失業率は歴史的に低いが「仕事の質」は長期的に低落している
日本の労働市場は、失業率は歴史的に低いが、仕事の質は長期的に低落しています。仕事の質を表現する賃金や福利厚生は90年代から継続的に低落傾向を示してきているのです。
日本の労働市場では、失業率は歴史的に低いですが、仕事の質は長期的に低落しています。仕事の質を表現する賃金や福利厚生は90年代から継続的に低落傾向を示してきているのです。
日本では、労働年齢人口(15〜64歳)の減少にもかかわらず、日本の総雇用は最近の経済拡大により着実に増加しており、2018年には記録が始まって以来最高レベルに達しました。働いている15〜64歳の人口の割合もまた最高に達しました。それにもかかわらず、デジタル化と人口の高齢化の結果として、日本は、仕事の質の継続的な改善を確保するための多くの課題に直面しています。
日本の仕事の質の低さを説明する要因のひとつは、非正規雇用の拡大です。日本はまた、正規労働者と非正規労働者の間の定着した労働市場の二元論に直面しており、これらのグループ間の雇用条件と賃金には大きなギャップがあります。このギャップの要因には、終身雇用、年功序列型賃金、解雇規則などの雇用慣行が含まれます。
厚生労働省によると、非正規雇用労働者は、平成6年から以降現在まで緩やかに増加し、平成30年には2120万人に達しました。労働者全体に対する非正規雇用労働者の割合は、すべての年齢層において上昇傾向を示しています。兼業主婦/主夫などの非正規就労を除いた「不本意非正規」について見ると、男性の方が割合とし ては高く、特に25~54歳の層で高い割合となっています。
日本の仕事の質の低さを説明するもうひとつの要因は、実質賃金の停滞です。厚生労働省の毎月勤労統計調査によると、実質賃金は2013年から2019年の7年のうち5年がマイナスであり、2020年2月現在、2013年の野田内閣の頃より実質賃金が約4.5%下がっています。この低迷は90年代なかばから続いており、日本居住者の賃金は25年の長い眠りに陥っています。「仕事の質」を一人あたりの時間あたりの賃金で測る場合、日本の仕事の質は長期に渡り低迷している、と表現できます。もちろん、そもそも毎月勤労統計がどの程度正しいのかは、神のみぞ知るところでしょう。
加えて、日本の賃金は不安定な側面をもちます。日本の賃金は明示された賃金から簡単に下がることで知られています。労働者の報酬において異常なほど大きな割合がボーナスで構成されており、雇用主は経済的困難が生じている間はかなり簡単に差し控えることができます。2009年の日本のホスピタリティセクターでは、労働者の年末ボーナスが40%以上削減されました。
少子高齢化の進む日本では、高齢者は重要な労働力の供給源ですが、経済には彼らを活用する体制が整っていないようにうつります。高齢者が就労できる仕事の質は概して低いのです。人々は60歳での定年退職後、日本では多くの高齢労働者が継続して働いていますが、有期契約です。これらの仕事には、通常、大幅な賃金削減とスキルの十分な活用が含まれません。訓練に従事する意欲は比較的高いにもかかわらず、日本で一時的な契約を結んでいる高齢労働者は、スキルと仕事の見通しを改善するための訓練機会がほとんどありません。
OECD Employment Outlook 2019によると、労働者の54%は、仕事の自動化の非常に高いまたは重大なリスクに直面しています。仕事の約15%は完全に消滅する可能性が高く、新しい技術の導入により、おそらく39%が大きな変化を経験します。
失業率は歴史的に低いが、仕事の質は長期的に低落している現象は日本固有のものではなく、いまや欧米の先進国経済にも共通しています。
参考文献
OECD Employment Outlook 2019.
内閣府 非正規雇用対策・若者雇用対策について 1 - 内閣府
Photo by bantersnaps on Unsplash