CBDCを使用した中国の国際送金網が米金融覇権を揺るがす
中国が主導するデジタル通貨ベースの国際送金プラットフォームは、ほぼリアルタイムの取引を実現し、クロスボーダー決済のコストを削減できたという試験結果を発表した。米国の経済覇権の柱の一つであるSWIFTの牙城が揺らいでいる。
中国が主導するデジタル通貨ベースの国際送金プラットフォームは、ほぼリアルタイムの取引を実現し、クロスボーダー決済のコストを削減できたという試験結果を発表した。米国の経済覇権の柱の一つである国際送金網の牙城が揺らいでいる。
10月末から11月初旬に香港で開催された「Hong Kong FinTech Week 2022(香港金融科技周2022)」では、世界初・最大規模の多通貨クロスボーダー決済プラットフォーム「Project mBridge」の最新の進捗状況が明らかにされた。
Project mBridgeは、中国人民銀行や香港金融管理局(HKMA)など4つの中銀が共同で主導している。中国本土、香港、タイ、アラブ首長国連邦(UAE)の4つの管轄区域が、クロスボーダー取引において、従来のデジタル通貨で安定的かつ効率的に決済できるようにすることを目的としている。
Project mBridgeは複数の中央銀行がそれぞれの中央銀行デジタル通貨(CBDC)を発行・交換できる共通プラットフォームを使ったクロスボーダー決済を実験的に行っている。mBridgeは、共通のプラットフォームにより、競合する国際銀行間通信協会 (SWIFT)と異なり、中央銀行と市中銀行が直接接続できる決済ネットワークを提供する。
国際決済銀行(BIS)の報告によると、香港特別行政区、中国本土、UAE、タイの20の商業銀行は、パイロットプログラムに参加し、法人および商業銀行の顧客を代表してライブ決済取引を処理した。8月15日から9月23日まで、4つの管轄区域の20の銀行がmBridgeプラットフォームを利用して、6週間で164件の支払いおよび外国為替取引、合計2,200万ドル超を行い、プラットフォーム上でPVP決済(多通貨同時決済)を行った。
この試みは、デジタル人民元「e-CNY」を含むCBDCが、ほぼリアルタイムの取引を実現し、クロスボーダー決済のコストを削減できることを実証した、とProject mBridgeは主張している。
これは、Project mBridgeが、世界の資金移動の中核をなすメッセージングネットワークである国際銀行間通信協会 (SWIFT)の脅威になりつつあることを示している。
SWIFTは、クリアリングハウス銀行間支払システム (CHIPS)、そしてドルとともに米国の経済覇権を支える重要な柱だが、21世紀的な決済システムとは言い難い。仲介者のせいで手数料が高く、決済インフラが時代遅れで送金完了も最速で5分未満、遅い場合は2日以上かかる。米バージニア州にデータセンターがあり、米国が国際送金の流れを監視できる「金融パノプティコン」の側面も持つ。
ただし、Project mBridgeでも資金の流れは追跡可能であり、監視の主体が代わるだけという側面もある。
BISイノベーションハブ香港センターは「このプロジェクトは、G20の優先事項である、より速く、安く、安全なクロスボーダー決済を実現するための新技術の実験に向けた継続的な取り組みの一部となっています。多くの国や地域、特に新興国や発展途上国において、コルレス銀行(中継銀行)サービスの国際的なネットワークへのアクセスが失われつつあります」と書いている。
「mBridgeチームは、今後1年間にアーリーアダプターが使用するのに十分な機能を備えた製品を、その後は量産可能なシステムを製造することを目指し、技術の構築とテストを継続する」と同センターは書いている。