Hacking Growth グロースハック完全読本 「自称グロースハッカー」を雇う前に読む本

グロースハックの方法論は、リーンスタートアップが製品開発のために、スクラムが生産性のためにしたことを、市場シェアの成長のために行うもの。製品が十分に顧客に必要とされているかを見極めて、成長計画を練るべきだ。

Hacking Growth グロースハック完全読本  「自称グロースハッカー」を雇う前に読む本

著者のSean Ellisは、グロースハックコンサルタント会社「GrowthHackers」の創業者兼CEOです。彼はDropbox、LogMeIn、Lookout、Eventbriteで直接成長をリードした実績があります。もうひとりのMorgan Brownはスタートアップマーケティングのベテランであり、Ellisとともに「GrowthHackers」を立ち上げました。どちらもSXSW、TechWeek、HubSpotなどの主要な会議で定期的に講演しています。

執筆時二人はコンサル会社のGrowthHackersを開始しており、出版は過去の遺産で稼ごうとするため、あるいは、コンサル先を見つけるためのブランディングのためのものであることは留意しておくべきです。原著の出版は2017年でもあり、デジタルマーケティング業界では2,3年前は「はるか昔」と呼んでいいものです。それでも、その点に留意しながら読書を進めれば、学びがあるでしょう。

本書は、グロースハックの方法論は、リーンスタートアップが製品開発のために、スクラムが生産性のためにしたことを、市場シェアの成長のために行うもの、と規定します。そこには、多様性のある様々な能力を持ちよったチームと顧客に焦点を当てた高速のテストと反復が含まれます。つまり、昔ながらの当てずっぽうや勘に頼るのではなく、定式化された様々な手法から洞察を導き出し、製品やサービスを利用者にとって必要不可欠なものへと昇華していくのです。

スタートアップがプロダクトマーケットフィット(PMF、製品市場適合)を遂げた後のグロースステージにおいて、優秀なグロースチームを組織できれば、著しい成長を促進することが可能と、Ellisらは説明しています。

本書に登場する、P2Pデータ共有ソフトウェア会社BitTorrentの例を見てみましょう。グロースチームを結成する前、BitTorrentには、エンジニアリング、マーケティング、製品開発の従来の部門で働いていた50人の従業員がいました。これにより、成長が停滞する2012年まで、良い結果がもたらされました。

問題は、多くの顧客が製品の基本的な無料バージョンを使用していることでした。そして、有料のプレミアムバージョンを改善したにもかかわらず、アップグレードを行った人はほとんどいませんでした。

しかし、プロジェクトマーケティングマネージャー(PMM)が参加し、グロースチームを編成し、必要な新鮮な視点を生み出したとき、状況は変わりました。アップグレードの不足は品質の問題によるものではないことが明らかになりました。ほとんどの顧客は、ただただプレミアムバージョンとその機能を知らなかっただけだったのです。この洞察力を武器に、マーケティングチームとエンジニアリングチームは力を合わせ、無料バージョンのユーザーにプレミアムバージョンを宣伝することで認知度を高めました。その結果、アップグレードが急増し、収益は92%増加しました。

ただし、グロースチームを結成すればいいというものではないのです。マーケティング関連の人材は、分布の分散がとても大きいのです。非常に有用な人材もいれば、そういう人材であると偽る人も多数存在します。マーケティングの先駆者と呼ばれる百貨店経営者ジョン・ワナメーカーは「広告費の半分が金の無駄使いに終わっている事はわかっている。わからないのはどの半分が無駄なのかだ」と指摘しています。このような不確実性を活用し、自分が有用なふりをして高給を取る輩が、この業界には跋扈しています。自分が有用だというシグナリングは、本物にとっても偽物にとっても同様のコストと同様のリターンを提供するからです。

世界には次のAirbnb、Yelp、Facebook、またはAmazonを創造することを望んでいる無数の起業家がいます。これらの企業は急速な成長を遂げましたが、それはおそらくすべてに共通点があるためです。彼らはそれぞれ、人々にとって必須(Must-Have)の製品またはサービスをリリースしました。二人が提案する必須の調査(マストハブ・サーベイ)は、顧客が製品についてどのように感じているかを把握するためのシンプルで信頼できる方法です。 そして、必要なのは、少なくとも数百の顧客に適切な手法でインタビューをすることです。彼らは非常にシンプルな計測方法を提案しています(根拠は明示されていませんが、マーケティングらしさといえばそれまでです)。

スタンフォード大学行動デザイン研究所のB・J・フォッグが提唱する「説得的デザイン(Persuasive Design)」への言及もあります。「フォッグ行動モデル(FBM)」のもとでは、人の行動を促すには3つの変数(動機、能力、トリガー)がうまく働く必要があると考えます。行動が発生しない場合、これら3つの要素のいずれかが欠落していると想定します。このモデルは、設計者がユーザーがアクションを実行するのを阻止しているものを特定するのに役立ちます。

たとえば、人々はInstagramの登場前からオンラインで写真を共有する習慣を持っていましたが、Instagramは共有を容易にし(能力を高め)、さらに楽しく、魅力的で社会的に受け入れられる仕様を採用しました(動機付けを高めた)。このアプリはフォロワーがコンテンツへの好意を示すためのをハートのボタンを「トリガー」として設置しています(ソーシャルトリガー)。Instagramの共同創業者ケビン・シストロムとマイク・クリーガーはフォッグの教え子です。

Ellisらは他にもA / Bテストのような技法を指摘しています。これは、2つの異なるメッセージまたは製品のバリエーションの有効性をテストする方法です。たとえば、プロジェクト管理ツールBasecampはこの方法を使用して潜在的なマーケティングのキャッチフレーズをテストしました。そのため「プランと価格を見る」という宣伝文句が「無料トライアルにサインアップ」の2倍の新規顧客を引き付けたことがわかりました。A / Bテストは適切な運用ができていればとても有用な手法です。

本書で指摘されているさまざまな手法を実行することで、何が効いたかよくわからないが、結果がもたらされたりします。半分、あるいは半分以上が無駄だとはわかりますが、どちらの半分が無駄かはわからないのです。

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コロナは世界の子どもたちにとって大失敗だった[英エコノミスト]

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過去20年間、主に富裕国で構成されるOECDのアナリストたちは、学校の質を比較するために、3年ごとに数十カ国の生徒たちに読解、数学、科学のテストを受けてもらってきた。パンデミックによる混乱が何年も続いた後、1年遅れで2022年に実施された最新の試験で、良いニュースがもたらされるとは誰も予想していなかった。12月5日に発表された結果は、やはり打撃となった。

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イーロン・マスクの「X」は広告主のボイコットにめっぽう弱い[英エコノミスト]

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By エコノミスト(英国)