AIを裏で支える"ゴーストワーカー"は非正規雇用の使い捨て
「ゴーストワーク」とは、人類学者が生み出した、テクノロジープラットフォームを動かす目に見えない労働を指す用語です。インターネットを介して従事できるタスクベースのコンテンツ駆動型の仕事です。このような、いつ雇用契約を切られるかわからない非正規の使い捨て労働者がテクノロジー業界の裏側を支えているのです。
ゴーストワーカーは、インターネットが約束どおりに機能するように背後で働くオンデマンドの使い捨ての人々です。 ハーバード大学フェローで、Microsoft Research 上級研究員である人類学者 Mary Gray、Microsoft Research 上級研究員のコンピュータ科学者 Siddharth Suriが執筆した本 "Ghost Work: How to Stop Silicon Valley from Building a New Global Underclass"(未邦訳)では、彼女たちは、目に見えない作業者のデータを収集し、インタビューしました。大手テック企業が覆い隠すこの領域に侵入する試みは初めてであり、明らかにこのような努力が必要とされていました。
「ゴーストワーク(Ghost Work)」とは、人類学者のGrayが生み出した、テクノロジープラットフォームを動かす目に見えない労働を指す用語です。「ゴーストワーク」は仕事そのものではなく、仕事の条件を説明します。インターネットを介して従事できるタスクベースのコンテンツ駆動型の仕事に焦点を当てています。
このタイプの作業の始まりは、Amazonから来ています。小売業者が成長するにつれて、彼らは絶えず製品を投稿し、製品の写真を検証し、製品のキャプションを作成する必要があることに気付きました。これらのタスクに加えて、Amazonは2005年にレビューを修正するために大勢の人々を必要としていたため、他の人が完了するためにタスクを投稿できるサービスAmazon Mechanical Turk(MTurk)を作成しました。このサービスの上では、タスクが完了すると、それを完了した人に支払いが行われます。日本のクラウドワークスのようなものです。
「ゴーストワーク」の利点の1つは、作業者がタスクを完了するタイミングを選択するため、柔軟な就業時間を確保できることです。 これは、多くの異なる状況のために他の場所で仕事を見つけることができない多くの人にとって魅力的なことです。
GrayとSuriは、この巨大な労働市場が、GDPに算入されない家事のように見えないようにされているため、「ゴーストワーク」と呼んでいます。たとえば、乗客も運転手も、Uberの車を待っている間に、インド南部ハイデラバードのAyeshaという女性が秒を刻む時計を持ちながら、ライブで移されている運転手の顔の画像と提出されたIDの画像を比較していることを知りません。このように、なりすましの可能性があることを検知するシステムのうち、アルゴリズムが実行できない仕事を、ゴーストワーカーが引き受けているのです。テクノロジー企業の隠された現実は、AIと謳われるプロセスの背後で、フリーランスの人間が何百万もの小さなギグを実行していることです。MITの労働経済学者David Autorは、機械が実行できない残り物を引き受ける仕事のことを、「ラストマイルの仕事」と呼んでいます。
テクノロジー企業従業員が知りたがらない不都合な事実
Glayが最初にMicrosoft Researchに到着したとき、彼女は人工知能を構築するにはトレーニングのためのデータを管理およびクリーンアップする必要があることを知りました。彼女は周りのエンジニアとコンピューター科学者に尋ねました。「このタスクを行って支払われる人は誰ですか? 誰が画像や分類タスクにラベルを付け、データベースをクリーンアップしますか?」。一部の人は知らないと言いました。他の人は知りたくないと言い、あまりにも知りすぎると、不快な労働条件に出くわすかもしれない、と心配していたそうです。
そこでGlayは自分で調べることにしました。これらのプラットフォームを実行するために必要なタスクを担当する、しばしば目に見えない人々は誰ですか? なぜ彼らはこの仕事をするのですか? 彼らの労働条件は何ですか? 彼女には調べるべきことがたくさんあることがわかりました。
一つの課題は、ゴーストワークを行っている人の数に関する良好な労働統計がないことでした。ゴーストワーカーは自営業者であると識別される場合とそうされない場合があります。彼らは、コンテンツファーム(企業のコンテンツマーケティング等のためにコンテンツを量産する小規模企業)のために記事を書いた場合、ジャーナリストとして識別される場合とされない場合があり、この労働力を測定するために調査質問に回答するかどうかを変更する場合があります。ゴーストワークの仕事が世界中に分散しているという事実は言うまでもなく、労働統計の世界的な機関もありません。
ゴーストワーカーには、機械学習用データセットのラベル付け以外にも「コンテンツモデレーション」という仕事が存在します。アンケートへの記入、キャプション、翻訳作業、あらゆる種類の文字起こしサービス、 Web調査、ロケーションアドレスの検証、ベータテスト、ユーザーデザインのユーザーテストを行います。コンテンツの作成、編集の執筆、デザインの実行など、知識の仕事と考えることができるもの。もともとは、フルタイムの仕事として存在していたものを解体し、無数の人々のためのプロジェクトに変えてしまいます。
ゴーストワーカーには、男性と同じくらい多くの女性がいおり、人々は大学の教育を受けていました。ゴーストワークは知識的労働と情報サービスに広く分布しているため、驚くことではありませんでした。フルタイムの仕事に後押しするネットワークにアクセスできない人々であり、学士卒の学歴を保持する場合が多いが、エリートとの強い社会的つながりを持たないグループのことです。
Glayらはゴーストワークの規制を推奨しています。この増加する労働力には、雇用主が避けようとしている保護と、伝統的に仕事を通じてもたらされてきた社会的支援が必要です。世界銀行が2020年に250億ドルの市場になると予測している「タスク型経済」の台頭に伴って、労働者が長い歴史を通じて闘って獲得した権利に対する脅威が浮上しています。
次のことが推奨されます。労働者のためのソーシャルスペース、共有ワークスペースをサポートすること、それから履歴書への記載を有効にして、キャリアの軌跡を提供することが必要です。自動化された労働者のコントロールに何らかの人間味が伴う必要もあるかもしれません。
参考文献
Mary L. Gray, Siddharth Suri. Ghost Work: How to Stop Silicon Valley from Building a New Global Underclass. Houghton Mifflin Harcourt. May, 2019.