急速にEV転換する中国、日本車は市場シェアを残せるか?

中国のEV転換が想定よりも速く、地元EV企業の台頭が著しい。長年の努力が実った形だ。日本を含む外資メーカーはガソリン車の市場シェアを切り崩されている。日系メーカーは市場シェアを残せるだろうか。

急速にEV転換する中国、日本車は市場シェアを残せるか?
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中国のEV転換が想定よりも速く、地元EV企業の台頭が著しい。長年の努力が実った形だ。日本を含む外資メーカーはガソリン車の市場シェアを切り崩されている。日系メーカーは市場シェアを残せるだろうか。


リサーチ会社カウンターポイントの最新調査によると、中国の電気自動車(EV)販売台数は2022年にほぼ倍増し、前年比87%増となった。現在、中国で販売される自動車の4台に1台はEVが占めている。

興味深いことに、中国のEV販売台数全体に占めるバッテリーEV(BEV)のシェアは2022年には減少し、プラグインハイブリッドEV(PHEV)のシェアが24%に増加した。2022年の世界のEV市場トップ10のうち、中国は販売台数で2番目に急成長した市場である。中国は世界のEV販売台数の59%近くを占めている。

BYD、XPeng、Li Auto、NioなどのEVメーカーは、中国の消費者の支持を拡大している。国内のEVセグメントにおける中国ブランドの市場シェアは昨年、78%から81%へと上昇した。これは、EVが大流行する前、中国の自動車販売台数が米国を抜いた直後の約10年前、外国勢が70%の市場シェアを誇っていたことと比較すると、大きな変化だ。

中国EV市場の市場シェア。出典:カウンターポイント

日本や欧州の自動車メーカーは、中国市場におけるシェアが2020年の61%から2022年第4四半期には41%に縮小した。今年前半には、これらのメーカーが古い在庫を整理するため、若干の回復が見られるはずだが、BloombergNEFは、今年の全体シェアは50%を大きく下回ると予想している。

フィナンシャル・タイムズ(FT)が引用した1月のバーンスタインの予測によると、中国は2025年末までに自動車販売台数の50%を新エネルギー車(PHEVとBEV)が占める勢いであり、主要国として初めてそれを達成することになる。BYDはシティバンクに対し、2030年までに40%を達成するという北京の目標について、このマイルストーンは年内に達成できる可能性があると述べたとされる。

中国の自動車市場では、価格競争が続いている。テスラの値下げ、補助金の段階的廃止、7月に排ガス規制の厳格化が、内燃機関(ICE)車とEVの両陣営で値引き合戦に至っている。

メーカーやサプライヤーの収益性が危ぶまれつつある。中国の経済誌財新によると、フィッチ・レーティングのアナリストは先月のレポートで「中国の自動車市場で進行している価格競争は...第2四半期に拡大し、2023年には自動車のバリューチェーン全体の収益性を侵食する可能性がある」と述べている。

中国のEV / 自動車業界を席巻する未曾有の価格競争
年初のテスラの大値下げが中国の各メーカーに波及し、未曾有の価格競争が続いている。昨年末に補助金が切れ、EV需要が一服したことや7月に排ガス規制のレベルが上がり、規制不適格な在庫が生まれると予見されることが価格競争の引き金となっているようだ。

EV陣営でこの消耗戦への耐性を持つのが、財務基盤の固いテスラとBYDだろう。テスラが1月に発表した2022年第 4四半期の決算は、総売上高が243.2億ドルで前期比37%増、営業利益が39億ドルで前期比49%増だった。BYDが3月28日発表した決算は、純利益が73億元(約1,400億円)となり、前年同期の6億200万元から約11倍増加した。

ホンダなど一部の外資系企業は、販売台数の減少に伴い、中国でのプレゼンスを静かに縮小しているか、中国から完全に撤退しようとしていると取り沙汰されている。

ホンダは最近、北米市場で人気の高い高級ブランド「アキュラ」の生産と販売を終了した。ホンダはEV化に対応しようと2021年10月に中国電動化戦略を発表した。現地合弁会社の広汽本田は2022年に新型EV「e:NP1」の販売を始めたほか、2024年には広州市で初めてEV専用の新工場を稼働させる予定だ。

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