日本車の牙城タイ、BYDのEVが価格競争で攻勢
タイがEVシフトを急速に進め、中国勢が価格競争で市場の一角を崩そうとしている。長らく日本車の市場であり生産拠点であった同国に、中国の脅威が迫っている。
タイがEVシフトを急速に進め、中国勢が価格競争で市場の一角を崩そうとしている。長らく日本車の市場であり生産拠点であった同国に、中国の脅威が迫っている。
EVの価格競争はタイにも及んでおり、日中韓の自動車メーカーは、今週開幕した王国の年次国際モーターショーで新型車の大幅割引を実施した。
バンコク・モーターショーで、中国の大手EVメーカーBYDは21日、低価格の新型EVハッチバック「Dolphin(海豚)」を、電気自動車の世界平均価格の半分となる799,999バーツ(約310万円)で発表した。BYDは28日にDolphinの受注を開始し、4月30日までに受注した分は7月に納車すると約束したと、BYDのアジア太平洋地域自動車販売事業部総経理である劉学亮は述べた。
これは、タイで人気のICE(内燃機関)ハッチバック、例えば「トヨタ・ヤリス・プレミアムS」の694,000バーツに近い金額である。今後の補助金同行次第では価格が伯仲する可能性があり、また、総所有コスト(TCO)の観点では消費者にとってどちらが得か、も重要な見方である。
本来は左ハンドルのDolphinは、タイ市場では右ハンドルを採用しており、日本車が市場のマジョリティを取った際に作られる参入障壁を交わしている。アジア諸国では、規制当局がこの右と左のハンドルを巡ってどうルールを作るかが、重要な要素の一つである。
BYDの幹部は、政府の補助金に関する交渉が続いているため、799,999バーツという価格はまだ最終的なものではないと述べている。
タイでは、中国製のEVは2023年末まで輸入税と物品税のほとんどが免除されるが、その代わり自動車メーカーは2024年から現地生産を行うことを約束しなければならない。この規則のもとでは、輸入車の購入者は、メーカーがタイで同数の生産台数を保証すれば、最大15万バーツの補助金を受けられる見通しだ。
政府はさらにコストを下げるために電池への補助金を検討しており、これはこれまでに行われた約430億バーツの減税とEVへの優遇措置に追加されることになる。
中国でのEVとガソリン車の価格競争が、タイにも波及した。年初のテスラによる世界的な値下げが、中国の各メーカーに波及。昨年末に中国の補助金が切れ、EV需要が一服したことや7月に排ガス規制のレベルが上がり、規制不適格なガソリン車の在庫が生まれると予見されることが価格競争の引き金となっているようだ。
BYDによると、3月20日までに、BYDはタイで11,539台の車両を納車した。これは、BYDが昨年投入した人気モデル「ATTO3」によるもの。ATTO3は販売目標である1万台をわずか42日で達成したという。
補助金の根拠となる現地生産については、BYDは3月10日、ラヨーン県にある179億バーツ(約690億円)の工場を着工。同工場は2024年に量産を開始し、年間15万台の新エネルギー車(BEVとPHEV)の生産能力を持つ予定。
タイは東南アジアでEVの採用が最も速い。調査会社カウンターポイントの報告書によると、東南アジア(SEA)における乗用車(EV)販売台数は2022年第3四半期に前年同期比35%増を記録した。タイは、この地域で最も高いEV販売台数を記録。同国は東南アジア諸国の中で約60%の販売台数シェアを獲得し、インドネシアとシンガポールを上回っている。2035年までに国内販売の100%をBEV(バッテリー電気自動車)にすることを目指している。
また、タイのEVブームは、予想だにしない株式市場の勝者を生み出している。台湾の電源・自動車部品メーカーDelta Electronicsの子会社であるDelta Electronics Thailandは、タイ証券取引所で最も価値のある企業となり、過去1年間で163%の株価上昇を記録(3月6日時点)。