着々と進行する自律走行車の実用化
自律走行車の段階的な市場投入が着々と進んでいる。物流での採用のほうが堅調で、配車での利用は新著さが求められている。しかし、これらが遅かれ早かれ社会に衝撃を与えることは確かなようだ。
要点
自律走行車の段階的な市場投入が着々と進んでいる。物流での採用のほうが堅調で、配車での利用は新著さが求められている。しかし、これらが遅かれ早かれ社会に衝撃を与えることは確かなようだ。
昨年10月、GMの自律走行車ユニット「クルーズ」の最高経営責任者 (CEO)であるダン・アマンはGMの投資家向けカンファレンスでアナリストに向けて、クルーズが今後数年間に米国の都市で数千台のロボットタクシーを展開するという野心的な目標を説明した。クルーズが10年後までに500億ドルの収益を達成する道筋を示した。
GMが過半数の株式を保有するクルーズは、電気自動車「シボレー・ボルト」を改造した車で、来年には乗車料金の請求を開始したいと考えている。アマンは、カリフォルニア州公益事業委員会の承認が得られれば、2023年には自律走行シャトル「Origin」によるシェアライドサービスを開始できると話す見込み。このシャトルは、GMのデトロイト・ハムトラムク工場で、「ハマーEV」や「シボレーシルバラード」ピックアップ等の電気自動車(EV)と一緒に製造される予定だ。
クルーズは、カリフォルニア州で商業配送サービスの認可を取得したばかりだが、ドライバーレスの配車に課金できるようになるまでには、まだ1つの許可が必要だ。しかし、クルーズは、コストを十分に削減して、迅速に事業を拡大していくことができると考えている。
GMによると、クルーズは今年初めに約300億ドルの評価を受けたという。アナリストたちはクルーズの可能性を高く評価しており、GMの投資家向け説明会では、クルーズの市場価値がGM本体の価値を超える日が来るかもしれないと語っている。
Waymoは物流、配車、ライセンシングで収益化
Googleの親会社Alphabetの子会社であるWaymoの自律走行車は、2022年初頭にサンフランシスコで食料品の郊外配達を開始する。この新しいサービスは、米スーパーマーケット大手アルバートソンズとの提携によるものだ。
Waymoの共同CEOであるTekedra Mawakanaは、11月にカリフォルニア州ハーフムーンベイで開催されたカンファレンスにおいて、このサービスはWaymoにとって最新の実世界テストであり、(ライドハイリングサービスによる)人と物の配達によって自律走行を推進するという2つのアプローチに沿ったものであると語った。
このサービスはまず、Waymoの従業員とアルバートソンズが所有する米第2位のスーパーマーケット・チェーン「セイフウェイ」の従業員に限定され、その後、他の顧客にも開放される予定だ。サンフランシスコの坂道、混雑した道路、雨の多い天候は、運転席のテクノロジーであるWaymo Driverにとって新たな課題となるだろう。
Waymoの配送システムであるWaymo Viaは数年前から、UPSやAutoNation、さらにはトラック運送会社のJ.B.Huntと提携して、フェニックスで配達を行っている。
11月にはUPSとの提携を拡大し、クラス8トラックによる自律的な貨物輸送を開始した。この提携では、第5世代のWaymo Driverを搭載したクラス8トラック(大型トラック、車両総重量15トン以上)を使って、自律走行の試験を行っている。この試験走行はテキサス州で行われ、Waymo DriverはUPSの北米航空貨物部門のために、ダラス・フォートワースとヒューストンの施設間を配送する。
このようなミドルマイル(物流拠点間の配送)での自律走行トラックの採用は他社でも加速している。短距離のルート運行のため自律走行の要件がやさしいからだ。ウォルマートとシリコンバレーの新興企業であるGatikは11月、8月以降、2台の自律走行型ボックストラックをセーフティドライバーなしで、毎日7マイル(約11.2km)のループで12時間運行していると発表した。
Waymo Driverは、Waymo Viaと配車サービスのWaymo Oneの両方を支える技術である。同社は自動車の製造を計画していないが、最終的には自動車メーカーに同社の技術をライセンス供与することを想定しており、その中にはすでに独自の自律運転システムを開発しているメーカーもあるという。
Waymo Oneは、数年前からフェニックス市内で人々を送迎しており、最近はセーフティドライバーなしで数百台の車で10万回近くの乗車を達成している。人間が運転するサービスであるUberやLyftの需要には到底及ばないが、懐疑的な人々の心を掴んでいるとMawakanaは語っている。「懐疑的な人たちが車に乗って出てくると、必ず2つのことを言うんです。1つ目は"ただの乗り物だった"、2つ目は "未来はここにある“と」
百度、ロボタクシー事業は世界最大規模か
12月下旬、百度と浙江吉利控股集団が3月に設立した合弁会社であるスマート電気自動車ベンチャーの吉度汽車(Jidu Auto)は、レベル4の自律走行能力を備えた最初のコンセプトカーを2022年前半に発表する予定であると百度が発表した。
百度の自律走行機能は、ここ数カ月で急速に進歩している。今年の第3四半期に115,000件の乗車サービスを提供した百度の自律走行型ライドハイリングプラットフォームApollo Goは、世界最大級の自律走行型モビリティサービスプロバイダーとなった。百度CEOの李彦宏は第4四半期の乗車数を "世界のどこかで聞かれる報告数よりもはるかに多い"と予想している。
李はロボットタクシーのサービスを2025年までに65都市、2030年までに100都市に拡大することを目指していると語った。
運転技術の向上という点では、百度は第三四半期までに1,600万キロメートル(1,000万マイル)以上のL4(自走式)走行距離を達成している。これは、第1四半期の業績で報告された620万マイルから著しく増加している。
李によれば、インテリジェントな交通手段は今後10年から40年の間に大きな変革を遂げ、人々の日常生活に影響を与えるという。5年以内に中国の第一級都市における自家用車の購入制限が解除され、10年以内に都市部の道路渋滞が解消されるだろうと李は言う。
北京の華北技術大学に属する自動車産業革新研究センターの研究員である北方工業大学自動車産業創新研究センターの張翔研究員は、「百度は、自律走行技術の商業化を促進するために、全国のVehicle-to-Everything(V2X)のインフラ構築の歩みを加速させている」と語っている。
V2Xとは、自動車が周囲の交通システムの可動部分と通信するための重要な技術だ。また、車両の自動安全機能や道路の共同管理も可能にする。張は、現在の技術的限界を考慮すると、完全な自動運転車が大量生産の段階に達したり、商業的に使用されるようになるには、まだ長い道のりがあるという。