印フリップカート、米IPOに向け順風満帆

企業価値376億ドル、ウォルマート持ち分7割超

印フリップカート、米IPOに向け順風満帆
Via Flipkart

要点

インド最大のeコマース企業フリップカートの企業価値が376億ドルに達した。将来性の高いインド市場で電子商取引と決済の双方を押さえる同社は、優良投資家の支援を受け、2022年の米上場への滑走路に乗った。


インドのeコマース企業であるフリップカートは、主要株主であるウォルマートは企業価値376億ドルで、36億ドルを調達したと発表した。

今回の資金調達後、ウォルマートはフリップカートの74~75%の株式を保有することになると予想される。発表資料によれば、大株主の米ウォルマートに加え、テンセント、ソフトバンクグループ、米ブラックストーン・グループ系のアンタラ・キャピタル、アブダビ首長国政府系ファンドのADQ、シンガポール政府系ファンドのGIC、カタール投資庁、カナダ年金制度投資委員会(CPPIB)も調達に参加した。

これは、フリップカートが2018年にウォルマートに買収されて以来、初めての外部資金調達ラウンド。この取引により、同社の企業価値は376億ドルとなり、1年前にウォルマートが主導した12億ドルの内部ラウンドで設定された249億ドルの企業価値から36%上昇した。

フリップカートは今回の資金調達ラウンド完了に伴い、2022年の米国での新規株式公開(IPO)実施に向け準備が整う可能性がある。

フリップカートは、8,000万ドル以上に相当する従業員株式の買い戻しも行っており、同社の株式を保有する人々に流動性を提供している。

同社の登録ユーザー数は3億5,000万人以上、登録販売者数は30万人以上で、その大半は、企業がターゲットにしようとしている急成長中の中間層が住む、インドの浸透していない二級都市から来ているという。フリップカートは、卸売事業とラストマイル配送プログラムを通じて、インド国内の160万以上の食料品店と提携。小規模事業者や十分なサービスを受けていないコミュニティ、職人のダイレクト・トゥ・コンシューマ(D2C)を支援するプログラム「Samarth」には、75万人以上の受益者がいるとされる。

今回の資金調達ラウンドは、ウォルマートが出資するフリップカートが上場を検討し、ニューデリーがeコマース規制の強化を求めている中で行われた。新規則では期間限定で割引価格などの特典が付いた商品を販売する「フラッシュセール」の制限が提案されており、フリップカートとAmazonは再び事業構造の変更を余儀なくされる可能性がある。

6月に発表されたこの規則案は、ナレンドラ・モディ首相率いる政府が、外国投資から言論の自由まで、さまざまな問題でビッグテック企業との戦いに巻き込まれている時期に作成されたもの。政府は、TwitterやFacebookに対し、オンラインコンテンツの管理や節度について異議を唱えている。

フリップカートは、この資金を人材、テクノロジーとサプライチェーン、インフラへの投資に充てる予定。また、同社は食料品店と協力してデジタル化を支援する予定だ、と発表している。

また、同グループは、インドのPaytmやGoogle Payと覇権を争っているインド有数の決済アプリPhonePeも所有している。

PhonePeはフリップカートの宝物になろうとしている。UPIと呼ばれる公的な決済基盤の上でのスマホ決済では、PhonePeは45.27%の市場シェアを持ち、Google Payの34.67%の市場シェアを引き離している。PhonePeはWeChatのミニプログラムにインスパイアされたミニアプリのためのプラットフォームを提供している。いわゆる「スーパーアプリ」である。

印デジタル決済企業PhonePeがスーパーアプリとして躍進
Paytmは中国の先行例を見本としたスーパーアプリ戦略を推進している。デジタル銀行として支払い、投資信託、リボ払い、ローンなどの金融サービスを提供するほか、ゲーム、チケット予約にも触手を伸ばしている。
UPI インド政府主導のデジタル決済共通基盤
UPI は、政府主導の多くのデジタル決済製品が相互運用可能なリアルタイム・モバイル・ペイメントを提供するためのソリューション。決済サービスプロバイダーがインド決済公社のサービス群を使用するためのインターフェイスであり、背後のシステムが銀行口座間取引を即時的に実行する。
東南アジアのスーパーアプリとデジタル決済の現状
スーパーアプリは東南アジアのテック業界の中心的なトレンド。1つのアプリの中で様々な商取引を可能にするデジタル決済が急速に人々の間に浸透している。WeChatの摸倣と地域独自の工夫が興味深い製品を生み出している。

ただし、競合も黙っていない。リライアンスは、2020年4月にFacebookのデジタル事業であるJioに57億ドルの出資をしたことを受けて、食料品に特化したプラットフォームをFacebookのメッセージングサービスWhatsAppと組み合わせた。リライアンスは、インド最大の実店舗での小売事業も行っている。リライアンスは昨年、傘下のJio Platformsの株式33%近くの売却を通じて、Google, Facebook、KKR、サウジアラビアのPublic Investment Fundなどから223億ドル以上の資金を調達した。当時のJioの企業価値は593億ドルだった。

ソフトバンクが少数株主として帰還

また、特筆すべきはソフトバンクがフリップカートの株主に戻ったことである。同社はフリップカート株の約20%をウォルマートに売却した3年後に、フリップカートに5億ドルを再投資したことになる。孫正義率いるソフトバンクは、2017年にフリップカートに25億ドルを投資し、1年後にウォルマートに40億ドルで株式を売却していた。

ソフトバンクは今回の投資ラウンドで、リード投資家を務めておらず、少数株主となるに過ぎない。

ソフトバンクは過去、フリップカートに大きな混乱をもたらした経緯がある。同社は当初、フリップカートの競合のスナップディールに出資していたが、スナップディールが新規のソフトバンクの投資を拒んだため、フリップカートに出資。ソフトバンクは、Amazonに対抗するため、スナップディールとフリップカートの双方に大量のマーケティング予算の計上を求めたとされる。両者は商品の値下げを行ったが、それらの費用は値下げ商品を買い占めて、元の価格で再販する卸売業者に吸い取られてしまったとされる。

このような資金燃焼の激しい戦略を実行した結果、スナップディールとフリップカートがともに経営破綻寸前の状況に直面した。ソフトバンクは両者に合併を促したが、両者は合意に至らなかったため、ソフトバンクと大多数の株主は持ち分をウォルマートに売却し、出口戦略をとっていた。

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