FTXの終わりは暗号資産の終わりか?
FTX崩壊によって暗号資産ビジネスの評価が確定した。厳しい規制と無関心にさらされる冬が訪れることは必定だ。「最後の1人」となった最大手のバイナンスでさも生き残れるか試されることになる。
FTX崩壊によって暗号資産ビジネスの評価が確定した。厳しい規制と無関心にさらされる冬が訪れることは必定だ。「最後の1人」となった最大手のバイナンスでさも生き残れるか試されることになる。
最初の破産審問で、FTXの弁護士は、会社の資産の「相当量」が行方不明か盗まれており、暗号資産の取引所とその姉妹会社のトレーディング会社アラメダ・リサーチはサム・バンクマンフリード(通称SBF)の「個人的な領地」のように運営されていたと述べた。
その兆候を伝える報道はすでにたくさんあった。例えば、FTXは過去2年間に少なくとも19件のバハマの不動産を会社名義で購入したと伝えられている。ロイターが公式の不動産記録をもとに報じたところによると、これらの不動産は1億2,100万ドル以上の価値があるという。アラメダのCEOはSBFの元カノ。FTXのCOOは彼女かそれに類する関係の女性で、右腕のエンジニアの彼女もFTXで働いており、彼らはバハマの瀟洒な不動産を与えられていたとされる。
千両役者のSBFは米国時間の22日、元従業員に対する手紙で1週間にわたる沈黙を破った。「私はこのようなことが起こることを意図していませんでしたし、もう一度戻ってやり直せるなら何でもします」とブルームバーグが入手した手紙の中で彼は書いている。
彼は「信用取引に伴い差し入れる証拠金(この場合、暗号通貨によるもの)が、暗号通貨の暴落に伴い600億ドル相当から90億ドル相当まで減った」「破産申請時には負債が80億ドルあった」と説明している。SBFは「私は、保有ポジションの全容を理解していなかったし、リスクの大きさも理解していなかった」とも書いている。それでも破産の正確な詳細については明らかにしなかった。
FTXの弁護士は、情報開示は会社の破片を広い、売却できるものを保存する努力を脅かすと主張している、エンロン事件も手掛けた破産の名人は、手続きを円滑に行うために今のところいくつかの事柄を秘密にしておきたいようだ。
ただ、これまでの報道でことの大まかな全容は描かれたように思われる。FTX崩壊の起点にあるのは、ピーク時に約400億ドルの価値があったアルゴリズミック・ステーブルコイン、TerraUSDの崩壊だ。このコインは5月に崩壊し、暗号通貨全体の時価総額から数十兆円が失われた。その数週間後、いくつかの融資プラットフォームとヘッジファンドが相次いで破綻し、暗号通貨全体の時価総額からさらに数十円相当が失われた。
この融資プラットフォームとヘッジファンドの崩壊によって生じたマージンコール(追証)は、アラメダを危険にさらし、不足を埋めるためにFTXの顧客資金を使用し、自社コインのFTTをあたかも資産のようにバランスシートに配置するという決断につながった可能性がある。
真偽は余りにも定かではないが、イーロン・マスクがTwitterへの出資をSBFに打診していたという怪情報もある。米オンラインメディアSemaforは、マスクが5月にSBFにテキストを送り、マスクがTwitterを非公開にしたら、マスクの保有する1億ドル相当のTwitter株を買わないかと尋ねたと報じた。マスクはこの報道を否定し、SBFがSemaforの投資家であることを指摘した。
とにかく、これで、暗号通貨取引所はバイナンス1強となった。投機の場としての取引所が今後数年間は低調になるのは明らかで、暗号通貨を使う人のモチベーションの多くは、既存の金融秩序を迂回することに収斂するはずだ。世界にはその類のお金が多くあり、強い需要が衰えることはないだろう。
そのとき、今後厳しい規制にさらされるコインベースのような米国拠点の会社は不利であり、「オフショアのどこか」に拠点を構えるバイナンスは圧倒的に有利と言えるだろう。
ただ、バイナンスもこの状況を喜んではいないだろう。これから長い冬が来る。そして、世界中の人々が暗号通貨への関心を失えば、バイナンスすらも価値の大きな縮小を迫られることになる(十分に稼いでいるだろうが…)。
おっと日本のことを忘れていた。日本のいくつかの取引所は十分に利益を上げており、スポーツベッティングやオンラインカジノの代替品として生き残るかもしれない。日本人はギャンブルが好きだ。ブロックチェーン上に存在するデータの上がり下がりに賭ける丁半博打は、数百年後には世界の人が面白がる伝統芸能になっているかもしれない。