インドEV市場が目を覚ます 中国メーカーが本命か
自動車メーカーはインドのEV市場に高い成長の可能性を見出している。市場はまだ黎明期だが、中国のEVメーカーは、スマートフォンでの勝利を再現しようと潜在的な巨大市場参入の機を伺っている。
自動車メーカーはインドのEV市場に高い成長の可能性を見出している。市場はまだ黎明期だが、中国のEVメーカーは、スマートフォンでの勝利を再現しようと潜在的な巨大市場参入の機を伺っている。
先週、韓国の現代自動車は、EV、バッテリー、EV部品事業のために、今後10年間でインドに2,000億インドルピー(24億5,000万ドル)を投資すると発表した。英スポーツカーブランドのMGモーターは500億インドルピー以上を投資して新工場を建設し、2026年からインドの売上高の65%をEVで賄うことを目標としている。
中国、欧州、米国がEVの購入拠点となっているのに対し、インドはかなり遅れているのが現状だ。国際エネルギー機関(IEA)が最近発表した2023年の報告書では、2022年のインドにおけるバッテリー電気自動車(BEV)の販売台数は5万台近くに達し、前年比4倍となったが、乗用車全体の380万台のうち1.3%を占めるにすぎない。また中国のEV販売台数440万台に比べればまだ小さい。
S&Pグローバル・レーティングスのレポートの報告書によると、インドは世界第3位の自動車市場であり、EVメーカーにとって格好のターゲットであるが、国内での普及が遅れているため、当面の間、EVの世界シェアに意味を持つインド企業は存在しない見込みであるという。
アジアは、EV、EV用電池、電池材料の世界最大の生産地、市場としての地位を維持し、この地域がEV時代の中心になるだろうと、同レポートは述べている。
インド政府は2030年の新車販売数のうち、乗用車30%、商用車70%、二輪車80%をEVとするロードマップを掲げている。
米メディアCNBCとの最近のインタビューで、ステランティスのシトロエンブランドのCEOであるThierry Koskasは、インドのEVセクターは発展の初期段階にあるものの、現地の人々の自動車利用方法から「絶対的に完璧」であると確信している。「インドでの車の使い方の多くは都市部や郊外であり、それはEVにとって絶対に完璧なものとなり得る」
インドメディアThe Economic Timesは、2024年度(2023年4月~2024年3月)に予定されている乗用車の発売48台のうち11台が高級EVであり、2023年度の54台中6台の発売からほぼ倍増したと報告している。その上、2023年度の高級EVの販売台数は142%増と、高級車市場の4倍以上のスピードで増加していると指摘した。
中国メーカーが本命か
中国メーカーは虎視眈々とインド市場を狙っている。BYDは、2030年までにインドのEV市場の40%を獲得することを目指しており、上海汽車集団は2024年末までに3台のEVを発売する予定だ。
中国企業は、現在スマートフォン市場を支配しているように、インドのEV部門を支配することになるかもしれない。インド政府は自国の携帯電話メーカーを後押ししようとしたが、ほとんど効果はなかった。中国製の端末は、インドに輸入されるか、インドで製造されるかのどちらかで、スマートフォン市場を支配している。中国ブランドが市場の70%を占めているのに対し、インドブランドは1%とわずかだ。
ジャイプールを拠点とする自動車ソフトウェア会社SAG InfotechのマネージングディレクターであるAmit Guptaは、「中国のEV革命をリードしてきた中国企業は、優位に立つだけでなく、インドのEV産業でトッププレーヤーになるためのリソースも持っているだろう」と米メディアQuartzに対し述べている。
モディ政権は製造業振興を政策の柱の1つにしてきたが、その成果は思わしくなく、「世界の工場」の座を中国から引き継げるかは不透明だ。
インド最大の高級車ブランドであるメルセデス・ベンツは、インドで2027年までにEVが総販売台数の25%を占めると予想しており、今後8~16ヶ月の間に4台の新しいEVを発売して南アジアの国でのEV販売を強化する予定であることを付け加えている。一方、アウディ現地法人の幹部は、今後5~7年以内に、インドにおける同社の販売台数の半分をEVが占めるようにするという野心的な目標を設定したと、地元メディアLiveMintに対して語った。
DIGITIMES ResearchのアナリストEvan Chenによると、インドの大手自動車メーカー10社のうち、EV製品を提供しているのはタタ、現代、マヒンドラ、起亜、MGモータースの5社のみだ。現在、インドにおけるEV販売(電動二輪・三輪車を除く)の約8割をタタが占めている。しかし、競合他社は新興のEV市場で拡大するため、投資を拡大している。