リビアンは「第2のテスラ」になれるか?
リビアンのEVピックアップ・トラック「R1T」。出典:Rivian

リビアンは「第2のテスラ」になれるか?

雨後の筍のように生まれた米電気自動車(EV)新興企業。Rivian(リビアン)は着実にEVの生産体制を築き、健全な財務に支えられ、アマゾンの支援を受けている。第二のテスラになれるだろうか?

吉田拓史

雨後の筍のように生まれた米電気自動車(EV)新興企業。Rivian(リビアン)は着実にEVの生産体制を築き、健全な財務に支えられ、アマゾンの支援を受けている。第二のテスラになれるだろうか?


昨年末にEVピックアップ・トラック「R1T」を発売したリビアンは、同じプラットフォームを使ったEV SUV「R1S」の出荷を開始した。今週、社員以外への最初の納車となる予約注文者への納車が始まったことが、リビアン利用者のフォーラムで明らかになった。

R1Sは、R1Tと同じEVプラットフォームで作られている。トラックの荷台があるべき場所に3列目のシートがある。どちらもアウトドア派をターゲットにしている。

R1Sは昨年末に最初の2台が、CEOのロバート・ジョセフ・スカリンジとCFOのクレア・マクドナーのもとに届けられた。リビアンは6月に、R1Sの納品は8月に開始すると予約者に確約していた。

リビアンは、2022年第2四半期決算発表会で、リビアンは4-6月の期間中、イリノイ州ノーマルの製造施設で4,401台を生産し、4,467台を納車した。これらの数字は同社の予想に沿ったものであり、以前提示した年間生産台数25,000台のガイダンスを達成できる見込みだと同社は想定している。

通年の営業損失は通年で前回予想の47億5,000万ドルから54億5,000万ドルに拡大する見込みであるが、年間15万台の生産能力を持つ工場がフル稼働に近づくにつれて、損失が縮小する見込みだという。この目標を達成するためには、リビアンは工場を日勤と夜勤の両方で稼動させる必要があるようだ。

このイリノイ州の工場は、リビアンが1600万ドルで買収し、EVの生産工場に改造した旧三菱自動車の工場である。このやり方は、テスラのそれを真似たものだ。テスラは以前、トヨタとGMの合弁会社であるNUMMIのフリーモント工場を4200万ドルという破格の値段で買収したが、GMの倒産により格安で売却された。テスラは既存の機能を残しつつ、最先端のEV生産工場に生まれ変わらせた。

ただし、年間15万台の生産能力に到達するまでの道のりは平坦ではないだろう。テスラが経験した量産の障壁にリビアンが苦しむのかどうかは注視に値するだろう。テスラは「モデル3」の発売準備を始めたとき、ロボットや専用機械による高度な自動化生産ラインを計画し、そのコストは10億ドル以上とも言われた。しかし、その自動化の一部は期待通りに機能せず、テスラは最終組み立て作業の一部を工場外のテントに移した。イーロン・マスクは後に、モデル3の立ち上げの経験を「生産地獄」と呼び、テスラを倒産の危機に陥れそうになったと語った

他にも、リビアンは他のEVメーカー同様、電池供給の問題に直面している。多くの車載電池に使用される原材料であるリチウム、ニッケル、コバルトの価格は、需要の急増に伴い過去2年間で急騰し、鉱山業者が実質的に供給を増やせるようになるには数年かかるため、需給逼迫が続くとの観測もある。

さらに状況を複雑にしているのは、EVの購入者優遇措置に関する米国の新しい規則で、自動車メーカーが自動車の優遇措置を受けるには、これらの材料をより多く北米で調達することが必要になることである。その結果、すでに高価だった生産工程に新たなコスト圧力がかかることになる。

米国でEV優遇策を享受するには中古車以外の選択肢がない
米国で販売されている82車種の完全EVのうち、インフレ削減法が規定する新車購入価格の上限である5万5,000ドルを下回るのは31車種に過ぎない。半数強は、米国製の部品や構造に関する新たな要件を満たせそうにない。中古車しか選択肢はないのだ。

OS課金でサブスク収入開拓

しかし、リビアンは毎月の経常的な収入源を1つ開拓している。それは、商用車向けデジタル管理システム「FleetOS」だ。リビアンがアマゾンに納品する電気配送車(EDV)には、FleetOSのサブスクリプションが付属している。リビアンは、各サブスクリプションがどれだけの月収を生み出すのか、また、これまでにアマゾンに納入したEDVの台数も明らかにしていない。とはいえ、FleetOSの収益は、いずれ相当なものになる可能性があるようだ。

アマゾンはリビアンに10万台のカスタムデザインされたEDVを最初に発注し、リビアンはそれを履行している最中である。リビアンは、FleetOSのサブスクリプションとともに、EDVをアマゾンに追加販売する可能性がある。また、リビアンの商用車プラットフォームで生産された車両をアマゾン以外の顧客にも販売する計画で、FleetOSサブスクリプションの販売機会も増えることになる。アマゾンの10万台発注はこの商用車プラットフォームをカイゼンするための重要な機会となっている。

アマゾンの支援が大きい

2009年に創業したリビアンのここまでの道のりは長く、困難なものだった。リビアンの運命を変えたのは、アマゾンだった。リビアンは2019年にアマゾンから7億ドル、その数カ月後にフォードから5億ドルなど、大きな支援を受けている(後にフォードとの資本関係は解消した)。出資後、アマゾンは、2030年までにラストマイル配送を電化する動きの一環として、特注のEV配送バンを10万台購入すると発表した。

7月のアマゾンの発表によると、同社は今年末までに全米100都市以上で数千台のリビアンのEVバンが導入される目処がたったとのことだ。

リビアン勢のEV配送バン。出典:Amazon
リビアン製のEV配送バン。出典:Amazon

これは、出資と販売の双方でアマゾンの手厚い支援を示唆するものだった。この「お墨付き」により、リビアンの株式市場への旅はより安全なものとなり、大量の現金を抱え込むことが出来た(その後、未曾有の株安には見舞われたが)。

アマゾンはリビアンの18%を所有しているが、仮にリビアンに危機が迫ったときには「アマゾンが救助する」と想定する向きもある。アマゾン創業者のジェフ・ベゾスは宇宙開発やクリーンエネルギーの分野で、テスラ創業者のイーロン・マスクと競い合う間柄であることも、その想定を支援する材料だ。

健全な財務

リビアンの財務は数多のEV新興企業の中で断然有利な立場にある。同社は6月末時点で150億ドル以上の手元資金を持ち、これは、2025年に予定されている小型車「R2」の発売までの同社の運営と拡張に十分な資金になるはずだと、マクドナーCFOは8月中旬の決算説明会で述べている。

リビアンは、サプライチェーンの障害と初期の製造上の課題の中で、R1シリーズのピックアップ・トラックとSUVの生産を拡大するのに苦労している。同社は第2四半期に約15億ドルを消費したが、長期的な目標を確実に達成するため、今年の短期的な資本支出を以前の計画の25億ドルから約20億ドルに削減する計画だとも述べた。

少なくともあるアナリストは、リビアンが2025年よりかなり前に現金を調達する必要があると見ている。モルガン・スタンレーのアナリスト、アダム・ジョナスは、リビアンの決算発表後のメモで、同行のモデルでは、リビアンが来年末までに公募・売出し(PO)で30億ドル、2024年と2025年にさらに30億ドルを追加で調達すると想定していると米金融メディアCNBCに対して述べた。

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