ChatGPTはBingと組み合わせない方が便利
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ChatGPTはBingと組み合わせない方が便利

ChatGPTをBingと統合しても、Bingが邪魔だったということになりうる。検索単体の品質を見れば、BingはGoogleに圧倒されており、Bingを選ぶユーザーは余りいない。Bingで最も多いクエリがGoogle.comというのがその状況を雄弁に物語っている。

吉田拓史

Microsoftは投資先のOpenAIのChatGPTをBingにインテグレートすることを検討していると複数のメディアが報じた

ChatGPTはGenerative Pre-trained Transformer(GPT)というインターネット上にあるデータで学習させたテキスト生成の深層学習モデルで動いている。2020年のGPT-3の登場がセンセーションを引き起こした。

GPTは質問と回答、テキストの要約、機械翻訳、分類、コード生成、会話AIなどに利用されているが、その応用範囲は広く、特定のデータで微調整してさらに良い結果を出すことも可能だ。「基盤モデル」とも呼ばれるTransformerを利用することで、計算機や時間などのリソースのコストを削減することができる。

ChatGPTをBingに組み込んでも、それがユーザーのニーズに適うかは定かではない。チャットボットはいくつかのユーザーの意図に対して検索よりも速く対応できる可能性がある。特に言語モデルが、ユーザーの意図が集中する特定のドメインに対して微調整されている場合、そうなるだろう。

チャットボットが提示したのは、検索のユーザー体験の問題も含まれる。Bingを圧倒するライバルであるGoogleの検索結果はクエリ(質問)によっては広告で埋め尽くされていることがあり、ユーザーは余計な認知コストを強いられる。これがChatGPTでは相対のコミュニケーションのように見える形で回答だけが返されるため、コストが低い。ユーザーが知りたい内容によっては、チャットボットのほうが便利なユースケースはすでに存在しそうだ。

だから、ChatGPTをBingと統合しても、Bingが邪魔だったということになりうる。検索単体の品質を見れば、BingはGoogleに圧倒されており、Bingを選ぶユーザーは余りいない。Bingで最も多いクエリがGoogle.comというのがその状況を雄弁に物語っている。

ChatGPTはGoogleを脅かしているが、Googleもただ手を拱いているわけではない。Googleは、GPTと競合する大規模言語モデル(LLM)のLaMDA(Language Model for Dialogue Applications)システムで同様の技術に取り組んでいる。

しかし、上場した超大企業である同社はOpenAIのようには機敏に動けないようだ。先月、Googleの社員が匿名式質問アプリケーションでCEOのスンダー・ピチャイとAI研究チーフのジェフ・ディーンに、「我々は長い間、LaMDAを保持していたことを考慮すると、これ(ChatGPTの登場)によって機会を逃したことになるか?」とこのチャットボットの脅威について質問した。

「これは、人々が持っていると思われるニーズにかなり適合するが、これらのモデルは、特定のタイプの問題を持っていることを認識することも重要だ」とディーンは回答したという。ピチャイはこの会議で、同社が2023年に向けてこの領域で「多くの」計画を立てていると述べ、「これは大胆かつ責任ある行動を取る必要がある領域なので、そのバランスを取らなければならない」と述べた

ディーンは、同社の技術はこれまでほとんど社内にとどまっており、同社にはより多くの「評判リスク」があり、「小さな新興企業よりも保守的に」動いていることを強調したという。「私たちは、こうした技術を実際の製品に応用し、これまで使ってきたような隠蔽体質の製品ではなく、言語モデルをもっと目立たせるような製品に応用したいと考えている」。さらに、ディーンは「検索のようなアプリケーションでは、事実性の問題が本当に重要で、他のアプリケーションでは、偏りや毒性、安全性の問題も最重要であることは想像できる」と述べた。

ピチャイは、2023年はAIを会話や検索に活用する方法の「変曲点」になると述べた。「新しいものを生み出すだけでなく、物事を劇的に進化させることができる」。ピチャイと経営陣はその後、ChatGPTに対応するために研究者チームを動員し、この状況を「コードレッド(厳戒警報)」の脅威と宣言したと、ニューヨーク・タイムズは報じている。

ここでは言及されていないが、検索広告は、Googleの全ての事業の中で最も収益貢献の高いもので、検索結果の画面をバイパスしてチャットボットでユーザーのクエリに回答してしまうと、同社は著しいダメージを追うことになるだろう。

また、検索最適化(SEO)もユーザーにとってはイライラする要因である。リンク先のブログが長文で、特定の情報を得るためにスクロールを繰り返し、注意力を消費しないといけなかったことはないだろうか。言語モデルは高品質のデータセットを選んでモデルを微調整しているため、ユーザーの知りたいことが言語モデルの回答範囲の中にある場合は、言語モデルに軍配が上がりうる。Googleのようにウェブにあふれる低品質コンテンツを選り分ける必要がないからだ。

モルガンスタンレーは最近、ChatGPTがGoogleにとって脅威となるかどうかを検討するレポートを発表した。同行のAlphabetに関する主任アナリストであるブライアン・ノワックは、言語モデルが市場シェアを奪う可能性があり、「インターネット上の人々の入口としてのGoogleの地位を崩壊させる」というのが、Googleに対する弱気のケースであると書いている。

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