商用車EV化の機運高まる
リビアンがアマゾンに納車した電動配送バン。2030年までに10万台を納車する予定。出典:Amazon.com

商用車EV化の機運高まる

商用バン、バス、そしてトラックが電化の機運が高まっている。商用バンとバスは、ちょうど総所有コスト(TCO)がガソリン車を下回る分岐点にいるようだ。トラックも補助金を加えるとガソリン車への競争力を持ちうる段階に入ったようだ。

吉田拓史

商用バン、バス、そしてトラックが電化の機運が高まっている。商用バンとバスは、ちょうど総所有コスト(TCO)がガソリン車を下回る分岐点にいるようだ。トラックも補助金を加えるとガソリン車への競争力を持ちうる段階に入ったようだ。


7月、アマゾンは投資先の電気自動車(EV)メーカー・リビアンから電動配送バンの初めての納車を受けた。アマゾンは2021年からリビアンの試作車による配送テストを行い、43万個以上の荷物を配送し、9万マイル以上を走行した末の納車という。アマゾンは「今回の導入は、今年末までに100都市以上で数千台、2030年までに10万台のアマゾンの電動配送車が導入されると予想されていますが、その始まりに過ぎません」と書いている。

「全米最大の物流業者」であるアマゾンによる商用バン電動化のインパクトは大きい。他の大手物流会社も方向性は同じだ。フェデックスは2040年までに車両をすべてEVに切り替えることを目指しており、UPSはイギリスのEV会社アライバルから電動配送バンを購入することを約束している。

商用バンの電動化は普及の入り口を迎えたようだ。2022年8月までに商業登録されたEVの数は、2021年の全期間よりも多くなっている。2015年以降、米国のEV新規登録車両の53%はテスラである。しかし、テスラを外したグループを見てみると、EV登録の37%を商用バンが占め、アマゾン、ウォルマート、フェデックスといった企業が登録している、とS&P Global Mobilityのグローバル・トラック・リサーチ部門 エグゼクティブ・ディレクターAndrej Divisらは説明している。

これらの企業はすべて、それぞれリビアン、フォード、ブライトドロップとパートナーシップを構築し、投資や発注の約束をしている。ラスト・ワン・マイル配送は、ハブ&スポーク型の配送であるため、EVに適している。長距離を移動することなく、毎晩同じハブに戻り充電することができるためだ。

商用車の中でEVの恩恵を受けているもう一つの分野はバスであるとS&P Global MobilityのDivisらは説明している。バスは、現在EV登録台数の36%を占め、商用バンとほぼ同等のシェアである。バスは商用車と同様、毎晩同じ拠点に戻って充電することができ、現在のEVバッテリーの航続距離内に収まる距離を移動している。特にスクールバスは、午前中は走行ルートが決まっており、数時間は充電のためのアイドル時間があるため、EV化に適している。

トラックにも機会がありそうだ。昨年、米国議会で可決されたインフラ投資・雇用法(Infrastructure Investment and Jobs Act)を通じて配布された多額の資金に加え、インフレ抑制法(IRA)は、電動化された商用車のコストを引き下げるためのさらなる投資を誘因している。

IRAでは、電池のみで走行する重量14,000ポンド(約6,350キロ)以上の車両は、税額控除4万ドルまたは車両購入コストの30%のいずれか低い方の支援を受けることができる。充電器インフラの税額控除は、充電器設置費用の30%で、1カ所あたりトータルで10万ドルの給付を上限とする。

これらの支援は、トラックのEV化を加速させるだろう。「税額控除により、ほとんどの用途でEVトラックの所有がディーゼル車の所有より安くなり、都市部や地域のEVトラックは早ければ2023年にディーゼル車よりコスト的に優位に立つようになる」とロッキーマウンテン研究所(RMI)の Ari Kahn, Gerard Westhoff, Dave Mullaneyは書いている。

ウッド・マッケンジーの分析では、米国の道路を走るEVトラックの数は、2019年の約2,000台から2025年末には5万4,000台以上に急増すると予想されている。そして、コストカーブ(費用曲線)が改善され続ければ、この傾向はさらに加速するはずだ。ルーシュ・インダストリーズの調査によると、2027年までにEVトラックの購入費用と運用費用は、内燃機関トラックよりも安価になることが分かっている。

リビアンは「第2のテスラ」になれるか?
雨後の筍のように生まれた米電気自動車(EV)新興企業。Rivian(リビアン)は着実にEVの生産体制を築き、健全な財務に支えられ、アマゾンの支援を受けている。第二のテスラになれるだろうか?

日本では、国内では三菱ふそうトラック・バス、日野自動車が小型EVトラックを発売済み。国内最大手のいすゞ自動車も2023年3月をめどに電気自動車(EV)小型トラックを市場投入する方針を固めている。

電動化の主要な推進力は、総所有コスト(TCO)が内燃機関(ICE)車と同等になろうとしていることだ。TCOは設備資産の購入から廃棄までに必要な時間と支出の総計を指す。言い換えれば、初期コスト、維持コスト、公的補助などで構成される関数である。EVはICE車の内燃機関関連のメンテナンスから開放されているため、維持コストが低いとされている。

走行距離が短く、アイドル時間が短い軽量車両は、長距離を走行する必要がある重量車両よりも先に、TCOが同等になる、と考えられる。ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)のChristopher Pohlkamp, Anita Oh, Paul Nguyen, Julien Bertは「EVの最大のコスト構成要素が電池であり、必要な電池のサイズは、充電とその距離の平均エネルギー需要の間に移動できる距離によって決定される。EVは通常、ICE車よりもランニングコストが大幅に低いため、利用頻度が高ければ高いほど、増加した初期コストをより早く回収でき、TCOの同等を達成できる可能性が高くなるからだ」と書いている。

BCGの報告書によると、バスは利用率が高く、必要なエネルギーも少ないため、すでにICE車と同等のTCOに達しており、小型商用車(商用バン)もあと1年で達成できる。その後はTCOは改善が進み、EVの優位性は拡大していく。2030年までに輸送用バスが約80%、小型商用車が約55%まで電動化される可能性がある、という。

「バス事業者は、今すぐ電動バスへの移行準備を始める必要がある。電動バスの経済的な利点は明らかで、すべてのタイプのバスがディーゼル車とTCOが同等であるか、今後3年以内に同等になる。事業者は、インフラとユースケースを考慮した上で、電動バスの導入を決定する必要がある」

しかし、Pohlkampらは、TCOパリティ(TCOが同等であること)はEVの優位性の証明としては不十分であるとし、充電設備がそれぞれのユースケースにふさわしい場所に設置される必要があると主張する。ただ、バスやラストワンマイル配送車の場合、拠点にさえ充電設備があればいいので、そこまで大きなハードルではない。