ベトナムでも日本車メーカーがEV化の洗礼を浴びようとしている
長らく日本車が優位な市場だったベトナムでも、EV化の足音が聞こえる。中国EV大手のBYDはベトナムに生産施設を持とうとし、地場EV企業であるビンファストは米上場で軍資金を得て、東南アジアと欧米に橋頭堡を作ろうとしている。

長らく日本車が優位な市場だったベトナムでも、EV化の足音が聞こえる。中国EV大手のBYDはベトナムに生産施設を持とうとし、地場EV企業であるビンファストは米上場で軍資金を得て、東南アジアと欧米に橋頭堡を作ろうとしている。
5月初旬、ベトナム政府は、EV大手BYDが同国でのEV生産を計画であることを明らかにした。ハノイでの会談後、政府のウェブサイトに掲載された報告によると、BYDの王伝福CEOは、国内および東南アジアの他の地域で販売するEVの製造を迅速に開始できるよう、ベトナム政府が投資手続きを完了するための「有利な条件」を整えることを期待しているとのことである。
現在ベトナム北部のフート省で、電子機器や部品組立工場を運営しているBYDは、現地でのEVサプライチェーンの形成も提案している。
これはBYDの東南アジア進出の新たな布石である。東南アジアの自動車市場は長い間、日本車メーカーが席巻してきた。
ベトナムでの生産設備の建設は、タイについで東南アジアの2カ所目になる見通し。BYDは3月、ラヨーン県の工業団地において179億バーツ(約690億円)の予算で工場を着工した。同工場は2024年に量産を開始し、年間15万台の新エネルギー車(BEVとPHEV)の生産能力を持つ予定である。

1月のロイターの報道では、BYDはベトナムに自動車部品を生産する工場を開設し、隣国タイに計画されている組立工場に部品を輸出することを計画しているとされた。
ビンファストの挑戦
BYDの存在は、2019年に自動車販売を開始し、欧米での展開を計画しているベトナムのEVメーカー、ビンファストに直接的な挑戦状を突きつけることになる。
ビンファストは今月初めに特別目的買収会社(SPAC)のBlack Spade Acquisition Coとの合併により米国で上場すると発表。それに伴い、ベトナムのビンファストは、北米への輸出を拡大し、欧州への出荷を開始するため、今年のEV販売台数は2022年の約7倍となる5万台を見込んでいると、同社の創業者が5月17日に明らかにしている。
ビンファストはこれまでに米国とカナダへのEV輸出を果たしている。EVの評判はあまり好ましいものではないが、3月1日にカリフォルニアで最初の45台のSUVを顧客に引き渡して依頼、小規模ながらも納車は続いているとされる。
ビンファストは東南アジア市場にも触手を伸ばしている。同社はタイの首都バンコクで開催された展示会にEVを出展し、東南アジア市場を開拓する方針を発表した。早ければ来年にもEVのタイへの輸出と販売を開始する考えであるとリージョナル・マネージャーを務めるグエン・ダン・クアンがアジア経済ニュースプロバイダーのNNAに対して明らかにした。
ビンファストの親会社ビングループは住宅、ホテル、病院、ショッピングモールにまたがる複合企業。ビングループと金融機関は、過去6年間に自動車子会社の営業費用と資本支出に82億ドルという途方もない金額を投入してきた。
ベトナムでは日本車が市場シェアの大半を占める。ただ、政府の投資誘致や産業振興は次代を見据えEVに向かっている。これはタイも同じ傾向だ。日本車の牙城は、決定的な挑戦を受けている。