎, bantou, shota0404, Sarah_investing, Sotaro Kimura, TAMAKI Yoshihito, kanikanaa, La2019, magnettyy, kttshnd, satoshihirose, Tale of orca.