ChatGPTはGoogleの脅威だ
ChatGPTのクオリティに皆が驚いている。これまでのチャットボットとは一線を画している。検索をするよりも速く正確で、簡潔な回答が得られる場合もある。人々の情報収集の方法を大きく変える新しいツールが誕生した瞬間かもしれない。
ChatGPTのクオリティに皆が驚いている。これまでのチャットボットとは一線を画している。検索よりも速く正確で、簡潔な回答が得られる場合もある。人々の情報収集の方法を大きく変える新しいツールが誕生した瞬間かもしれない。
ChatGPTはGoogleを完全に代替するとは言えないものの、一部のユースケースではすでにGoogleよりも優れている兆候がある。ChatGPTはOpen AIの大規模言語モデル(LLM)のGPT3.5で動いているが、これが噂されるGPT4.0に置き換えられたとき、どの程度のインパクトがあるだろうか。
Googleの検索結果の品質が低下しているかどうか定量的な検証は行われていないが、そう感じている人は少なくないのかもしれない。
GoogleはSEOで視界不良になっている。所定のクエリに対して、検索最適化のための付随する大量の余分な情報がついた、情報過多なコンテンツへのリンクが、検索結果の上位を占めることが少なくない。ユーザーはスクロールを繰り返して、長大なコンテンツの中で自分が必要とするセクションにたどり着く。知りたいことを見つけるのに大量の時間を要するようになっているのだ(Googleは検索のアップデートでSEO記事を追放しようと躍起だ)。
GoogleもChatGPTと同じ試みをしている。結果ページでサイトへのリンクの上に質問に対する答えを簡潔に表示することが増えていることにあなたは気づくだろう。しかし、ChatGPTは質問と回答だけで構成されている簡潔なユーザーインターフェイス(UI)を採用しており、こちらが意図するポイントだけについて回答し、余分な情報がないように見受けられる。
Googleの体験を脅かすものは社内にある。元Google広告部門トップのスリダール・ラマスワミは、「(Google検索は)ゆっくりではあるが、非常に決定的に悪い方向へ変化している」と主張している。彼はその大きな要因を、彼がその構築に貢献した「広告による負荷」と表現している。
「私はかつてそのチームを運営していましたが、お金を稼がなければならないというプレッシャーはものすごいものがあります。最近、Facebookに何が起こったか思い出してください。すべてのハイテク企業は、彼らが成し遂げたことだけではなく、将来の展望によっても定義されます。Googleには、広告のスペースをどんどん取るように、あるいは注目を集める作戦を際限なく繰り広げるようにという圧力がかかっています」
ラマスワミの主張で目を引いたのは、Googleは広告を扱っているため、必ずしもユーザーのための製品設計を行わない「忠誠心の分裂」が起きていると主張している。
さらにもう一つ、決定的なファクターはワールド・ワイド・ウェブの質が落ちていると言われることだ。ウェブが巨大化するにつれ(Googleは現在1兆以上のページをインデックスしている)、多くのサイトにおける情報の質が低下している可能性が指摘されているのだ。
最初期のGoogleの元バイスプレジデント(検索製品およびユーザーエクスペリエンス担当)であるマリッサ・メイヤーは、「クリックベイトや詐欺、誤情報など、トラフィックを増やすためのページがあふれているが、一般の検索ユーザーには役に立たない」と指摘した。
このウェブの状況に大きなインパクト及ぼしそうなのが、AIによるコンテンツの生成だ。
ウェブはAIに支援されたコンテンツで溢れるようになるだろう。実際、Googleのトラフィックに依存するウェブサイトを持つ企業は、コンテンツを書くためにAIに頼ることが増えていると言われる。特に、何百もの製品に関する説明文を掲載することが多いeコマースサイトによく見られることだ。
そのようなツールを提供する新興企業が雨後の筍のように増えている。ChatGPTを提供するOpen AIのGPTはその火付け役だったが、最近ユニコーンになった米新興企業Jasperはまざまな商品に関する文章をAIに書かせることで、コピーライターに仕事を依頼するコストを削減できるとうたっている。マーケティング文書はそれこそウェブに大量にあるため、AI学習用のデータに事欠かない。
AIによるライティングはウェブの品質を向上させている最中なのかもしれない。人間のライティングにはある種の不確実性が伴うものだし、DeNAのWELQ問題のように、RPA的な人間の使い方でSEO記事を量産する手法は珍しいことではない。これらはAIに置き換わった方がまだいいとも言える。
しかし、悪意の人がこのAIを使えば、偽情報や誤情報をより効果的に流通させる手段にもなりうることは、重要な視点だ。偽情報キャンペーンに携わるトロールファームはすでにAIを広範に採用しているだろう。ゼレンスキー大統領のディープフェイクのようなことは、ウェブの中でも少なからず起こっているはずだ。
また商業目的でそれらを使う人達も、必ずしもGoogleやGoogleのユーザーのためにそういうコンテンツ制作をするわけではない。偽情報と機械量産型SEO記事と相まってGoogleのためにならないウェブがどんどん拡張していく未来も予見できる。そのとき、我々は従来型の情報の見つけ方が使い物にならなくなったことを悟るのだろう。たぶん。